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夢みるきのこ

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2015年09月30日
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カテゴリ:川西きのこクラブ

 さて、いよいよきのこレッスンに入ろう。英語できのこのことはMushroomと言うが、食用きのこにあてられた言葉で、食える・食えないの2分法の食えない野性のきのこのことは、便宜上Fungus (複数形Fungi)としている。かの有名な幻の日本キノコ協会 Japanese Fungus Appreciation Societyは、食えないきのこ(=Fungus)の美学を追求する世にも不思議な協会であった。もっともこの発想は50年、いや100年早かったので、いまだにきのこの名前を聞く前に「このきのこ、食えますか」と臆面もなく質問する愉快な人達と間もなく30年にもなんなんとするがつきあっている。それは、きのこの重要な特性のひとつに庶民性、いやもっと低位の下層庶民が当てられるからである。だから30年近くも「ちょっと背伸びの庶民になろうね」と言い続けて、まだ懲りずに言い続けている次第だ。

 この「夢みるきのこ」は、食えない存在が如何に美しいかを小声で伝える使命感みたいなものに促されてウダウダ、クダクダ書きつらねてきた。

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「このきのこたべられますか?」さてどうでしょう。そんな質問をもってくる人は永遠に以下のきのこが同じものであることを言っても理解できないのが悲しい。

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 このキノコは切ったら血が出るターラタラの チシオタケ。クヌギタケ(=Mycena)の仲間だ。「このきのことサクラタケの違いは?」色が同じでも傘の開き具合が根本的に異なることが1。クヌギタケの仲間はマリリンのスカートのようにまくれ上がることは決してない。そして、傘にはパラシュート様の縦じまが中心から縁へ向けてつくものが多いが2。発生するのが地面ではなく樹木上というのが3。

 以下のきのこがサクラタケ Mycena pura だ。

 このきのこ、シメジの仲間ではなくクヌギタケの仲間であるが、例外的に土から出る。だから悩ましいこと限りない。しかし、近年食えるきのこ(M)から食えないきのこ(F)に転落した、いとおしい僕の友達

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 下のきのこが同じサクラタケであるとは信じられない人は僕の友人ではない。だから僕はいつも孤独なのだ。と言うと恰好が良いが、実はただ単にイケメンでない上にシロブタに近いだけというのが本当のところ。

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 だったらこれはどうだ。傘の状態、筋の様子、可憐、すべてクヌギタケの条件を整えている。でも残念でした。この蝋細工のような透明感あふれるきのこはヌメリガサ(=Hygrocybe湿り気を帯びたという意味のラテン語)の仲間のきのこだ。若草色をしているのでワカクサタケ。馬鹿臭茸なんて口が裂けてもいえないだろう。食えないきのこの真実は美し過ぎることにあるようだ。右の写真も同じきのこであることはわかってほしいよね。

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しばらくヌメリガサが続くが、きれいであることはわかってもこれが花子さんか静江さんかは実に分かりづらいものがある。上のきのこは赤いヌメリガサだが、ヒイロガサかベニヤマタケか分かるかね。湿気の多い時でも傘にぬめりがない。柄に縦筋が入らない。傘のてっぺんに乳首のような突起がありそうでなさそうで黄色いサクランボのヤマヒガサタケとも違う。そこでベニヤマタケと判断する。傘の色がタイプの真紅とは異なり赤橙色であることが迷う原因だ。

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 これも上のきのことは似てもにつかぬものだが、諸条件を総合するとベニヤマタケの特徴をもっている。キノコはこうしたことをすれ違いざまに即座に判断しなければプロにはなれないから難しい。そうした動物本能を取り戻すために、きのこと付き合い、自分の判断がいかに良い加減なものであるかを知ることはとても大切。

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 ヌメリガサの黄色種のアキヤマタケ H. flavescens。おとなりさんはアケボノタケに似ているが、同じアキヤマタケの老成したもの。この判断が実にむずかしい。きのこを見分けるためには暗黙知の了解という野性動物の片鱗である人間の本能的な部分に訴える必要があると僕が言うのはそのことを指す。

 料理でも名人は大さじ何杯とかカップ1/2なんて言わないでしょう。いわゆる塩梅(あんばい)で決める。同じことですね。 

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 露出補正をしていなかったのでちょっと分かりづらいが、白い小型のきのこ。傘が繊維質なのが特徴。老成すると下のようになる。アセタケ(=Inocybe)の仲間で、シロトマヤタケ。黒ければクロトマヤタケだ。食べると冷や汗をかくことが名前の由来とか。イッポンシメジの仲間は可哀想。

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 これは冬虫夏草の仲間(=Cordyceps)でハナサナギタケ。サナギタケの分生子型のきのこ。有性胞子を持つオレンジ色のこん棒状のものがサナギタケ。同じきのこの二つの顔。女性の掌の菌糸にくるまれた昆虫の幼虫(頭がみえている)に寄生してきのこをつくる。

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 ヒラタケはヒラタケでも食えないヒラタケのキヒラタケ Phyllatopsis nidulans。

喰えないだけで毒はないのは、きのこ全体の70%を占める不食きのこ。食えないけれど実に美しい。。   

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 キブリイボタケかと思いきや、モミジタケ Thelephora palmata。

さすがに「これ食べられますか」と聞く人は居るけど少ない。

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 これはどうだ。かぼちゃを練り込んだ素麺みたいだぞ。喰ってみろ。

 キソウメンタケ Clavulinopsis helvola

 喰ってもおいしくないだけで毒性がないのがとっても惜しい。      

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 これはチャワンタケの不明種だ。この仲間は、なかなかあなたのお名前はと聞いてもへらへらするだけで答えてくれないものが多い。

 ということで、食えないきのこはかくも多様で美しいことだけ覚えておいてくれれば本望だ。






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最終更新日  2015年09月30日 18時18分14秒
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