夢みるきのこ
PR
< 新しい記事
新着記事一覧(全3363件)
過去の記事 >
ツチアケビの果実 この峠越えの旅ではツチアケビが赤い猿田彦の鼻のような実をつけていた。先月丸山湿原で花の蕾を見届けたところで、私たちは通年ならこの赤い実とは秋に出会うので1~2ケ月以上も早い。 丸山湿原のツチアケビの花蕾 ツチアケビ Cyrtosia septentrionalis 果実には糖分が含まれ、微かに甘味があるが、タンニンを多く含むため苦くとても食用にはならない代物だ。皆の「美味しいのだろうか?」という疑問に応えるべくさっそく茶屋町画伯が試食していたが、口に苦みが長く残って駄目だとのこと。漢方では薬効があるので果実酒にして飲む人もちらほらいるようだ。さてラン科に属するこの植物は太い地下茎には葉をつけるらしいが、無葉緑植物で菌類とりわけナラタケと共生していることが知られる。 また近年、この植物はこの赤い実をついばむ鳥によって種子が伝播されることも分かってきた。 「月のしずく」35号ではこのナラタケを紹介したが、この菌と具体的にどのような共生関係を結んでいるのかはまだ不明な点が多い。 ナラタケは吉野の千本桜のように樹勢の衰えた樹木に取り付いたり、全く健全な樹木に取り付き枯死させることもある殺生菌として悪名が高いが、その多くは、単に樹木や切り株に間借りしてきのこをつくるだけの腐生的な生活を送っており、目くじらたててけしからんと言うほどの悪党ではない。 私たちがきのこについて本当に知らねばならないのは、実はこの共生関係にある個々の生物のsymbiosis(Relationship)共生関係の実態なのだ。しかし、こうした学際的な研究は我が国では他の研究者の領域を侵犯するものとして余り推奨されてこなかったためいまだに謎めいたままに残されている。ましてやミクロな生物の振舞いはそれをしっかりと見届ける莫大な費用を要する設備が不可欠で到底アマチュアの手には負えないものだ。 したがって、きのこを愛するアマチュアは、こうした広義の共生関係(異生物間の生態学)といった生物学としての菌類学の基礎科学を研究する菌類学者・微生物学者を文化やアートの力で支援することで尽力しようと考え、J-FAS日本キノコ協会を創った。 J-FASとは、Japanese Fungus Appreciation Societyの略だ。ここに挿入された Appreciation に、非権威・非権力という私の万感の思いが込められている。「月のしずく」はこの事業の志向するものを次世代へ贈る言葉として編まれている。 生物学を学ぶ上でもっとも大切なこの考え方の重要性を力をこめて訴え続けた人物が『森の生命学』の著者・今は亡き今関六也さんである。 それは、おのれをむなしくしてヒトとヒト、ヒトと他生物、ヒトとモノ、モノとモノをつなぐ人、英語でいうところの inter の役割を自覚した人たちをいかに多く輩出させるかにかかっている。
猪名川東光寺の木喰佛 2022年10月25日
珍客万来 2022年07月28日
冬虫夏草のカメムシタケ Cordyceps nutans 2022年07月27日
もっと見る