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2008.07.31
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カテゴリ:小説


ウルヴィア

第1章 赤乱の阿修羅 =SekirannnoAsyura=

  第三部


さっきまで降り続いていた雨は、いつの間にか止んでいた。
雨に濡れた体が風にさらされ、少し寒気がする。

「あんたは・・・?」
その赤い瞳で油断なく目の前を見つめながら、赤髪の青年――アレインは言った。

「そこら辺の一般人、という訳でもないようだけど?」
アレインの後ろから、ブラウンの髪の青年――ニフォードは言う。
彼の青い瞳もまた、前に向けられている。

2人の視線の先にいるのは、
体全体を包む黒いマントと、黒いフードを深く被った、ひとりの人間だった。
掛けられたしゃがれ声から、老人で、なおかつ男であることがわかった。

(こいつは、何者なんだ?)

ニフォードは、胸のうちで問いかけた。
まだ19歳の学生とはいえ、アレインとニフォードは軍の実技訓練の授業を受けた経験がある。
その中に、気配を殺した相手を見つけるというものもあった。

『訓練』『授業』といっても、軍の実技指導者が来校して
数ヶ月かけてみっちりと叩き込まれる、軍とほぼ同レベルの訓練なのである。
そんな彼らの背後を取ったのだから、この老人、ただ者ではない。
一瞬、魔法玉(ドラゴンの血液を使って彼らの持つ力を引き出せるようにした結晶)
を使って気配を殺したという可能性が頭を過ぎったが、
力を使うと魔法玉は強く光る上に、まるで電気灯を点けたときのような『気配』がするのだ。
しかし、それらの気配は全く感じられなかった。

沈黙が続く。
それに耐えきれなくなったように、アレインが口を開いた。
「オレらの問いに答えてもらおうか」


だが、そいつは問いには答えず、唇の片端をつりあげて、頬を歪めた。


笑ったのだと理解した瞬間、2人の体に異変が起きた。

皮膚が引っ張られるように、熱をもって痛んだ。
だがその灼熱感とは裏腹に、体の芯が凍えるように冷えていく。
そして街の方からは、ドラゴンや家畜などの動物たちの鳴き声が響いてくる。

目の前の相手が危険な存在だと判断した2人は、腰の剣を抜こうとした―――

「!!」
が、腕は動かなかった。
いや、腕だけではなく、体全体が動かなかった。

老人は愕然とする2人を見据え、口に笑みをたたえたまま滑る様に
アレインとニフォードの方へと近づいて来た。


(・・・ムカツク・・・)
アレインは口の中で毒づいた。
自分は、悪人や悪人面した奴らが大嫌いだ。ついでに、悪人の空気を纏った奴も大っ嫌いだ。
目の前のローブ姿の老人は、そんな悪の空気は纏っていない。
だがアレインは、その態度が気に入らなかった。
突然、後ろから声をかけてきたと思えば、こちらの質問には答えずに金縛りにしてきて、
その上、余裕の表情を浮かべながらこっちへ歩いてくる。
(・・・こいつ、オレのことバカにしてんのか?)
アレインは、ゆっくりと目を閉じた。
(まあ・・・とりあえず、)
そして眼球の辺りに力を込めながら目を開き、
(ふざけたことすんじゃねえ・・・!)
目の前の老人を睨みつけた。

すると、体の異変が消えた。
「な!?」
突然自由になった体を支えきれず、湿った地面に倒れるニフォード。
『べちゃ』というその音を背に、アレインは老人を睨み続けていた。
「ほう、これはこれは・・・」
感心したように、老人がつぶやく。
「あんた・・・いったい・・・?」
倒れそうな体をなんとか支えながら、アレインが問うが、老人は答えないで
アレインに近づき、両手を差し出して、言った。
「このドラゴンを、君の家族にしてあげて欲しい」

差し出されたものを、反射的に受け取る。
それは、寝息をたてる白い生き物だった。

「あんた、これ・・・」
アレインは言いかけて、止める。
彼が顔を上げたとき、老人の姿は既になかった。

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――

「消え、た・・・?」
街外れにある使われなくなった灯台の上で、黒いドラゴンが呟いた。
体の異常を感じて、その気配を探ろうとしていたところ、
気配が急に消えたのだ。
街に響いていたドラゴンや家畜たちの鳴き声も、ゆっくりと消えていったが、
混乱は続いている。

