|
カテゴリ:川西きのこクラブ
奥の院への林道に入る前にみかけた高木に発生したきのこ。ネッタイカワキタケと思いきや、呆たけたハチノスタケでした。 ハチノスタケ Polyporus alveolarius 材の白色ぐされを起こす多孔菌の仲間。かって柔らかい革質のきのこなので鍋に入れて食べようとしましたが、煮れば煮るほど強靭な固さになり食べることは不可能でした。良い出汁が出たかどうかもわかりかねますが、立ち枯れの木を強烈に分解して土にかえす「送り人」ならぬ「送り菌」のひとつです。 冬ざれの杉林でよく目につくマツタケ型のきのこの代表種がこれです。 スギエダタケ Strobilurus ohshimae まつかさから発生するマツカサキノコモドキと全くよく似ているが食性の違いと偽根の有無、マツカサをたべる菌チャンは褐色の傘をしていることから区別されるようになりました。スギエダタケは小型菌ですが、これを大型にしたような傘が茶色で偽根をもつツエタケなどは同じきのこのように思えてなりません。 小型ながらテクスチャーも堅固で型くずれせず、きれいなきのこです。 パッと見には、イタチタケ、あるいはムジナタケかと思いましたが、ヒダが暗灰褐色なのでコナヨタケだと判断。 コナヨタケ Psathyrella obtusata イタチもムジナもムササビもすべてナヨタケの仲間です。なよなよして柄が軟骨質でポキリと折れやすいので私はひそかに骨粗しょう症きのこと呼んできました。道端に発生するのでおそらくきのこ好きは1、2度はみかけているはずですがじっくりとは観てくれないとこぼしています。どうぞ時々は立ち止まってお話してあげてくださいませ。林内地上あるいは埋もれ木から発生。以下も同様のきのこです。 ヒトヨタケの仲間 Coprinus sp. コプリヌスの属名は糞生のという意味。今はやりの言葉でいえばうんこちゃんきのこってところですね。すでに老成していますが液化していないのが同定のキーでしょうが、種名は控えます。傘の径2cm強でした。 森の分解者としてのきのこを観察をするためには、属名まで分かればそれで充分。菌根菌や木材や落ち葉腐朽菌かがわかりますので、川西きのこクラブの人たちもせめて属レベルでのきのこを把握できるようになれば、自然観察会としての役割は十分に果たせます。そのためには図鑑を全体的に俯瞰してグループの概念を把握する必要があります。 このクラブでも熱心なきのこファンも輩出しはじめていますので、もう半歩か一歩踏み込んでもらえると素晴らしい会になるのですが、無いものねだりでしょうかね。 スギヒラタケ Pleurocybella porrigens この白色のきのこも森を散策する人たちには比較的なじみの深いきのこです。針葉林、ことに杉林の古い切り株などから重なって出ている美しいきのこですのでどうぞ記憶にとどめておいてください。 スギヒラタケは通常はこんな形で発生しています。 アカハツ Lactarius akahatsu 松林でもないのにハツタケかなと思いましたが、傘の環紋が不明瞭で別個体ではヒダから緑青色がみとめられましたので、アカハツでした。柄は傷つけるとごく少量の赤い乳汁を出し、やがてワイン色にかわることで区別できます。モミ林に特有のアカモミタケ同様、柄にしばしば浅いクレーター状のくぼみをつけるのも種の同定に役立ちますが、このきのこのように無い場合も多いのです。 ハタケコガサタケ Conocybe flagilis 苔の間から出ていたのでときめきましたが、キコガサタケの仲間の可憐な小型きのこと判明。ワインレッドの傘の色が褪せていましたが、柄にしっかりと色香をとどめていましたのでなんとかわかりました。 みんなが足早に通り過ぎたあとからついていて見つけたきのこ。晩秋の美しいきのこのモエギタケです。卒塔婆小町以上に老成していて往時の美しさはとどめていませんが、傘の表面にかすかにとどめるモエギ色と柄の白さと紫褐色のヒダからそれと知られます。きのこは全体をまず見て、それから細部へ向かうとよく理解できます。 私がきのこ初学の頃、神戸市森林植物園で特殊フィルターを用いて撮影したものはこちらです。 モエギタケ Stropharia aeruginosa 根元に根状菌糸束を持ち、柄には膜質のツバを持ちますが、これらのすべての特徴が失せていても、どこかにその痕跡が残っているものです。 人を愛し、無意味にちかい存在とされてきた雑茸なんていわれるきのこを愛するということはこんなことをしっかりと認識することなのですね。 このきのこはかって我が国における冬虫夏草研究の先駆的存在であった故清水大典先生が、毒茸の近縁種であることから試食してみてなんともなかったので、改めて食用キノコの仲間入りをしたといういわく因縁つきのきのこです。 おなじみの毒キノコのニガクリタケ Naematoloma fasciculare 奥の院で石灯篭の大型きのこを発見した直後、出会ったきのこがこのナラタケモドキです。 ナラタケモドキ Armillariella tabescens 小さな腕輪(アーミラリエラ)のラテン名をもつナラタケのその腕輪(ツバ)のないものがモドキで、過乾燥の林内で干からびる寸前に出会いました。ナラタケには風味もやや劣りますがこちらも優秀な食用キノコです。 今回ときめいたのはこのきのこですが、同行した自然教室会長の田中簾さんが丹念に調べてくれてクヌギタケの仲間のきのこにアオカビが二重寄生したものと判明。下の写真がそうです。 アカキクラゲと普通呼んでいますが、近年はDacrymyces parmatus ハナビラダクリオキンとされています。まだ出始めで脳みそ状になっていません。 チョウジチチタケ Lactarius quietus チチタケグループは傘の表面に環紋をつけることが多いのですぐにわかります。詳しくは先月の近江のムックきのこの旅を。 ビョウタケ Bisporella citrina 押しピンのかたちをしていますのですぐにわかります。 本日若い個体をぜひ見せたかったのがこのきのこ。 ウズタケ Coltricia montagnei 多孔菌のオツネンタケグループの稀少種。若かりし頃は茶褐色で傘も渦巻模様を呈しています。駒形をしていてヒダが同心円の渦状であることが特徴。ヒダが連結して管孔を形成します。 こちらもなかなか見ることが少ない テングノメ̪シガイ Trichoglossum hirsutum コゲラ編集スタッフの門脇宏恵さんがコケの間から1個体だけ出ているのを見つけました。すごいきのこ目ですね。 サルノコシカケはいつも通り最初の写真のハチノスタケ、シハイタケ、ハカワラタケ、カワラタケ、チャウロコタケ、ウチワタケ、ツガサルノコシカケ、オシロイタケが出ていましたが、珍しいところではオシロイタケの青味を帯びたアオゾメタケと前述したウズタケが見かけられました。 珍しくはありませんがやや老成した写真上のものをご紹介。 ツヤウチワタケ Microporus vernicipes 形が団扇そのもののウロコタケのやや躾が行き届かないわんぱく小僧といった風情のウロコタケがこちらです。若い頃はその名の通り、傘の表面に艶を持っています。 変形菌のマメホコリLycogala epidendrum 未熟体は紅色を呈していますが、晩秋、倒木上などによく見かけます。 川西きのこクラブの納めの会で晩秋から冬に姿をみせる紫色のきのこの紹介をと思っていましたが、松が少ない杉林ルートでしたのでムラサキシメジやムラサキアブラシメジモドキなどとの出会いはかなわず、来年の楽しみとなってしまいました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年11月24日 14時20分27秒
コメント(0) | コメントを書く
[川西きのこクラブ] カテゴリの最新記事
|