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2008.04.30
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カテゴリ:小説

何かの視線を感じ、アレインは既に使われていない街の灯台を見た。
「おい、ちゃんとやれよ。」
しばらく、そのままで立ち止まっていると、前方からニフォードが言ってきた。


「なあ、オレら2人だけで街を見回らないか?」
夕食の後で、ニフォードが提案してきた。

「・・・オレらのクラスが、軍と一緒に見回りしてるはずだろ?」
「お前、守りたいもの見つからないんだろ?」
言われて、アレインは言葉を詰まらせる。

本当はもう決まっていたのだが、

「二フォード、オレは、お前を守るって決めた。」

と口にするのは恥ずかしくて、言えなかったのだ。
アレインが言葉に詰まったのを図星と受け止めて、ニフォードは続けた。
「だから、僕がそれを提供してやろうと思ってさ。」
「・・・で、街を守るってか?」
「おう。街を見回って怪しい奴をひっ捕まえるとかするんだ。どうだ?」

「・・・そういう奴、ぶん殴ったりしていいのか?」
「・・・程々にならいいぞ。」
「よっしゃわかった。」
「・・・一応、剣は持ってこうな・・・こっそり。」
黒い笑顔を2度浮かべたアレインに、ニフォードはそれしか言わなかった。


だが実際にやってみると、ただ見て回ることの方が多いのだ。
「だって・・・」
少しの時間しか歩いていないが、腰に下げた剣の重さで、足が疲れてきたのだ。
それに、退屈だし、退屈だし、退屈だし・・・
それらの愚痴を二フォードにぶつける。

(それはオレだって同じだっ!)

二フォードがそう反論しようとした時、冷たいものが頬に当たる。
反射的に黒い雲に覆われた空を見上げると、次から次へと水が空から落ちてきた。
「雨だ。」
ニフォードが言った途端、急激に雨が強くなった。
雷光が閃き、雷鳴が轟く。
「うわぁ!ぬ、ぬれる!」
ぬれるのが嫌なアレインは建物の影に入ろうとするが、ニフォードは彼の服の裾をつかんで
そのまま歩き出す。

「ほら、そんなの気にすんな。行くぞ。」
「か、傘を!せめて傘をっ!」
「だーっ!うるさい!お前は猫か!」
「猫じゃなくても嫌がるっつーのっ!てか誰が猫か!」
「お前は人一倍濡れるの嫌いだから猫だ。」

そして抵抗するアレインに構わず、雨の中を引っ張っていった。

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――

暗闇の中を、『彼』は歩いていた。自分の目指す街に向かって。
その青白い両目は、怒りを含んでいた。
しばらくすると、小高い丘に出た。
歩いてすぐとはいえないが、人の足ならあと数十分で着く距離のところに、
『彼』の目指す街があった。
かなりの距離だというのに、『彼』の目は、その場所から街の中の様子を
しっかりと捉えることができていた。
その時、雨が降り出した。
突然の雨から逃げるように走る人々。
その姿を『彼』は、ひとりひとり、じっくりと眺めていく。

そして見つけた。

自分の見つけるべき相手を。

『彼』は大きな咆哮をあげ、それに向かって走り出した。

雷鳴が、轟く。

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――

灯台の上に乗った黒いドラゴンは、雨の中でその黒い体が疾走しはじめたのを、じっと見ていた。
人の足で歩くと数十分かかる距離も、その足で走れば数分もかからないだろう。
そこまで考え、視線を2人の青年に戻そうとする。

その時雷鳴が轟き、彼は目を見開き、体を震わせた。

「これは・・・」

気配を感じたのだ。
今、この街に向かっている鬼よりも、もっと大きく、もっと強い力の気配を。
角や鱗が引き抜かれるように熱をもって痛み、翼と尻尾が千切られるような感覚に襲われる。
だがその熱さとは裏腹に、体の芯が冷えていき、そのあまりの寒さに、彼は体を震わせた。

街にいるドラゴンや家畜などの動物たちも、その気配を感じたのか一斉に鳴き始める。

黒いドラゴンは、慌ててその気配の主を探し出そうとしたが、
体の痛みで集中できないからか、気が動転しているからか、もしくはその両方が
原因なのか、見つけ出すことはできなかった。

黒いドラゴンは、体の痛みに耐えながら、
同じような気配をかもし出す人物を、思い浮かべた。

「いや、あれがこんな所にいるはずが・・・」
いるはずがない。そう言い切ろうとしたのに、できなかった。

固く強張る彼の鼻を、雨が滴り落ちていった。

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――

「こんなとこまで来て、どうすんだよ・・・」
木の下に入り、降り続く雨にこれ以上濡れないようにしながら、アレインは
先を行く二フォードに言った。


今2人がいるのは、街外れの森の中である。
この森は、ティンパニの街の東側を覆うように広がっている。

その広さは正確にはわかっていないが、おそらく、ティンパニの街が丸々と2つ
入るぐらいの広さはあるだろうと言われている。
森に住む生き物たちのことも考え、森の中への立ち入りは、原則禁止となっている。
そしてこの森を抜けると、海が広がっているだけなのだ。


「見回りってのは、地道にやるもんだろ?」
二フォードは振り返って言う。

(街で勝手にそんなことしたら、きっと捕まるだろうしな。)

ニフォードは心の中でこっそり、そう付け足した。

そんなことは知る由もないアレインは、舌打ちして左手でポケットの中を探った。
その中にはハンカチが入っている。そして、更にその中には・・・



「そこの2人。」



突然、声がかかった。

反射的に身構えるアレインと二フォード。
手は腰の剣に伸び、目は木立の闇の中を睨みつける。

一呼吸置いて、2人の視線の先の暗闇から、体全体を包む黒いマントと
黒くて深いフードを身に着けた人影があらわれた。
顔の上半分はフードで隠れているが、シワだらけの白い口元だけは、はっきりと見えていた。

「あんたは・・・?」

「そこら辺の一般人、という訳でもないようだけど?」
アレインが問い、一拍の間を置いてニフォードも問いかけた。

だが、そいつは2人の問いには答えずに、唇の片端をつりあげて、

頬を歪めた。


雨は、いつのまにか止んでいた。
――――・――――・――――・――――・――――・――――・――――





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最終更新日  2008.04.30 23:20:07
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