|
カテゴリ:ムックきのこクラブ
秋の気配に誘われて先週は方々のきのこたちのコロニーを駆け足で探訪してきた。
ツクツクボウシタケ Isaria japonica (上・下同じ個体です) 秋の到来を告げるツクツクボウシの悲しげな鳴き声のもとで冬虫夏草のツクツクボウシタケ(分生子型)が顔をのぞかせ、森は早くもイッポンシメジの仲間で占められはじめ、赤・黄・白色のイッポンシメジやいつも和名がわからず頭を悩ませる薄紫色のイッポンシメジが「ごきげんよう」と胸を張って声掛けしてくる。 きのこの名前は、見たままを言葉にすれば、当たらずとも遠からずという場合が多く、分類学者たちの文学的センスの欠如を痛感させられるが、謎のイッポンシメジもウスムラサキイッポンシメジということにしておこう。 まだ夏の名残りの残る森では、キツネノハナガサが方々に顔をのぞかせていると思うと、ショウゲンジもちらほら見受けられる。 アカイボカサタケ Rhodophyllus quadratus キツネノハナガサ Leucocoprinus fragilissimus この可憐で、はかなさのきわみのような造形物に出会うと思わず足を止めて長居してしまうが、秋の食用きのこを採取する場合には、「今日はまだ時期尚早」のサインとなる。嬉しいような悲しいような出会いなのである。 謎のイッポンシメジ Rhodophyllus sp.(写真上下) イッポンシメジの特徴は学名の通りヒダが赤いことが目安になる。Rhodo(ロド)は赤色。ロートシルス、英語ではロスチャイルドのロートでおなじみ。ロックフェラーと並ぶ財閥の名前は赤い盾を意味します。phyllus(フィルス)はヒダのこと。最初ヒダは白いが1、2日経てばほんのり赤みを帯びて来る。世の東西でも名前は酔狂で付けられているのではないことが分かります。きのこを真剣に学ぼうとする人はラテン名を覚えると間違いなく記憶にとどまります。観察会でラテン名をいうと、「そんなのきのこ採りに関係ないわ」という反応がかえってきますが、これは大いに間違った態度です。こんな人たちにとってはスーパーきのこの世界なんて新興宗教みたいに感じられることでしょう。しかし、きのこを学ぶということは、もっとも自分たちに縁の遠い世界のいきもの事情を知ること。ここから他者へのおもいやりの心が生まれます。他人理解への最初の一歩がきのこであり、自分たちの正義を他人に押し付けないことで平和への道も開けることを知るのが次のステップです。そしてひとりでも多くの人がスーパーきのこの世界へ少しずつ参入されることを願っています。せっかくきのこと親しくなったのですから、さほどおいしくもないきのこを採り尽すだけに終わってしまっては余りにもったいない。 いささか気の早い仲秋以後が盛期のショウゲンジ Rozites caperata このきのこたちが姿を消し始めると町中でキンモクセイが香りはじめ、いよいよ秋本番のきのこたちの登場となる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年09月27日 09時15分41秒
コメント(0) | コメントを書く
[ムックきのこクラブ] カテゴリの最新記事
|