今回の登山は、熱い夏のはじまりにどれだけ余力を残しているかを自己診断するためのものであった。きのこたちに励まされてかろうじてパスはしたものの立派におじんであることを思い知らされた山旅ではあった。
天狗の太郎坊で有名な愛宕山は、テングタケが多数発生する。
コテングタケモドキ Amanita pseudoporphyria
京阪神の山筋ではこの天狗が初夏から盛夏にかけて気温が上昇するのにあわせて大発生する。きわめて大型のきのこで、わたしにはなじみの深いきのこである。いちおう毒とされるが、傘の縁に条線がつくことから致死毒ではないと私は思っている。モドキがつくとモドキなし(pseudoがつかない)もあると思ってしまうでしょうが、それもあるにはあります。コテングタケ(A. ポルフィリア)は同形でやや小さく全体にこのチョコレート色の傘、白いツバ、ツボよりも全体に灰色がかっているとされる。が、私はこれまでまだ出会ったことがない。
モドキくんの成菌がこちらである。成菌では傘の縁に条線がみられない。ツバはよだれかけのように垂れさがる。
この形状が、食用きのこを採取する人たちが食べることを躊躇する原因であるらしい。
しかし、テングタケ(Amanita)のグルーブはすべてツバ、ツボ、を持ち背すじをシャンと伸ばし、天狗のように精悍でいでたちもダンディーそのもの。きのこファンに愛される所以であろう。
テングタケダマシ Amanita sychnopyramis f. subannulata
アマニタ シクノビラミス フォルマ スプアニュラータ という長いラテン名を持つが、われわれが通常テングタケとして親しんでいるパンサーマッシュルーム(Amanita pantherina)との違いは、これより小型で傘の上にちらばる鱗片がとがっていることである。
タマゴテングタケモドキ Amanita longistriata
猛毒のタマゴテングタケに似ているということでこの和名がつけられたが、関西では、肝心のタマゴテングタケ(A. ファロイデス)は、滅多にみかけることはないし、ヒダがピンク色を呈し通称アカハテングタケと呼ばれており、ツバもややリング状なので、どこが似ているのか頭をかしげてしまう。傘のへりにつく条線もあざやかなので猛毒ではなさそうである。
この日は、ちらほら報告が届きはじめた西洋では皇帝のきのこと呼ばれる真紅の傘とだんだら模様の柄をもつタマゴタケ(A.ヘミバーファ)はまだ顔を出しておらず、これだけが残念。
この写真の傘の下側にベールが伸び出しているが、これはきのこにつくカビで、カビの仲間のきのこにカビがつくという二重寄生の例である。