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カテゴリ:ムックきのこクラブ
西山方面のきのこたちとのデートは、青葉ごもりの人影まばらな寺社をたどる道行きに重なる。私たちにとって大山崎の聖武天皇勅願、行基創建伝説をもつ宝積寺の微笑み地蔵さながらにきのこたちの笑みこぼれる様は何よりの慰みである。 シロキクラゲ Tremella fuciformis きのこの中では珍しくコウボ世代をもつシロキクラゲはこの時期の異型担子菌の代表株だ。純白で半透明のゼリー状きのこ。最近はきのこ女子の間でスイーツにしてシロップ漬けにして楽しむことが多いと聞く。 クロハナビラタケ Ionomidotis frondosa 形状からはハナビラニカワタケのようで異型担子菌のキクラゲの仲間を彷彿させるが、ズキンタケやチャワンタケの仲間に近い子嚢菌グループに属し、しかも日本特産。秋から初冬に発生すると言われるが、近畿では初夏から暑くなる手前の森でよく見かける。ニカワ状の皮質の本体はいかにも黒魔術師という感が否めない。毒性のあり、激しい腹痛と下痢に見舞われるという。 ヒイロタケ Pycnoporus coccineus 雨意こめた山辺の森では、補色の関係にある紅色を呈する白色腐朽菌のヒイロタケはとりわけ目立つ存在だが、この日は至るところで出会った。 ヤマドリタケモドキ Boletus reticulatus 日本産ポルチーニのヤマドリタケは不名誉なモドキが付せられているが幼時より威厳のある風貌をして我々の到来を遅いじゃないかと出迎えてくれた。初夏の森を輝かせてくれるきのこの代表である。 アイタケ Russula virescens 安倍晴明の時代ならこのきのこ、甲羅を焼いてその亀裂の走り方で占う亀ちゃんの代用に用いられたのではないだろうか。それほど見事な茶絣模様を呈して私たちを慰めてくれる。やや密なヒダと柄はいずれも純白で花魁のうなじを思わせるところからこの仲間は泉鏡花などから格別に愛されたようだ。中央部に亀裂が入るのはまれなのでそんなアイタケに出会ったら教えてほしい。 サマツモドキ Tricholomopsis rutilans 「遅いじゃないか」と叱られたのが暑い時期に元気な姿をみせてくれるこのきのこだ。梅雨時に出るマツタケに見紛うことからの命名だろうか、サマツに似て非なるきのこという不名誉な名前を付けられているが、ヒダの黄色がすてきな中・大型のきのこだ。過乾燥のため干上がってしまったが、息も絶え絶えに出迎えてくれた。 キヌガサタケ Dictyophora indusiata モンローきのこは昨日紹介したが、実に舞い姿も多様で遠来の客を喜ばせてくれた。六甲山系ではキヌガサタケはベールが寸足らずのマクキヌガサタケ Dictyophora duplicataが主流で頭部のグレバのにおいも温和で風邪薬の「改源」を思わせるが、西山あたりのキヌガサタケはニオイも強烈だ。 このほか、私の好のきのこでは ニシキタケ Russula aurea コテングタケモドキ Amanita pseudoporphyria ハナオチバタケ Marasmius pulcherripes などが散見できた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年06月15日 10時59分19秒
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