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2008.04.01
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カテゴリ:小説


ウルヴィア

第1章 赤乱の阿修羅 =SekirannnoAsyura=

  第一部

青い空にまだらに浮く雲を、アレインは眺めていた。
風に流されながら飛んでいくその白いモノを目で追いながら呟く。
「雲はいいよな~・・・」
空に見入っていると、硬いもので額を叩かれた。
無理やり現実に引き戻されたアレインが、赤髪の頭を掻きながら視線を戻すと、
新任の教師が木刀を軽く構えていた。その隣には、クラスの担任である老教師もいる。
聞け、という意味らしい。

目の前に立っている銀髪の老教師が、頭の痛くなるような声で、余所見をするな
なぜ遅刻した遅刻するな、などと説教をする。
茶髪でいかにもひ弱そうな顔をしている新任は、その隣でときどき頷きながら2人を見ている。
頭が痛くなったので、流れの悪くなっている雲をもう一度見上げたが、間を置かずに
また木刀で叩かれた。
「いてえよ、バカ。」
吐き捨てるように言う。その態度が気に入らなかったのか、新任は木刀の峰で横に殴りつけてきた。

ハデな音がして、頭が右に流れた。
口から、血が流れ出る。
アレインは血を手で拭い、赤い瞳に殺意を込めて新任を睨みつけた。
目の中で、何かが怪しく揺らぐ。
その様子に少し怖気づき、新任はもう一度木刀を振るう。

が、それは頭に当たる前に、アレインの右腕で受け止められた。
木の折れる音がして、木刀は彼の片手でへし折られていた。
新任はよろめき、後ろに倒れ、アレインを凝視し

「ひ、ひいぃぃぃ~っ!」

情けない声を上げて、逃げ出してしまった。
周りの視線を感じながら、折れた木刀につばを吐くアレイン。それには、血が少し混じっていた。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――

アレインと二フォードは、いつもと変わらないティンパニの街並みを横目に走っていた。
2人の赤とブラウンの髪の毛が走るリズムに合わせて揺れる。

あの後、遅刻プラス教師への暴行(暴言)ということで怒られ、学校の周りを走るように言われた。
二フォードは、自分は遅刻だけだったのになぜ?と青い瞳をもっと深い蒼に染めながら
心の中でつぶやいていた。

朝早いというのに、たくさんの人々が歩いている。
それがいささか邪魔だと、アレインは内心で舌打ちする。
時々ドラゴンを連れて歩いている人もいて、2人の横を通りすぎて行くたびに、彼はそれを
怒っているかのような目で睨んでいた。

「お前、まだドラゴンが嫌いなのか?」
彼の少し後ろを走っていた二フォードが、息を切らせながら言う。
今やドラゴンは、人間の生活になくてはならない存在となっている。
世界中にいる六種族のドラゴンたちは、時に食料となり、時にペットとなる。
特に今は、ドラゴンをペットに飼うのがブームになっていて、
街の中で散歩中のドラゴンを見るのは、ここティンパニの街でもめずらしくはない。
また、その鱗は加工され、様々なものに使われている。

「別に嫌いな訳じゃねぇよ。ただヤツらがオレになつきたがらねぇんだっ」
この世に生を受けてから19年、沢山の人から同じ質問をされたが、
同じ時間生きてきたニフォードにも、彼自身にも理由はよくわからないのだ。
昔からドラゴンは、彼の姿を見ると唸ったり、噛み付こうとしたりするのだ。
「日頃の行いが悪いからじゃね?」
「うるせぇ黙っとけ。」
二フォードがニヤニヤしながら言うのを一蹴して、アレインはペースを上げた。
「・・・あの性格が原因だと思うけど・・・」
そうつぶやいて二フォードは、怒り気味の赤髪を追う。
すると、まるで狙ったかのようなタイミングで、学校のチャイムが鳴り響いた。

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――

小さくなってゆく2人の後姿を、ひとりの老婆が見つめていた。
「見つけた、見つけた、見つけた、・・・」
うわごとのようにその言葉を何度もくり返しながら、2人とは反対の方向に去っていく。
そしてそのまま人混みにまぎれて、見えなくなった。

