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2008.07.31
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カテゴリ:小説

言うが早いか、勢いよく起き上がる。
すると当然のごとく、彼の腹の上に乗っていた白イタチは、森の闇の中に飛ばされて消えていく。
なんとか立ち上がったアレインは、横に立っていたニフォードに掴みかかった。
「お、おい!しゃべがイタチったぞーっ!
 ・・・ていうか、なんでそんなに冷静なんだおまえー!?」

ニフォードは額に指を当てて首を横に振り、フッと息を漏らした。
「アレイン、今回はお前の方が正しかったようだな」

「・・・はい?」

「確かにイタチは人間の言葉を喋らない。だが実際に喋ってる。どういうことか?答えはひとつ!
 そう、ここはファンタジーの世界なんだ!ファンタジーに科学は通用しないっ!!」
「ニ、ニフォードォー!頼むから戻ってきてくれー!」
人差し指を立ててキリッと言い放つ彼の襟元を掴んで前後に振る。

「いててて・・・くそぅ、一度ならず二度も飛ばしやがって」
そう言いながら、白イタチが闇の中からもう一度姿を現した。
「徳川綱吉が生きてたら、絶対に死刑だったな」

「・・・トクガワツナヨシって誰?」
「昔、とある黄金の国を治めてたお偉いさん」
「なんでその人が生きてると死刑?」
「その人、動物虐待は死罪になるお決まりを定めたらしい
まあ、もうその人も生きてないし、その法律も残ってないらしいけどな」
「でもこの国の人じゃないだろ?」
「まあ、気分だろうな。そこら辺は突っ込まないでおこうよ」
「「・・・・・」」
「長いわーっ!!」
叫びながら、白い塊は2人の頭に向かって跳躍したが、その一撃はアレインによって
いとも簡単に受け流され、そのまま首根っこを掴まれた。
「もうくらわないぞ♪」
嬉しそうに言って、彼は右手の中にいる白イタチをもう一度観察した。

背の高さは、ぴんと伸ばしても30・・・いや、25センチメートルしかない。
白い毛に覆われたその身体は、小さな動物特有の高めの体温を保っている。
そして同じく白い毛に覆われた長めの尾・・・それから見た目と勘・・・では、
ただの『白いイタチ』である。
「は、はなせ!」

だが、背中に生えた『翼』と白い毛の中に隠れている『鱗』という条件から、
イタチなどではなく『ドラゴン』だということがわかる。
「・・・なにガンつけてんだよ」

そして・・・そして、人間の言葉を話すということから・・・
残念ながらドラゴンでもないか、変なドラゴンということになる・・・。
「なんで頭を押さえる!おいっ!」

「これ、本当に喋ってるよね・・・?」
隣にいるニフォードが言って、ドラゴン(と仮定しておく)の口から出ている事を確認する。
「おい!この持ち方ヤメロ!オレが小さいみたいじゃないかー!」
「・・・実際小さいし」
「巨人黙れえぇぇ!」
手足をバタつかせながら言うドラゴンにアレインが言い返すと、
ドラゴンは叫びながら尾の一撃を放ってきた。
――とりあえず、自分が小さいという自覚はあるようだ――
しかしその一撃も、アレインに受け止められた。
「いっ・・・てぇじゃねえか!このチビが!」
「うるさい!放せ!悪の化身め!」
「あぁもう、うるさいっ!また投げられたいのか?」
思わず尻尾を受け止めてしまった左腕の痛みに耐えながら言っても聞かないドラゴンを、
アレインは思いっきり睨みつけた。

すると言う事を聞かなかったドラゴンは、ひとつ震えて静かになった。
しかしそれでもアレインのことをにらみつけているのは、立派と言えるだろう。
「それで?」
静かになったドラゴンに、アレインは問う。
「お前は、なんだ?」

「・・・黙秘シマス」
「・・・はあ?」
「ワタシハ、黙秘サセテイタダキマス」
つい最近、誰かに同じような口調でからかわれたような気がして、
アレインは思わずため息をついた。

