|
カテゴリ:ムックきのこクラブ
黄檗山萬福寺は、中国福建省福清市漁渓鎮にあります。ここの黄檗希運禅師に師事した臨済義玄禅師が臨済宗を開宗。この寺の住持となった隠元禅師は鎖国の最中の江戸期に日本に招かれ黄檗の伝統を伝えました。それが宇治の萬福寺です。当時、この寺域内ではすべて中国語オンリーでしたので、異国文化の途絶した列島人にとってはとても奇異な印象を抱いたことと思われます。この黄檗文化は、世界中に進出した華僑の文化を伝えていますので、21世紀の島国・日本は、お隣りの中国との友好的な関係を新しい文化として築いていく上でとても参考になると思われます。萬福寺の開創についてはいずれここで紹介しますが、まずはきのこ端境期の5月の宇治・萬福寺のきのこたちを紹介いたしましょう。
ふらりと訪れる観光客にとっては、宇治・萬福寺の中心は天王殿です。ここには無仏の時代の56億7千万年の後の世に現れる弥勒の化身とされる布袋さまがデンと坐って訪問客を迎えてくれます。この日は寺僧や観光客の影ひとつない素晴らしい一日でしたので、心行くまで萬福寺の魅力を体感することが出来ました。 その天王殿への石段の隙間の苔の間から顔をのぞかせたきのこたち。 掃き清められて一見何にも無さそうな石段でしょう。しかし、コロナ禍でもなければとてもゆっくり対話できなかったきのこたちがここに集中していましたので、本当にラッキーでした。 近年ますます減少傾向にあるキツネタケの仲間のアメジスト色のきのこ。 ウラムラサキ Laccaria amethystea もともと小型のきのこですが、過乾燥の日々をこうしたわずかな苔に守られて石段のメジのところどころから顔をのぞかせている様は実に愛くるしく、一期一会の出会いの喜びに心震えました。 そのウラムラサキからすこし距離を隔てて同じ石段の苔に棲み分けていたキツネタケ Laccaria laccata 4胞子型 全く同形同大のきのこで傘中央におへそもあり肉眼では区別が難しい キツネタケモドキ Laccaria ohiensis がありますが、2胞子型であることで区別されます。現在のところこの顕微鏡下での種の違いはさほど意味を持ちませんが、生態的な見地から見ると将来的にはこの差異が重要になってくるかもしれませんので頭の片隅に置いておいてください。 さて、大王殿脇の美しい中和園では、梅の生きた古木から白色腐朽菌の アミスギタケ Polyporus arcularius が顔をのぞかせていました。夏も近づく八十八夜過ぎの季節になり日中の気温が20度を越え始めると、まずこうした熱帯性のきのこたちが顔をのぞかせます。皮質のサルノコシカケに属する硬質菌ですが、放射状に長く伸びた傘裏の管孔がとても美しいきのこです。 萬福寺のきのこのおまけに祖師堂脇で見つけた オオゴキブリ Panesthia angustipennis 5cm近くある黒光りするゴキちゃんで翅は小さく飛べそうにありませんが、朽木の中などに棲息しています。このゴキブリの存在は、この寺苑の森の自然度が保たれている証しともなりますので貴重です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年05月13日 11時23分04秒
コメント(0) | コメントを書く
[ムックきのこクラブ] カテゴリの最新記事
|