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――

静まりかえった教室で、担任の老教師の声だけがうるさく響いている。
アレインと二フォードは、それぞれの席でその声に耳を傾けていた。

「最近、違法改造された魔法玉(マホウギョク)が多く出回っているのは皆知っての通りだ。」


・―――・・―――・・―――・
魔法玉とは、ドラゴンの血液を凝縮させて作られる、石のような物である。
先にも言ったように、ドラゴンには6つの種族があり、大部分はドラゴンが持つ能力の
6つの属性――火、水、風、氷、土、そして雷――によって、分けられている。
そして同じ種族内でも多数の能力の種類があり、まだその全ての種類を把握できていない。

しかし、約20年前に行われていた研究で、ドラゴンの能力の元となるのは、
その血液中に含まれている『コモド』と名付けられた成分のおかげだということが判明している。
そして、その能力を人間にも使えないかと開発されたのが、
竜能力発生装置、『魔法玉』だった。

この魔法玉は既に、人々の生活になくてはならないものとなっている。
ある時は料理に必要な火を生み出し、
またある時は食べ物を腐らないように冷やし、
そして井戸から水を汲み上げる動力としても使われ。

魔法玉は、人を傷つけないように作られている。あくまで、生活を助ける存在でしかないのだ。
だが、元々はドラゴンの能力である。
生き物を傷つけない魔法玉だけのはずもない。
そういった生き物を傷つけるために改造された魔法玉が作られ、出回っている。
そして、近年の犯罪のほとんどに、それが使われているのだ。
・―――・・―――・・―――・


「また、近くの街では『鬼』を見たという情報まで入っている。」
最後の一言に、静かだった教室が一瞬で、騒々しくなった。
皆が、『鬼』というその言葉を繰り返している。


・―――・・―――・・―――・
『鬼』とは、その名の通り鬼の様な頭をもった、人を襲う二足歩行の生き物のことである。

数年前に初めてその存在が確認されたときは、どこかドラゴンを思わせるその姿から、
ドラゴンの新しい種族ではないかと言われたが、その生態系がまったくもって不明なので、
正確な位置づけはされなかった。
とてもドラゴンとは似ても似つかない牛鬼のような顔、
ところどころ捻れた2本の角、
人の腕の何倍もある太い腕、
背筋を凍らせる、禍々しい蒼の瞳、
そして人を襲うというところから、
人は畏怖の念を込めてソレを『鬼』と呼んでいる。
・―――・・―――・・―――・


「そんな最近の治安悪化に伴い、軍はそれら違法行為の取り締まりや警備を厳しくしているが、
 皆も知っての通り、今の軍は人員不足が深刻になっている。
 よって今日からしばらくの間、この学校の生徒も協力するようにと軍から言われた。
 具体的には、夜から早朝までの見回りに、1日に1クラスを貸してほしいそうだ。」

ティンパニには4つの学校があるが、その中で軍事に関連する教科があるのは、
アレインと二フォードの通う、この古い木造の学校だけだった。
そして今までにも何度か、軍に協力したことがあった。

しかし・・・『鬼』という言葉を聞いて、素直に頷く者はいなかった。
更に騒々しくなる教室の中で、生徒たちは一斉に立ち上がり、老教師に不満をぶつけた。
だが老教師はうろたえることなく、平然と今日1日の日程を話し続ける。
「貸し出されるクラスは、その日1日の授業が実技訓練に変わるということを覚えておきなさい。」
不満をぶつける生徒の中には、二フォードもいた。
彼は、剣術や体術も得意な方ではあるが、それよりも頭を使う方が好きなのだ。
といっても、身体を動かすのが好きな生徒であっても『鬼』が出てくるとなっては、
イエスと言う者はいない。

しかしそんな中、アレインだけは嬉しそうにしていた。
口はいつも通り固く閉ざされているが、目が笑っている。
勉強が野菜の次に嫌いなアレインは、授業が訓練で潰れることを喜んでいるのだ。
運動はそこそこ好きだが、その中でも実技訓練というのは、スリルがあって大好きなのだ。
そんな彼の様子を見て、二フォードは不満を叫んでいる自分が
ばからしく思えてきて、席に座ってしまった。
教卓の前では、話が終わっても騒いでいる生徒達を、老教師が大声で鎮めている。

えぇい、ままよ。オレは成り行きに任せるぞっ。

二フォードは騒がしい教室を見ながら、自分にむりやり言い聞かせた。

――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――






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最終更新日  2008.04.01 11:13:23
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