ひみつの裏庭

ふぁみ：「ねえ、そこの棚にこんなノートがあったよ」
みなみ：「昔の日誌か何かかな？」
みゅう：「ちがうでしょ、っていうか魔法文字…」
みなみ：「クレアちゃん、ちょっと」
クレア：「なぁに？」
みなみ：「これ読んでみそ」
ふぁみ：「みそって」
クレア：「ん？…えっとね」

＊＊＊＊＊

「一夜の夢」

新月の空　明るい闇に
魔力を融かし
ヒトになる
あなたの胸に耳を当て
そうして小さく囁くの
「朝が来るのは早いから」と
あなたの心音
少し乱れた

朝が来れば私は戻る
あなたと違う　もとの姿に
わたしの胸に埋もれて
あなたは疲れて寝息をたてる
額に貼りつくその前髪に
そっと口付け
目を閉じ　眠る

　渦を描いて流れる何か
　それが二人を別れへ導く
　手を伸ばしても届かない
　一瞬触れた指先の
　ほんの微かな体温だけを
　刻み付けてさよならするの

朝焼けの空　赤い陽差しを
唇に塗り　私は帰る
あなたの寝顔に魔法をかけて
そうして小さく呟くの
「朝が来るのは早いから」と
わたしの心音
少し乱れた

＊＊＊＊＊

クレア：「…だって」
ふぁみ：「なんだろ、この詩」
みゅう：「よ…よくわからないわ…」
みなみ：「ならなんで赤くなってるん？」
みゅう：「え？あ…赤くなってない！」
ふぁみ：「赤いよ？」
こえだ：「でもなんかロマンチックですわ」

クレア：「この文字はりずむさんのっぽいけどー」
ふぁみ：「うっそん？
　　　　　りずむさんこんな感じのガラじゃ…」

りずむ：「ほう」

ふぁみ：「…え？」
りずむ：「って何してるの！！！！」
みなみ：「あ、やっぱり」
みゅう：「りずむさん、こんな詩作ってたんですか？」
ふぁみ：「彼氏との思い出ー？」
りずむ：「ちがうちがうちがう！！！
　　　　　…あー…なんていうか…
クレア：「ほかにもなんかいっぱい書いてあるよ」
りずむ：「ってか返しなさい」
クレア：「はぁい」

りずむ：「ったく…」
こえだ：「りずむさん」
りずむ：「なに？」
こえだ：「人間の恋人いたんですの？」
りずむ：「え…？何を…」
ふぁみ：「こっちも長いっぽいからねぇ」
りずむ：「まあそりゃ長いけど」
みなみ：「長いけど？」
りずむ：「いないわよ」
みゅう：「長いのにもてないんですか？」
りずむ：「…みゅうちゃん、あなた…
　　　　　たまぁ～にキツいこというわね」
みゅう：「あ…ごめんなさい」
りずむ：「…。
　　　　　
　　　　　まあいいわ。
　　　　　…これはね、私が前にやってたバンドの歌詞よ」
みなみ：「カスタネットの？」
りずむ：「そうよ。私はカスタネット」
みゅう：「ほかは？」
りずむ：「あとはファゴットとトライアングル＆ボーカル、
　　　　　それとチューバよ」
こえだ：「…バランス悪そうですわね」
ふぁみ：「っていうかチューバって？」
みなみ：「スーザフォンのちっこいような」
ふぁみ：「だからスーザフォンって何？」
みなみ：「低い音のでる楽器」
みゅう：「クレアちゃんの楽器みたいなね」
ふぁみ：「…いまだによくわからんのだが」
りずむ：「ま、実際バランス悪かったから、すぐに解散しちゃったけどね」
みゅう：「そうなんですか…」

ふぁみ：「でもぉ」
りずむ：「ん？」
みなみ：「人間との恋愛経験なしにこんなの」
りずむ：「書けるわよ」
みゅう：「即答ですね」
りずむ：「うん。
　　　　　だって人間じゃなくたって
みなみ：「へぇ」
りずむ：「あ」

ふぁみ：「りずむさん、へへへ」
りずむ：「なにそのにや～っとした笑顔は」
ふぁみ：「りずむさんの人間以外との恋愛話聞かせてください」
みなみ：「それはいいなぁ」
みゅう：「わたしも聞きたいですー」
こえだ：「参考にしたいですわ」
クレア：「わくわく。魔法使いさん？それとも…」
りずむ：「…クレアちゃんまでそんな顔で…

　　　　　…
　　　　　…

　　　　　あ！！　空飛ばあｓｄｇｈｆ…

みなみ：「…そこで噛むのか」
ふぁみ：「さすがりずむさんだ」