夢みるきのこ
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愛宕山は924mで低山に属するが、都市近郊に位置する神奈備で標高差があり、年齢とともに登るのが困難になる。 駅で来るはずのない人たちを待ちながら、愛宕山はとくに意図したわけではなかったが、秦氏の痕跡を訪ねあるく習慣がついてからは、わが人生の節々でトライしてきたような気がするなと回顧していた。 天気予報が荒天を予想する際の山登りはとりわけ狙い目の山旅となることはこれまでの経験上間違いないので、なんとなくわくわくしている。 今回は終始、息も絶え絶えでフラフラの体たらく。1クール8年のわがきのこ暦第5期のはじまる2024年には再び登れるのだろうかと思い知らされる一日だったが、それはさておき案の定一日を百倍楽しめる山旅となった。
橋の上が駅であるJR保津峡駅で下車。もちろん無人駅。 つつじ尾根からの登山ははじめて。取りつきからして何の目印もなくつつじの季節以外にはほとんど利用者もない様子。しかし、のぼりはじめるとしっかりしたトレールがついており、湿度100%のサウナ状態の中を微風が通る尾根道までひたすらよじる。 こもれ日のさす山道をひたすら登り表参道出合まで。涼し気にみえるが、まさに服を着たまま泳いだかのように全身汗と湿気でぼとぼとになる。 表参道まで出るとさすがに丁石がわりの地蔵には花が供えられている。 黒門。ここから愛宕明神の境内地となる。 黒門からまた延々と続く参道の終わりに本殿がようやく現れた。 ひもろぎの磐座。 朝日峰にあったとされる白雲寺在りし頃は隆盛を極めたらしいが廃仏毀釈で取り壊され、いまは火伏せの神様一色の神宮のみ。イザナミを産褥の苦しみの末に黄泉へと旅立たせたカグツチが主祭神。愛宕天狗の太郎坊、奥宮には出雲系のオオクニヌシほかを祀る。脇社には秦氏関連の稲荷社。 今回の道連れは健脚ですたすた登る姿が凛々しいH氏ただひとり。 愛宕山は目下江戸期の修験信仰のオンパレード。本殿入り口には蘇民将来の茅の輪くぐりまで用意されていた。そして、私の今回の目的は…。 稲荷とともに脇社として祀られているのが新羅を意味する白鬚神社。にわかに霧が立ち込めなんとも奥ゆかしい雰囲気に。 山城国の葛野秦氏の神奈備・愛宕山にあるこの小詞の存在こそが若狭・出雲・丹後の北つ海勢力のランドマークとなる。 ここから月輪寺へ。数年前たずねたときは、10数名いたにもかかわらずここを一人で切り盛りする若い僧がすべてに湯茶の接待をし、法話や寺院のゆかりまで聞かせてくれた。が、今回は境内のいたるところに禁止の札が立てられ、訪ねた人の気配にもかかわらず、僧の姿は見られずコンクリート造りの宝物殿だけがやたら鼻をつき、これあるために余計に寺の荒廃が目立った。
法然・親鸞が法難に会い、島流しになるさいに涙を流して別れを惜しんだという桜の老樹を見て清滝に下山。 かってはここから清滝までの道は切り立った崖を降る岨道だったが、今回来てみると新たに道が切り開かれ随分通いやすくなっていた。 さすがにこの日はきのこが方々から顔をのぞかせモスラたちもそこそこ出迎えてくれたので大満足。この日の出会いは、これから追々語ることにいたしましょう。
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