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2018年02月13日
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 奈良中心地からわずか8kmという地にありながら、菩提仙川の清冽な流れの傍らにひっそりとたたずむ悟りの山=菩提山・正暦寺。私のがむしゃらな旅路の果てに、そして新しい旅のはじまりに、この隠れ里の趣きのある山寺に行き当たった機縁をとても喜んでいます。
 発酵文化の私たちの安息の地として折々たずねましょう。


 冬季には見事な南天で満たされる寺域を貫き流れる菩提仙川の流れ。この地の別称「錦の里」のもみぢの季節は言うまでもなく、桜の季節も素晴らしいといいます。

 平重衡の南都焼き討ち以来、幾度かの再建にもかかわらず、現在では小高い地にある本殿と鐘楼堂、数寄屋風建築こけら葺き屋根の福寿院客殿のみが残されています。
 しかし、この地は寺院には珍しく天部の仏や鎮守の神にささげる清酒を自家製造する「僧坊酒」造りの寺として清酒づくりの伝統を今に伝えてきました。
 往時、この寺では、仕込みを3回に分けて行う「三段仕込み」、麹と掛け米の両方に白米を使用する「諸白(もろはく)造り」、酒母の原型である「菩提酛(ぼだいもと)造り」、そして夏場の腐敗を防ぐための火入れ作業など、近代醸造法の基礎となる酒造技術が確立されていたといわれます。
 それが現在、「南都諸白」に受け継がれたがゆえに、日本酒発祥の地とされているのです。
 今でも毎年の1月、境内で酒母(しゅぼ)の仕込みが行われ、「奈良県菩提酛による清酒製造研究会」に所属する県下の蔵元さんがその酒母を持ち帰り、清酒づくりを続けています。(写真上)



 京・狩野3代目、狩野永納の描く板襖画、庭園に面した欄間絵が残り、借景をほしいままにする庭園も見事なものです。



 本堂は石段を昇った小高い丘の上にあり、鐘楼は僕のような音好きの不届き者に静寂が破られないように撞木の綱は外されていました。

 本尊の薬師如来像が安置される本堂。
  汲みてみよ瑠璃の御壺の薬師水
            諸病を除く清き誓いを 
​          (大和北部88ケ所霊場 第73番正暦寺御詠歌)​

本堂脇の石龕には三尊像が刻まれていました。
また、この広場では、老いてなお色香をかすかに漂わせている
コガネニカワタケ ​Tremella mesenterica​ が出迎えてくれました。
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最終更新日  2018年02月13日 12時54分15秒
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