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夢みるきのこ

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2015年10月01日
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カテゴリ:川西きのこクラブ
    川西きのこ9月歌垣山 (49)0071.jpg

 京文化圏での日本の秋を代表するキノコは「香りまつたけ味しめじ」と言われ、しめじは特に珍重されました。しかし、マツタケもホンシメジも荒れ果てた大地に愛想をつかせて去って久しく、その代替わりをはたしているのがこのウラベニホテイシメジです。

 ウラベニホテイシメジ Rhodophyllus craccipes

  外見は、ホンシメジ Lyophyllum shimeji に酷似するこのきのこは、成菌になるとヒダが白から桃色を帯びてくるこのが違うだけ。その上、クサウラベニタケ Rhodophyllus rhodopoliusというそっくりさんの毒きのこがあって、きのこ仲間の間でしばしば話題にのぼります。

  シメジはもともと、はかない一生を通して胞子が白いまま(ヒダが白いまま)のきのこを一般的に指しますが、この布袋ちゃんは、rhodo=red, phyllum=leaf(赤いヒダ)が特徴の、妖しい毒きのこが多いイッポンシメジの仲間なのです。ついでに種少名はcracci=thick, pes=leg で、太っちょの脚をもつウラベニホテイちゃんの特性をしっかりと表しています。本しめじとはヒダが紅くなることで区別できますが、類似の毒きのこのクサウラくんとの差はきのこ目のするどい人なら一目瞭然ですが、きのこ全般に不馴れな名人でさえ時々誤植して上下ともに超特急のダイエットナイトを迎える羽目に陥っています。そこできのこ目専科の生徒さんへ伝授。

    川西きのこ9月歌垣山 (56)0076.jpg

 クサウラもホテイちゃんも広葉林ならどこでも出て混生しています。出会いは脚太が最初の決め手。握ると芯まで充実していて堅太りであることが分かります。クサウラのおみ足は幾分ほっそりしていてスカスカ、中は空洞状態です。

 雨のあとだとごらんのように、写真上のクサウラ状態で、傘の特徴がすべてパーですね。これもたしかなキノコ目があれば見抜けます。

 一瞥の内にきのこを見るとは人を見ることに通じます。

    川西きのこ9月歌垣山 (52)0073.jpg

 ついで、傘の表面の絹糸状の光沢と、指で押した跡のようなクレーター模様の有無に注目。この2点をしっかりとおさえれば大丈夫と思いきや、前述したようにその特徴が虫食いやお天気でたちまち薄らいでしまい、不明瞭なものに転じてしまうのです。この段階で食べた人の20%は中毒します。不幸というほかありませんな。

 食べて30分後には超特急の下痢嘔吐が始まりその状態が一晩続き、翌朝には4kgから8kgほど痩せると体験した人から聞いています。

それでも喰いたい一心の人には、絶対中毒しない秘訣を伝授しましょう。

それは、きのこの傘の一部を噛んで口に含んで舌でゆっくりまろばせてみること約10秒。独特の苦味が走ります。それがホテイちゃんの究極のシグナル。クサウラくんは、にがくも酸っぱくもなく無味のまま。口に含んで苦ければ食べてよしということです。

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 ヒダが紅いでしょう。これがイッポンシメジRhodophyllus の特性。ヨーロッパ菌類学ではEntolomaと学名まで異なりますが同一の属のことです。

 しかし、よくご覧ください。ヒダが鋸歯のようになっていますでしょう。これはきのこの性質ではなく虫が喰っているのです。

 ひとつのきのこが頭をもたげてポテチンと倒れて土に還るまでの2~3日の間にこれをいのちの糧とする虫たちが百数十種訪れます。飽食気味でメタボなあなたが入り込む余地は余り残されていません。

それでもいただくとなれば、ヒダにびっしりとつまっている微細なタケ蚊の蛆やトビムシなども一緒に食べることになります。その覚悟ができていますね。だったら大いにお食べくださいましな。

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  クリフウセンタケ Cortinarius tenuipes

  フウセンタケと呼ばれるきのこは200数十種ありますが、基本的な特徴は、幼時胞子を保護するためにヒダをカバーしているものが膜ではなく蜘蛛の巣状の糸だということ。胞子が成熟すると鉄さび色を呈すること。多くの種は柄の基部が風船のように膨らむこと。

 この幼菌も傘と柄の間に糸状の被膜がちらっと見えていますでしょう。見えない?!。だったらきのこ屋にもなれません。

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 もう少し成長すると柄の上部に蜘蛛の巣状の糸屑にさび色の胞子がからまって残るのが見えますが、このまばらな株と食べごろのぎっしりまとまった株を3株見つけて写真撮りをはじめたとたんに喰い意地の張った人達が僕に追いついて、それらの株をひっこぬいてしまいました。

お蔭でこのきのこの究極の見分け方を写真入りで伝授できなくなってしまいました。

つまらない欲ボケさんたちのおかげで千載一遇のチャンスを逃してしまったわけです。お気の毒さま。

 フウセンタケは多湿の日には傘にヌメリがあるものが多く、アブラシメジなんて名前まで頂戴するフウセンタケもあるくらい。ニセアブラシメジの別称をもつこのフウセンタケも御多分にもれず湿時粘性を帯びます。しかし、柄の基部は細いのです。それを学名ではtenui=slender,pes=footと教えているのです。

 おいしそうな黄褐色のこのきのこに出会ったら、群生していますので、成長のいろいろな段階を自分で見極めて籠に入れてくださいませ。幼時、蜘蛛の巣膜(=Cortina)をもつ。傘がぬめる。老成するとヒダは錆色となり味は落ちる。

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  ハナビラニカワタケ Tremella foliacea 

  このきのこはどんなにそそっかしい御仁でもまずまちがうことはござんせん。

 Tremella jelly-like(にかわ質の)、foliacea leaf-like(葉状の)で学名が見事そのものをあらわしています。この状態が成人式を迎える前後の姿で番茶も出花の食べごろ。フライがもっともおいしいと僕は思っています。しかし、この時期を過ぎると付け根がヤニ色、きのこは白っぽく干からび状態の雑菌まみれになり、図鑑をたよりに食の冒険をしている人はよくバクテリア汚染した古びたものを食して苦しまなくてもよい苦しみを味わっています。ご苦労なことです。






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最終更新日  2015年10月01日 17時54分15秒
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