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2008.04.30
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カテゴリ:小説


ウルヴィア

第1章 赤乱の阿修羅 =SekirannnoAsyura=

  第二部

太陽はほとんど沈み、ティンパニの街をオレンジ色から闇色に染める。
街にはぽつぽつと、明かりが灯り始める。

学校を早退してきたニフォードは、ブラウン色の髪を風になびかせながら
青色の目を細めて、その様子を見ながら、家の玄関をくぐった。
家の中は、どこも電気灯が点灯していなかった。
「ただいま。」
靴を脱ぎながら言ったが、返事はない。
いつもなら電気灯を点けている時間帯だが、先に帰った兄弟はそれをしなかったようだ。
やっぱり、と思いながら彼は、玄関から居間に向かっている扉を開けた。

居間も電気灯が消えたままだったので、紐を引いて電源を点ける。
机の上には今朝の朝食が、ラップをかけた状態のままで置いてあった。
それを横目に見ながら、先に帰った兄弟の部屋の扉を開ける。

「・・・ただいま、アレイン。」
電気の点いていない部屋の中に、先に学校から帰った兄弟―アレインが、
ベッドにもたれかかり、うなだれていた。
嫌いなこと(勉強や野菜を食べること)をしている時よりも、その赤い瞳は暗く、沈んでいた。
いつも元気に立っているその赤髪も、心なしか萎れて見える。
「・・・停学、だってよ。」
うつむいたまま、彼がボソっと言った。

どう見てもヤクザな外部指導員の大男を叩きのめしたあの後、アレインは校長室に連行された。
男が搬送された病院から、怪我はそれほどひどくないが、数ヶ月の入院が必要で、
すぐに退院することはできないという知らせが入った。そして、
『君の気持ちも分かるが、これはさすがにやりすぎだ。』
と、その場で無期限の停学を言い渡された。

二フォードはその全てを知っていたが、アレインがそこまで落ち込んでいるとは、知らなかった。
彼らのクラスは、今日の軍への協力は予定通りに行うそうだったが、二フォードは
アレインの様子が気になり、実技訓練の途中で抜けてきたのだ。

アレインは手を持ち上げ、空を掴むように拳を固めた。
「また、こいつを当てるアテがなくなっちまった。」
拳が、小刻みに震えている。ただ聞いただけでは、その深い意味はわからない。
が、二フォードはその意味の全てを理解しているのか
「そっか。」
とだけ言い、彼の隣に腰を落とした。


長い沈黙が、続いた。
外はすでに暗くなり、居間からと窓の外からの光だけが、2人を照らしている。


沈黙を破ったのは、二フォードだった。

「当てるアテがないならさ・・・守る為に使えば?」

彼の言葉に、アレインは顔を上げ、力無く微笑みながら言う。
「なんだよそりゃ。」
「その拳を、その力を、何かを守る為に使えってこと。」
二フォードはあくまで真剣な眼差しでアレインを見つめていた。
「なにかって・・・なにを?」
そんな彼の様子に半ば気圧されながら、聞く。
「自分の守りたいものを、さ。」
「よく、わかんねぇよ・・・例えば?」
「さあな。・・・まあ、家族とかかな?」
聞かれても。と、肩をすくめながら二フォード。
「家族、か・・・」

アレインは、自分には家族はいないと思っている。
母と兄弟たちは昔に死んだと、ただひとりの肉親である父から聞いている。
そんな父も、科学者としての事情とかなんとかで、家をずっと空けている。

「あ、僕は守らなくていいぞ。お前にそんなことされても気持ち悪いし。」
うつむいて、なにやら考え出してしまったアレインに向かって、
二フォードは笑いながら言う。

アレインと二フォードは、血が繋がっていない。
2人の両親が昔から仲が良かったらしく、
だから二フォードの両親が死んだとき、孤児となった彼を、アレインの父は引き取ったのだ。

