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カテゴリ:ムックきのこクラブ
目視によるきのこ同定は、図鑑とにらめっこして絵合わせすることから一刻も早く卒業すべきです。そして、いかなる場合でも自身が培ってきた<暗黙知の了解>にゆだねるべきなのです。 そのためには、日ごろからきのこの属単位の風情をしっかりと頭に入れておく必要があります。私たちにとって根源的に「異」類の代表であるきのこは、まず常日頃からきのこに親しみ、愛情をもって接することなくして理解することはできません。カール・ポラン二ーの言う<暗黙知の了解>とは、対象への愛情なくして育まれることはないからです。 良い機会ですので、鷲峰山・金胎寺の行場で出会ったきのこたちのいくつかを取り上げて、ムックきのこクラブ独自のキノコ・レッスンをしておきましょう。「地獄の黙示録」ならぬ「きのこの目視録」の第1レッスン。 久方ぶりの再会で心浮き立つ思いがしたチチタケグループのきのこ。 まずは全体の印象から判断の糸口を見つけましょう。 傘と柄が灰褐色から黒褐色の同色でヒダは白からクリーム色。全体にポッチャリ感のある様子とうけとめるだけで随分と的は絞られます。同じ色の傘とヒダを持つきのこにツエタケ、ヒロヒダタケがありますが、図鑑で見くらべると大きさ、質感の点でまったく印象が異なります。肌でいえばサメ肌とツヤ肌くらいの違いがあります。 となれば、この手のきのこはまずはヌメリガサ属のヤギタケとチチタケ属のクロチチタケしかありません。ヤギタケはおっぱいを出さないので、この溢れんばかりの乳液で「私はチチタケですよ」っと訴え続けているのがおわかりでしょうか。 さて、ここからが思案のしどころです。乳は出るけれど、恥じらい気味の悪びれた様子が微塵もないのがお分かりでしょうか。ここまでを一瞥の内に判断するのが、ワイルドライフでサバイブする智慧ともいうべき暗黙知の了解なのです。 それからおもむろに、きのこの生えている環境に目を投じましょう。 クロチチダマシ Lactarius gerardii 夏から秋、広葉樹・マツの混交林地上に発生。中、小型のきのこ。平らな傘をもち、ときに中央部が尖っていたり、へそをもち、しばしば放射状のしわをつけています。キノコの下部には松の倒木が見えていますね。君棲む町は、マツまじりの広葉林だったのです。クロチチタケは、山岳地帯の針葉樹に発生するので、環境がやや異なることで同定できます。こんな低山では余り見かけないと覚えておきましょう。 さて、それ以外の着眼ポイントが以下のとおりで、見るものの愛情がためされる正念場です。クロチチタケL. lignyotusとクロチチダマシL.gerardiiとの相違点は乳の色の変色が決め手となります。クロチチタケは、ヒダもおっぱいも、触れると紅変することで、赤ら顔にならないこのキノコは、ダマシくんだってわかるのです。 ちなみにクロチチタケは苦味がありも食用には向きませんが、ダマシくんは温和な味で結構いけます。いずれも食べても死なないという意味で食用です。 比較的特徴の分かりやすいきのこでさえこれくらい注意を払う必要があるのです。「たかがきのこ」とたかをくくれないことが、このキノコ1つとっても言えることがおわかりでしょうか?!。この判断が瞬時に出来れば初心者卒業です。 どうです?。きのこを食べたいならこれくらいの判断力を身につけなければいつか逝っちゃいます。
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最終更新日
2015年07月14日 18時19分24秒
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