気配の消え方があまりに急すぎたので、みんな戸惑っているようだった。
「どういう、ことだ?」
その問いを聞いていたのは、久々に空に浮かんだ『破邪の月』だけだった。

―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――

「いったい、どうなってるんだ・・・?」
いつのまにか立ちあがっていたニフォードが、アレインの後ろで呆然と呟く。
鼻と顔のフチに沿って、泥がついている。
「幽霊、だったのか?あの爺さん・・・」
アレインも呟いて、手の中の白い塊に目を落とす。

老人はそれをドラゴンと言ったが、その姿はまるでイタチのように見えた。
身体中を覆っている白いフサフサした毛は、普通のドラゴンには無いものである。
その毛の中に手を突っ込むと、鱗を探り当てることも出来たが、
身体全体に毛の生えている種族というのは聞いた事がない。
そんな中でドラゴンらしいところといえば、
背中に生えた小さな翼と、ドラゴン特有の円錐形をした尻尾くらいである。
そしてそれの背中―翼の付け根あたりに、黒くて大きな渦巻きのような模様があった。
白い身体の中で、その黒い模様はかなり目立っている。

「幽霊?」
アレインの呟きに、ニフォードが反応した。
「じゃあその白いの、幽霊からもらったのか?」
「え?」
幽霊から受け取った、ドラゴンに見えない変なドラゴン・・・
不吉な考えが稲妻のように頭を駆け巡る。

「・・・ギャー!の、呪われるーっ!」
そう叫びながら、白いドラゴンを思いっきり地面に投げ捨てる。
彼(?)は眠ったまま地面をバウンドし、ちょうど幽霊老人が出てきた辺りの闇に消えていく。

ニフォードは真っ青になって、アレインにつかみかかった。
「お、お前バカか?幽霊なんているわけないだろ?も、もしあれが爆弾で
 これがテロとかだったらどうする気だ!もっと科学的に考えろ!」
「ば、爆発しないんだから問題ないだろ!
 それに、なにが科学的だ?お前はファンタジーを知らんのか!
 ファンタジーに科学は通じないんだ!
 ・・・そ、そうだこれはファンタジーなんだ!ファンタジーの世界なんだーっ!!」

アレインは負けじと言い返しながら、現実逃避を始めた。
近所迷惑にならないように、声をひそめながら。

「ファンタジーなんて知らん!というか現実逃避するな!
 ゆ、幽霊なんて存在しないんだ!」
「う、うるさいうるさい!声が震えてるぞ人間コンピュータ!」
「それはオレの頭がいいってことだな?それで何が悪い、この歩く単細胞めが!」
「なんだとぅ?」
「そっちこそ!」
拳を固め、火花を散らし会う2人。

「おい、そこ」
その時、耳に届いたおさない声に、振り上げられた2つの拳が凍りついた。
声のした方にぎこちなく振り向く2人。
その方向は、先ほど幽霊老人が現れて、そのあと白イタチの消えていった方向だった。
「「・・・・え?」」
2人が声をもらした瞬間、アレインの目の前が真っ白に染まった。
そして同時に、顔面にムチで打たれたような痛みが走る。
「ぐ・・・っ?」
その痛みに押されて背中から地面に倒れたのが、自分でもわかった。

「いててて・・・」
顔を押さえながら頭だけを持ち上げると、自分の腹の辺りに白い塊が見えた。
まるで、イタチのような白い塊。
それからその上の方に、2つの黒い点が確認できた。
慌てて目をこすると、よく見えるようになった。
そいつは、彼自身が先ほど投げ捨てた、白イタチだった。
(ついでに、その後ろで目を満月にしている泥顔のニフォードも見えた。)
イタチはアレインの腹に立ち、黒い瞳を怒らせ、アレインの顔を小さな前足でビッと指差しながら

「このやろう、痛いじゃねえか!名前と住所を言え!動物愛護団体に訴えてやる。」
と、言った。

そのセリフは、確かに目の前の白イタチの口から発されていた。
(幽霊のイタチが・・・イタチの幽霊がしゃべってる・・・?)
アレインは混乱しながら考え、そして叫んだ。

「イタチがしゃべった~!」





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最終更新日  2008.07.31 11:20:15
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