眠れない訳は・・・
スターバックスの大きなクッキーの缶。これは私の宝物。ブリキ製で、スターバックス1号店の様子が描かれている。これを開けようか、とふと思う。でも、それを開けた後の自分の気持ちがもうすでにわかっているのでちょっと考える・・・この缶の中には、B.Dからの手紙がすべて入っている。マウイで出会ったあと、初めて私に届けられた手紙や写真。彼がアジア中を旅しているときに、見たものを生き生きと私に伝えてくれた手紙。レシートの裏に書かれたメッセージや、一緒に行ったレストランの紙ナプキンに私が知らないうちに書かれた 「I love you」 のメッセージもある。プリントアウトしたメールにいたっては、何冊も本が出来るほど。それと同じだけの私からの手紙がB.Dの元にはある。「人生で、これほど手紙を書いたことは初めてだよ! bandy!」 と、彼が言った。私だってそうかもしれない。英語と格闘しながらも、伝えたい一心で書き綴った。これらの手紙は、これからの私たちをその数でも内容でも支えてくれると思う。なぜなら、この手紙によって私たちはお互いを愛し始めるようになったから。出会った時、私たちが言葉を交わした時間はわずか5分ほど・・・・・出会いはその5分だったけれど、お互いの手紙によって大切なものへと変わっていった。彼がためらいながらも最後の瞬間にくれたネームカードの住所に手紙を書き送ったのは、マウイから戻って2週間経ったころだったと思う。その手紙を受け取った彼は、嬉しくて思わず胸にその手紙を抱きしめたほどだったと後から教えてくれた。出会った時、私が彼に伝えたのはファーストネームだけ。私が手紙を書かなければ、たぶんもう二度とコンタクトをとることは出来なかったはずである。そんな出会ったころのことを思い出し、手紙が入った箱を開けてみようか・・・と思ったのだけれど結局そうしなかった。ベッドに入ってからなかなか寝付けなかった昨夜。電話が鳴って、すぐに彼からだとわかる。「モシモシ~、モウ ネテマシタ デショー? ゴメンネー」 とB.Dイイエ、ネテマセンデシタ デスヨー。 アナタカラ デンワ クルト ワカッテマシタカラ。仕事の合間にくれた短い電話。いつもと変わりなく、ケラケラと笑いながら話す。そうしながら、今日開けなかった手紙の箱のことを思い、出会ってから今までのことを思った。電話を切る間際に 「I love you」 と伝えたかったのだけれど、そんな思いもあったのか一瞬あいてしまった間。その間のあとに察したように 「I love you, too bandy」 とB.Dが言う。まだ言ってないのに・・・幸せと切なさが混じってそのあとも眠れなかった。手紙の箱は、B.Dと一緒に開けようと思う。