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2008.04.01
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カテゴリ:小説


広く風通しのいい体育館に、アレインと二フォード達のクラスはいた。
あの後老教師は、自分のクラスが今夜の協力に参加することを告げ、
今日の授業が全て実技訓練に変更されることが決定されたのだ。
今は皆、かんたんな防護服に身を包み、私語をしあっている。
ほとんどの生徒の薄茶色の防護服の上にのった顔には、不快そうな表情が浮かんでいた。
ニフォードもそんな不快な表情を浮かべる生徒のひとりだった。
しかしそんなニフォードたちとは対照的に、アレインは嬉しそうな顔をしている。
周りを見渡したり、拳を握ったり開いたり、落ち着きがない。
そしてやっと体育館に教師がやってきた。
皆はその方向を向き―――硬直する。

担任である老教師の隣には、身長が2メートル近くある筋肉の塊の男がいた。

「えー、今日は、外部指導員の先生に来て頂いた。
 この方は隣町で1、2を争う剣の腕前の持ち主で・・・」
担任が紹介をする間、隣町から来た筋肉の塊は首を巡らせ、
生徒達の固まり具合を見て鼻で笑った。
そんな中、生徒達は
『こいつは絶対、正式な外部指導員じゃないだろ』と囁き交わした。
筋肉の塊の上に、ちょこんとのった顔には、狐のように端がつり上がった目、
光っているスケルトンヘッドには刃物でつけられたような傷跡があり、
頬にも何本か同じような傷跡が何本もあり、
着ている防護服には、黒地に白い骸骨が描かれている。
どこからどう見てもヤクザ関係の人間としか思えない。

「・・・ということで、ひとり1回づつ、この方と模擬戦をしてもらう。わかったな?」

担任の話が終わると同時に、
「なあ、センセイよお。最初の相手はオレが選んでいいよな?」
ヤクザ・・・もとい外部指導員の大男は言って、老教師を見下ろした。
「え、えぇ、いいですよ。」
老教師はうろたえながら、その銀髪の頭をこくこく縦にふる。
不満をぶつける生徒達を鎮めたベテラン老教師の姿は、既に無かった。

「よし、じゃあ・・・」
大男は汚い笑みを浮かべながら、さっき見つけた生徒を指さした。
「おい、そこの赤いの!」

その指の先にいたのは、アレインだった。
大男は大きな声で呼んだのだが、無視しているのか聞こえていないのか、
彼はそっぽを向いたままである。
すると大男はすぐさま動いた。整列していた薄茶色の集団を押し退けて、アレインに近づき、
「おら、お前のことだよ。」
胸ぐらを掴んで、持ち上げる。
「この学校のセンセイから聞いたぞ。お前が一番強いんだって?」
アレインは答えない。大男は気にせず、体育館の後ろにつくられていた、テープで囲まれた
簡易型の試合場に彼を投げた。
アレインはそのまま、きれいに放物線を描いた。

建物が揺れる。

大男は倒れたままのアレインに、壁に立てかけてあった木刀を投げる。
するとそれは、アレインの額に当たって、『しぱーん』と、いい音をたてた。


「・・・気に入らねえ。」
アレインは尻餅をついたまま、口の中で毒づいた。
男が自分を投げたことも、自分に木刀を投げつけてきたことも、木刀がいい音をたてたことも
気に入らなかったが、なによりも男がいかにも悪人風なのが気に入らなかった。
理由はよくわからないが、アレインは昔からそういう『悪い』ものが気に入らないのだ。

だからそういうものには敏感であった。
この大男はそうでもないが、人を見ればその人がいい人か悪い人か、大体わかるのだ。
ある意味、才能なのかもしれない。あまり意識したことはなかったが。
その時、アレインは思い出した。
父の顔と、その時言った言葉を。
『人を傷つけてはいけない。それは当たり前のことだ。だが特に、特にだ。
 特にお前のそれは、絶対に人を傷つける目的で使ってはいけない』
アレインは自嘲する。なぜそのことを今思い出したのか。
あの大男の「悪者」オーラで、昔の自分に戻りかけているからかもしれなかった。
(でも、だめだ。)
アレインは自分に言い聞かせる。
(こいつにも勝たなくちゃならねぇけど、自分にも勝たなきゃいけねえ。)
昔の自分に、戻ってはいけない。
(変わらなきゃ、いけねぇんだ・・・。)
アレインは、ゆっくりと立ち上がった。


老教師は、アレインが立ち上がったのを見て
「はじめ」
開始の合図を出した。

大男は腰を落とし、右手で木刀を下に構え、
それに対しアレインは同じように腰を落とし、木刀の切っ先を大男に向けて
正眼の構えをした。


先に動いたのは大男だった。その巨体からは少し想像しにくい速さで4メートル近い
距離を一瞬で詰め、頭上からの鋭い一撃をアレインに放つ。
しかしその一撃はアレインに受け流された。
今度は相手の右から左へに払うように、大男は木刀を振る。
が、それもアレインに受け流され、次の瞬間には彼の木刀が男に迫っていた。

大男は、後ろに飛びすさりそれを逃れるが、少し体勢が崩れ、隙ができた。
後ろに飛んだといっても、2メートルほどしか離れていない。この距離で隙ができて
しまうのは致命的であった。