そんなニフォードの発言を、アレインは追求した。

「・・・それはどういう意味だ?」
「いや、僕いがいの誰かを守れって意味だよ。」
「そっちじゃない。その後だ、その後。」
「・・・なんか言ったっけ?」
「忘れたとは言わせんぞ、気持ち悪いって言っただろ。」
「ハイ、気持チ悪イッテ言イマシタ。」

「ニフォード、テメェ・・・」
「ハイ、何デスカ?」
「復唱するなぁっ!」

「アレアレ、殴ルンデスカ・・・って、あ、ちょ、やめろアレイン、マジでっ・・・!」

しばらく声も出さず取っ組み合って、それが終わると、2人で笑った。
なにが面白かったのかわからなかったが、笑った。

ニフォードとは、今までずっと、本当の兄弟のように暮らしてきた。
が、彼が『本当の家族といえる存在』かは、アレインにはよくわからない。

(・・・いや、そんなことは無いかな。)
笑いながら、アレインはその思いを否定する。
(本当の家族っていうのは、きっと、こんなものなんだろう・・・。)
話しているだけで、楽しくなれる。
一緒にいるだけで、安心できる。
それが、家族なのだろう。

「さ、夕食にするか。お前も手伝えよアレイン。」
少し早すぎる解決な気もするが、答えは見つかった。
ここまで自分の考えを導いてくれたニフォードに心の中で
感謝しながら、アレインは胸に誓った。
(もしもの時は、オレがニフォードを、家族として守る。)

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――

もはや辺りは暗闇に包まれ、その闇の中で、家々や街灯の電気灯が
ティンパニの街を、明るく浮き立たせていた。
人の行き来は少なくなり、大体の人間が家の中に居た。
風には微かに料理の匂いが漂っている。
『今日の夕食はなんだろうか?』
食欲を誘う匂いに、帰路にある人々の足取りは、自然と速くなる。

そんな街の様子を、空の上から羽ばたきつつ眺める1匹のドラゴンがいた。
体は夜と同じほど黒く、その体と同じ色をした翼で風を切りながら、
その金色の瞳で、街の中から何かを探し出そうとしているようだった。
その視線が、ある一点で止まり、

「見つけましたよ・・・。」

低い声でつぶやいいた。
その視線の先には、2人の青年がいた。
1人は赤色の髪の毛をしていて、もう1人はブラウン色の髪の毛をしていた。
赤色の髪の青年は、落ち着き無く、右往左往しながら道を歩いていて、
ブラウン色の髪の青年は、赤髪の青年の前を、額に手を当てながら歩いていた。
ドラゴンはその2人に向かって降下しようとし翼を傾け・・・
慌ててそれを止める。

降下しようとしたその時、視界の隅になにか動くものを捉えたのだ。

崩れかけた体勢を立て直して、その方向を見る。
それは、『鬼』だった。
ティンパニの街の外、まだ距離はあるが、『鬼』がその黒く大きな体を引きずり、
街に向かって、ゆっくりと歩いていたのだった。
風にのって運ばれて来たその『鬼』の匂いに、黒いドラゴンは目を細める。

「これは・・・」
殺気をはらんだその匂いに、嗅ぎ覚えがあったのだ。
しかし嗅ぎ覚えがあっても、黒いドラゴンはそれを眺めるだけだった。
彼は街に向かって降下し、街の端っこにある、もう使われていない灯台の上に乗る。

動かし疲れた羽根を背に折り畳んで、上空で見つけた2人の青年を見た。
「もし、彼らがそうなら、こんなことで死ぬことはないはずですね。」
言って、空を見上げる。
空にはひと月に数回しか顔を見せない『破邪の月』と呼ばれる月が、空に浮いていた。
黒いドラゴンは、目を細める。
「かわいそうに・・・。」
風の流れが変わり、雲が月を覆い隠した。
彼は視線を2人の青年に戻す。
それとほぼ同時に、ゴロゴロという音が響いた。

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――





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最終更新日  2008.04.30 23:24:13
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