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カテゴリ:ムックきのこクラブ
百々神社より登り始めると島津藩の紋入り?の標石が目につく。 山旅の中で出会うきのこは、擦れ違いざまに、輪郭・形・傘の色・柄・ツボ・ツバの有無・質感などから即座に判断しなければならない。まずはみそめたきのこの印象を自身の過去の経験からざっくりとグループ名を特定。その上で近づいて細部を調べ修正するのが基本だ。これは人と人との出会いの場合にも役に立つ。全体の印象こそがその個性のすべてであることは知っておいてよい。細部から全体ではなく全体から細部のベクトルこそが野生動物の本能的把握の仕方であることを覚えておこう。 まず目に飛び込んできたのはベニタケ、傘の紅色はやや薄まってはいるが周縁部の条線がみとめられ、ドクベニタケ Russula emetica だ。 この日は同形でごく小型にした甲虫の匂いをただよわせるニオイコベニタケR.mariae も散見できた。 この季節、湿った材から発生するもので、短い柄があることからミニチュアサイズの押しピン状であることからビョウタケ Bisporella citrina と呼ばれている。 こちらは落ち枝から発生するシロホウライタケMarasmius candidus 柄の黒いものはアシグロホウライタケM.nigripes (黒い=nigro 脚=pes)とされる。落葉や落ち枝を腐朽するグループで、ホウライタケは全体が紙質でヒダが荒いのが特徴である。 こちらは種名はさだかに断定できないが、あきらかにスカートがまくれ上がったようなヒダをもつのでカヤタケ Clitocybe グループのキノコだ。 ヒラタケ Pleurotus ostreatus 市販のきのこの8割はこのヒラタケを改良したもので、エリンギ、アワビタケも、もちろん同じヒラタケの仲間だ。 この上下の写真はともにヒラタケだが、茶色の傘をもつ前述のきのこと同じものとはまず思えない。とても一筋縄では理解できないのがきのこで、私からすれば、きのこの面白さはここに極まる。 さらに頭を困難させられるのが、本日の不明種(写真下)。本日ごく普通に見られたモリノカレバタケやアマタケ、そしてイタチタケ同様の傘を持っており、通り過ぎてしまうところだったが、柄に違和感を感じ写真撮影のあと抜いてみると柄は紫の針金状で、なんと傘の裏がピンクだった。 あきらかにイッポンシメジ(Rhodophyllus rhodo=赤い、phyllus=ヒダ)の仲間だ。 コキイロウラベニタケ Rhodophyllus ater 強いて種名を押し当ててみるとこうなるが、傘の中央がしばしばへこむこと。もちろん傘の色が黒から暗紫色、さらに微毛あるいは微細な鱗片におおわれること。さらに基部には白色菌糸におおわれるからそうではないことはわかりそうなものだが、それが食べたい一心の人は、図鑑と見比べて、柄やヒダの特徴まで調べると、傘の色は退色し、微毛は失われたと判断してしまう。この早とちりがきのこ中毒につながるのだ。 この安直な判断が、以下に紹介するドクツルタケなどに適用されると致命的な食中毒となってしまう。 次の写真は、昼休憩の後、行動をはじめようと立ち上がったとき落葉の下からごく一部がのぞいていて、無葉緑植物のギンリョウソウだとおもい落葉をとりのぞくとドクツルタケ Amanita virosa だった。同行の人からもおいしそうだねぇとの声が。そうなんだ。この何のけれんみもない明瞭そのものの姿はわれわれの常識では善いものと受け止められやすい。人に害を及ぼす毒茸のたぐいは、どことなく怪しげで、曖昧な印象をもたらすものと思っているからだ。ツキヨタケ Lampteromyces japonicusと間違えられてよく誤食されるムキタケ Panellus serotinus 同様、中毒例の多いきのこに含まれる。毒茸の中でも、これほど明瞭な特徴をもつきのこは少ないにもかかわらず。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年11月11日 23時38分11秒
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