「お・ま・えぇぇ!」
そして一転、叫んでドラゴンの首根っこを掴んでいる右手に力を込める!
「痛ぁーっ!」
「な・に・が、黙秘だ!
 犯罪者と変人と正体不明者に人権は無いって法律で決まってるんだよ!」
「こ、この前の法律改正で暴力をされたら黙秘できるって決まったの知らないのか!」
「そんな訳あるかあぁ!」
「お前が言うかあぁ!」
「・・・どんな法律と法律改正だよ・・・」
ニフォードの修正を無視して、アレインは次の言葉を紡いだ。
「だいたいお前・・・!」
その瞬間、アレインは言葉を切った。
そして何も言わずにニフォードにアッパーを喰らわせながら、前方へ大きく跳躍した。

頭上の空気の流れが変わり、渦を巻く。
空気を渦巻かせたそれは、一瞬前までアレインたちの立っていた場所へ突き立った。

「・・・なんなんだ、これ・・・」
右手に目を見開いたドラゴンを持ったまま、アレインは呟き、
彼の後ろで髪を泥に染めて、アゴを赤くしたニフォードが、あとを引き継いだ。
「石の、つらら・・・?」

2人(+1匹)の立っていた場所には、
つららのような円錐形をした土色の石が突き刺さっていた。
と、優に1メートルはあるそれは、天に近い方から砂に変わり、風向きを無視して流れ去った。

「さすがだねぇ」
声は、砂の流れていった方の暗がりからした。
「この石、普通の石より硬いんだけど・・・ま、これくらいで死ぬ事はないでしょ?」
「その声・・・」
アレインは気づいた。
その声が、今朝学校で彼をなぐりつけて返り討ちにされた新任の教師のものだった。
「なぜあなたがここに・・・!」
彼に続いて気づいたニフォードも声をあげる。

そして、新任教師は闇の中から、ゆるりと姿を現した。
いかにも貧弱そうな顔は、2人の学校の訓練標準装備である茶色い防護服の上に乗っていた。

「おどろいた?みんなの中からこっそり抜けてくるのは、一苦労だったよ」
教師は、まるで子供に言い聞かせるように話す。

(そういえば、今日はオレたちのクラスが軍に協力して見回りする日だったよな・・・)
そう心の中で思いながら、アレインはその彼から視線をそらさないままで、
手の中のドラゴンを地面に下ろした。
そして何事かと自分を見上げる彼を無視して、口を開いた。
「あんた、なんでここにいる?」
「僕は、朝の君のおかげで笑い者にされたからね」
口の端をもちあげて続ける。
「だから、君に仕返しをしに来たんだよ」
「いちいち説明を入れるな」
「馬鹿な君にもわかりやすいようにしてあげてるんだよ」
「ふん、トサカにくる言い方だな」
拳を構えて今にも飛び出しそうなアレイン。
「よせ、アレイン!」
しかしニフォードの言葉で、舌打ちをしながら身を引いた。

そんな彼を見て、新任教師は言った。
「他人の言う事を聞くなんて、君は変わったねぇ。あの一匹狼が・・・」
『変わった』『一匹狼』その単語が出た瞬間、アレインの表情が、冷たいものに変わった。
まるで、思い出したくなかった事を思い出させた相手に殺気を放つように。
「まあまあ。僕はケンカは嫌いなんだからよしてくれ。
 それに、ここにいるのは組織の命令なんだから」
「組織?」
反応したのはニフォードだった。
すると新任教師は初めてニフォードに向き直り、答えた。
「そう、組織さ。君も知っているだろう?あの犯罪組織、『赤乱』・・・」
「ゴチャゴチャとうるせえ!」

話を遮って、アレインは言った。
「名前も名乗らずに人の過去をほじくりかえしやがって。誰だテメェ」
新任教師は考えるように腕を組み、そして口を開いた。
「僕の名前はギャマン。覚えておいてもらおうかな・・・それで、組織のことだっけ?」
言って、新任教師――ギャマンはニフォードに向き直った。
「赤乱にはね、あるひとりの有名人がいたんだよ。
 ・・・『赤乱の阿修羅』と呼ばれた、殲滅作戦を任務とする青年がね」
「赤乱の・・・あしゅら?」
「そう。どこかの国の神話の悪神である阿修羅・・・彼の働きは、まさに『赤乱』の『阿修羅』
 だったのさ」
「もう・・・いいだろう・・・」