しかしアレインは、その隙を狙わなかった。

それはまるで、『お前なんか、その隙を狙わなくても倒せる』と言われているようで、
大男にとっては腹の立つことだった。
顔を怒りで赤くしながら、始めに出した頭上からの一撃を、もう一度放つ大男。
その一撃が予想外に速かったので、受け流しきれないと判断したアレインは
木刀でそれを受け止めた。

得物同士がぶつかり大きな乾いた音を立て、体中に衝撃が走る。
その衝撃が去ったところへ、今度は腹に強い痛みが走った。
大男が膝蹴りを入れたのだということを理解したのは、更に来た
横払いに吹き飛ばされて宙を舞った後だった。

また、建物が揺れる。
それは、アレインが試合場のテープの外の床に落ちてきたことによるものだった。

「がっはっはっはっは!これが一番強いって?笑わせてくれるぜ!」
大男が汚く笑って言う。
アレインは19歳だが、確かにこの学校で一番強い。
そのアレインが簡単に倒され、生徒達は驚愕していた。

「うっせーな、でかい声出すな。」

静まりかえっていた体育館の中で声を上げたのは、アレインだった。
落ちたときに打った左肩を右手で押さえながら、床に片膝をついていた。
「それと、まだ終わってねーぞ。」
「は?なにが終わってねぇって?お前はこのテープの外に出ちまった。わかってるだろ?
 もうお前は負けたんだ!」
アレインの言葉を切り捨てる大男。
「お前じゃ俺の相手にはならん。とっとと外に・・・」
言いかけて、言葉を止めた。目を大きく見開いて、驚愕の眼差しを向けている。
その視線はアレインの左肩を、正しくはそこを押さえる右手の甲を見ていた。

そこにあったのは、刺青だった。水滴のような形をした模様の周りに、羽と鋭い爪のような
模様が描かれている。

「そ、そんなバカな!なぜお前がそれを・・・!」

それには答えず、アレインは木刀を片手に、ゆっくりと立ち上がった。
大男は怯えたように、体を大きく震わせながら1歩後ろに退がり、木刀を構えた。
しかしその構えは最初に見せたのとは違い、腰が大きく引け、両腕を伸ばしながら木刀を
持っていた。かなり隙だらけの構え方。しかもその手は、小刻みに震えている。
アレインは自然体で立ち、その右手に木刀をだらんとぶら下げている。

2人は、再び対峙した。
大男の頭の中で、ある男の姿と、目の前の赤髪の青年の姿が重なった。
(まさか、このガキ・・・)
そう想った瞬間、視界が赤く染まった。


不思議な感覚だった。溢れてくる怒りによって血液が沸騰したように熱くなり、
頭が冴え、手足の感覚がよりはっきりしてくる。
腹や左肩などの痛みは掠れて消え、体が軽くなったようだ。
その感覚が気持ちよく、懐かしかった。
『人を傷つけてはいけない』
父の言葉が、また思い出された。
(でも、これはケンカだ。そんなのは関係ねぇんだ!)
へりくつで父の言葉を頭の隅に追いやって、アレインは目の前の大男を睨む。
「・・・てめぇが売ったケンカだ。後悔したって知らねぇからな。」
微妙に相手を思い遣っている台詞を口の中でつぶやいて、アレインは駆けた。


大男とアレインの間は、5メートルあった。
その距離を一瞬で詰めたられた大男は、半ば無意識で後ろに飛びすさる。
それでも浅く防護服が薙がれていた。そして大男の感情を押しとどめていた「何か」も
防護服と一緒に薙がれたようで、大男はアレインを近寄らせまいと木刀をがむしゃらに振るった。
アレインはそのまま突撃しようとしていた足を止め、身をひねってその木刀を避けた。
次々に迫り来る木刀も最低限の動きで避けながら、少しずつ大男との距離を詰めていく。
そして右方向から来た薙ぎの一撃に、アレインは自分の木刀を宙に投げ、
空になったその右手で相手の得物を受け止めた。

「後悔、することになっちまったみてえだな。」

大男の恐怖で引きつった顔に向かって言いながら、アレインは受け止めた木刀を掴み、
力一杯、引き寄せた。
前のめりになる大男。その後頭部に向かってアレインは、左の肘を叩き込んだ。
そして相手の得物を放し、落ちてきた自分の木刀をそのまま掴み、
下から上に向かって相手の顔に当たるように振り上げた。

鈍い音が2度して、大男の体と赤い液体が宙に舞う。
その顔の前では、とっさに横にした木刀が無惨にも砕けた姿となっていた。
そしてアレインが振った木刀は、大男の顎をしっかりとらえ、血を出させていた。
2度響いた鈍い音は、大男の木刀が砕かれた時と、大男の顎をアレインの木刀が打ちつけ
た時に響いた音だった。

「ほら、これで最後だ!」

そう言うとアレンは、宙に浮いたままのその体の腰あたりを思いっきり蹴り飛ばした。

大男はそのままテープを越えて壁に当たった。

建物が、先の2度より大きく揺れる。

そのまま大男はずるずると床までずり落ちてきた。
アレインは頬に飛んでいた血を右腕でぬぐった。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――






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最終更新日  2008.04.01 11:12:34
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