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夢みるきのこ

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2020年11月12日
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​​​​ きのこの秘かな愉しみは、出会うほどに無明の闇に包まれていくことにある。おびただしい数の未知(unknown)の世界がどんどん増えていきとどまることがない。私などは、せっせと数十年かけて得た知識がいとも簡単に突き崩されるのが日常で「よくのうのうと馬鹿面さげて生きてきたな」ときのこに叱られっぱなしだ。
 この日いたるところに発生していた写真(上)のきのこ、傘の色と形、柄のすぼまりや黒ずみから、全体に柔毛におおわれてはいないが、落葉分解菌のアマタケ ​Collybia confluens​と判断を下していたが、落枝上に発生するものを認めてたちまち自信喪失。きのこの全体的な印象は、私の体験からはクリイロムクエタケ​Macrocystidia cucumis​だが、こちらも落枝上には普通発生しない。裸眼ではここまでが限界で、これ以上は持ち帰り顕微鏡観察に拠らなければならない。ごくありふれた小型菌類はこのようにして打っちゃられ不明種のまま片付けられる。
 野山で出会ったときが勝負で、そのとき不明であればそのまま終わってしまうと今は亡き​​​​
本郷先生がよくいわれていたが、本当にそうだ。新たに図鑑でも作る意欲がなければほとんどのきのこは不明種のまま終わってしまう。
​​写真(下)が同日出会った典型的なモリノカレバタケCollybua dryophilaである。​​

 

 ​ムラサキアブラブラシメジモドキ​ ​Cortinarius salor​​​
 秋から冬にかけて松混じりの広葉林でマツタケが終わる頃からちらほらと顔をのぞかせるきのこが、このムラサキ色の可憐なフウセンタケ属のきのこだ。新鮮な個体は粘液に包まれあでやかな紫色を呈してわたしたちを迎えてくれる。僕の大好きなきのこの一つだ。

 小型なから成熟した胞子色は鉄さび色、傘のヒダの胞子が成熟するまで保護膜の役割を果たすツバがクモの巣状というフウセンタケ属の特徴を見事に備えた優れもののきのこだ。ラテン名のコルチナ、ロシア名のパウチンニクもこの被膜の形状(コルチナもパウークも蜘蛛の糸を意味する)に由来する。

 この柄に残るツバの痕跡が鉄さび色であることがそれをよく物語っている。みそ汁の具にすると美味。

 秋の楽しみの代表的なきのこが写真(上・下)のきのこだ。秋、松の林で明るいベージュ色の傘のきのこに出会いひっくり返すとグレーっぽい放射状の網目が広がっているこのイグチ(成熟すると傘のへりがイノシシのクチのようにまくれ上がる傘裏がスポンジ状きのこの総称)に出会うと幸せ感で一杯になる。

 アミタケ​Suillus bovinus​​​ 
 松林が更新期に入って久しい近畿の山々ではマツタケ同様、希少種になりはじめているが、かっては秋の食用きのこの代表選手だった。大量に採れて教えた会員さんに持ち帰ってもらったが、煮るとムラサキ色を呈し、そのため毒キノコと思い捨ててしまったという話をよく後で聞かされた。が、その熱を加えると紫変するのがこのきのこの重要な特質なので、それからは煮て変色しても捨てないようにと一言添えるようにしている。


 ​​​​初夏から晩秋まで人里近くでよく見かけるチチタケの仲間(写真上)。  
 チョウジチチタケ Lactarius quietus 
 傘の中央からヘリにかけて環紋が付くのが特徴である。中央が暗褐色で環紋が不明瞭で乾燥すると丁字、すなわち香辛料のグローブの匂いがするのが特徴。 
  ニオイワチチタケ ​Lactarius subzonarius​​​​​
  
よく似てはいるが、この傘の中央から周縁にかけて褐色と赤褐色の環紋が交互に見られるのが サブゾーナリウスちゃん。 こちらは加齢臭ならぬカレー臭が辺り一面立ち込めるのですぐに見つけられる。

 八幡山より西の湖を見はるかす。
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 反対に日箭さす東方面の琵琶湖。
  八幡山は琵琶湖と西の湖に挟まれた南北に延びる尾根である。


 この日は、インド帰りのアシュタンガ・ヨガで身心ともに深い境地を開拓中のYさんが、福島のリンゴ農家のリンゴから分離培養したバチルス菌発酵のリンゴジュースや富貴工房の味噌部で培った技術で作った鉄火味噌ともう一種の味噌を持参してくれ、発酵で発光しまくる昼食となった。
僕はアイリッシュのタルモアデュー、S画伯は和製ウイスキー・白州のお粗末発酵で茶を濁した。

​ どんなささいな人生にものっびきならぬ出会いと選択の日々があることを忘れなければ、​地球の明日は確実なものとなる。人生を楽しめるだけたのしみ、それをバネに決して絶望することなく、一見そろばん勘定からは無縁としてはじき飛ばしてしまう他者への思いやりを忘れないことで少しずつ世界は変えられると信じよう。
 ​無駄ばかりの人生でも、ずば抜けて無益なムックきのこクラブ​の旅はそんな善意の人たちに支えられていのちのかぎり続いていきましょう。​





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最終更新日  2020年11月12日 13時26分55秒
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