アレインの低い声に、ギャマンはそちらを向いた。
「なにがだい?」
アレインは、静かに続けた。
「とぼけんじゃねえ。もうこれ以上・・・・
 人の過去をばら撒くんだったら、ただじゃすまさないぞ」
「嫌だね」
ギャマンは即答した。
「そこの彼にも事情は知っておいてもらいたかったし」
「・・・そんなら・・・」
言葉を受け、爆発するようにアレインの体から殺気が放たれた!
「どうなっても文句言うんじゃねえぞおぉ!」

言って、アレインは走り出した。
ギャマンとの距離が一気に縮まる。
しかしもう少しで拳が届くというところで、空気の流れが変わった。
出現した石のつららは、アレインの足元の前のほうを狙って放たれていた。
後ろにステップしてかわしたアレインだったが、その後も連続して多数飛んできた石のつららに
おされ、元の場所まで戻されてしまった。
「これは・・・」
また砂に変わりつつある石のつらら群を前に、彼の後ろにいたニフォードがつぶやいた。

石のつららが放たれる瞬間、ギャマンの左手の中が黄色く光っていた。
あの光とこの現象は、もしや・・・
「違法改造魔法玉・・・」
ギャマンが、左手の中のビー球ほどの大きさの歪な球体を顔の高さに上げ、頬をゆがめ、
「正解」
そして子供を褒めるように、言った。

・―――・・―――・・―――・
ギャマンの言った『赤乱』とは、魔法玉の開発成功から遅れること数年して
活動を開始した犯罪組織である。
彼らは主に、魔法玉を違法に改造して闇ルートで売りさばき、不正な利益を得ている。
改造さえすれば、簡単に人を傷つけ――否、命を奪う爪牙と化す魔法玉。
小さければビー球サイズという、これ程持ち運びやすく、隠しやすい大きさの凶器はないだろう。
人を傷つけ、命を奪おうとする人間にとっては。

話がそれた。
そんな赤乱の中でも、ひときわ有名だった人物がいた。
赤乱に所属していれば関係がひとつはあるはずの闇市に全く関わらず、
ライバル組織などにひとりで乗り込み片っ端から潰すこと――つまり殲滅作戦を任務としていた、
ツンツンに立った赤髪が印象的な青年だった。
破壊を求めて荒れるその鬼神の如き戦いを見聞きした周りの人間は、彼をこう呼んだ。
『赤乱の阿修羅』と。
・―――・・―――・・―――・

「『赤乱の阿修羅』はある時を境に、表の世界にも、裏の世界にも名前が出なくなった」
左手の魔法玉をもてあそびながら、ギャマン。
「彼は・・・戦場から逃げ出したのさ」
その台詞は、間違いなく青年の片方――アレインに向けられていた。
「『阿修羅』は、戦いの場に居てこそ阿修羅だ。だから組織に連れ戻す。
 それが僕の任務なのさ」

一連の話を聞いて、ニフォードは混乱しかけていた。
話の流れから、アレインが『赤乱の阿修羅』という存在であることはわかった。
確かに彼は一時期、毎日ボロボロになって帰ってきていた時があったが、
訳を聞いてもケンカと言われていた為、あまり気にしてはいなかったのだ。
しかし、まさかアレインがあの『赤乱』と関与していたとは・・・
どうリアクションすればいいのかわからず、アレインを見た。

「壊れたオモチャは、直すか、処分するしかない」
うつむいているアレインに、ギャマンは続ける。
「さあ、答えを聞こう。直されるか、処分されるか・・・」
ギャマンが魔法玉を強く握ると、それは黄色く輝いて彼の周囲の空中に、
石のつららを作り出した。
「君は、どちらを選ぶ?」


アレインは、昔の自分を思い出していた。
阿修羅とまで呼ばれた、ケンカをしたくて、いつもうずうずしていた自分。
(『阿修羅』は戦いの場に居てこそ阿修羅、か・・・)
確かに、そうなのかも知れない。
(だけど・・・オレは変わるって決めたんだ。昔の自分には、戻らねえ)
拳を固めて、思い出す。
父が、『人を傷つけるな』と言った。
ニフォードが、『その力を守る為に使え』と言った。
そして自分は、『ニフォードを、家族として守る』と誓った。
(そしたら、答えはひとつだ)
拳を固め、前を睨みつけた。





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最終更新日  2008.07.31 11:18:01
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