カテゴリ:サンドウィッチ
クレアが曲を作ると言ってから数日たった週末、朝八時半ちょっと過ぎ。
クレアは食堂部屋でりずむとだべっています。 そんな時、ふぁみたち四人がMAHO堂にやってきました。 ***** みなみ:「ただいまー」 こえだ:「えっ!?」 ふぁみ:「おねえちゃん?」 みなみ:「… いやなんというか… …素で間違えた」 ふぁみ:「あ、そう」 みゅう:「…たまにあるわよね」 クレア:「おっはよー…って何がたまにあるの?」 ふぁみ:「あ、クレアちゃんおはよう。 あのさ、おねえちゃんがね」 みなみ:「クレアちゃん、先生のことお母さんって呼んだことある?」 クレア:「???」 ふぁみ:「っていきなりそんなこと言われたってわかんないよ」 こえだ:「話飛びすぎですわ」 クレア:「?」 りずむ:「おはよう、みんな」 一 同:「おはようございまーす」 クレア:「あのね、曲できたよー」 みなみ:「お?」 ふぁみ:「早っ」 クレア:「えへへ、聴いて聴いて」 みゅう:「どんな感じ?」 クレア:「こんなの。 …ぽちっと」 ふぁみ:「あ、そのCDラジカセ」 こえだ:「また古いものを…」 みゅう:「はじまるわよ」 ※ 約5分後 ※ ふぁみ:「…」 みゅう:「すごい個性的な曲ね…」 こえだ:「前衛的っていうか」 みなみ:「変。 すっごく変、えへへ」 クレア:「えええ!? …そう?かなぁ…」 ふぁみ:「こーいうのが魔女の作る曲なの?」 クレア:「ん? …ううん、くれあの曲」 みゅう:「変わったリズムね」 クレア:「くれあ作るといっつもこんな感じなんだよ。 やっぱ変なのかなぁ… 魔女界でもよく言われた」 みなみ:「あ、あたしが『変』って言うときは、 だいたい気に入ったって時だから」 ふぁみ:「それにしてもさ、えっらい難しいっぽい曲だねぇ… あたしの…キーボードのとこすごいことになってたよ」 クレア:「そう?そんなに難しいかなぁ…」 ふぁみ:「難しいよ。できないってこんなの」 クレア:「あ、そっか」 ふぁみ:「ん?」 クレア:「ふぁーちゃん、演奏下手くそだって忘れてた」 ふぁみ:「…ちょっと!? そりゃーさぁ、下手は下手だけどさ、そんな言い方しなくてもいいんじゃない?」 クレア:「だって下手じゃん」 ふぁみ:「あったまきた。 クレアちゃんこそ鼻歌なんかで歌作るからこんな変な曲になるんだよ!」 こえだ:「ケンカはダメですわよ」 チュ :「ちょっと」 りずむ:「ん?」 チュ :「ねえりずむ、喧嘩してるわよあの子たち」 りずむ:「んー… ほっときましょう。 あの子たちで解決しなくちゃダメ」 チュ :「知らないわよ?」 りずむ:「だいじょうぶよ」 ふぁみ:「ってけーちゃんこんな変なの弾けると思う!?」 こえだ:「それは…」 クレア:「あ、けーちゃんも…」 こえだ:「わたくしは…ひ…弾けますわよ」 クレア:「うそ、昨日の練習でだって音でてなかったよ」 こえだ:「うるさい! …クレアさんのせいですわよ!!」 クレア:「えーっ!? 音鳴らないけーちゃんが悪いんじゃない!!」 ふぁみ:「あたしもクレアちゃんの曲がダメだと思う」 みゅう:「ふぁみちゃん、こえだちゃん…クレアちゃんも」 みなみ:「クレアちゃん?」 クレア:「…う…うう… くれあ頑張って作ったのに… あんたたちが下手くそなだけじゃない!! くれあもう知らない!!!」 みゅう:「クレアちゃん!?」 ふぁみ:「出ていっちゃった…」 みゅう:「…わたし見てくるね」 みなみ:「うん」 ふぁみ:「…」 こえだ:「全部クレアちゃんが…」 みなみ:「…ほんとにそう思う?」 ふぁみ:「だってさ、いきなりこんな難しい曲… おねえちゃんは上手だからいいよ?」 みなみ:「あんたら、一回聴いただけでしょ? ロクに練習してないうちからそういうこと言わないの」 こえだ:「でも…わたしたちまだ音も十分に出せないんですけど」 みなみ:「そう?あんたらだんだん音出てきてるじゃん。 ふぁみの爆発も5回に1回ぐらいになってるしさ、 こえだちゃんの音もおっきくなってる」 ふぁみ:「でもさぁ…」 みなみ:「それにさ、ギリギリまでやってダメならさ、 曲変えちゃえばいいんだし」 ふぁみ:「いいの?」 みなみ:「いいんじゃない?これが正解~なんてないんだし。 それにさ」 こえだ:「?」 みなみ:「確かにちょっとややこしいとこあると思う。 これって演奏するの難しいってだけじゃなくて、 聴いているほうもさ、なんかさ…息苦しくなるような、ね? まあ、そういうとこはどんどん変えてっていいんじゃない?」 ふぁみ:「いいのかな?」 みなみ:「だーかーらー、いいの。 …あー、例えばさ… あたしが、たい焼き初めて焼くとする」 ふぁみ:「? うん」 みなみ:「でさ、初めて作ったのはまずかった」 こえだ:「はい」 みなみ:「アンコが偏ってたのと、生焼けだったのと、 表面が炭になってたから、まずかった」 ふぁみ:「だめだめじゃん」 みなみ:「そう。これ今のあたしらの状態」 ふぁみ:「へ?」 みなみ:「でさ、まずアンコをちゃんと入れてみた。 そうするとさっきよりましになった」 こえだ:「ええ」 みなみ:「次に火加減を調節してみた。 するとちゃんときれいに焼けた。おいしかった。 …わかる?」 ふぁみ:「わからん」 みなみ:「…まあいい。 ちょっとずつ良くしていこ、ってこと」 ふぁみ:「最初からそう言えばいいのに」 みなみ:「うるさい。おなかすいてるの。 っつーか、ね?」 ふぁみ:「わかってるよぉ…」 こえだ:「…ええ。謝りますわ」 チュ :「…りずむ、あのみなみって子、何者?」 りずむ:「さあ…でもやるわね、彼女」 チュ :「そういえばクレアちゃんの方は…」 りずむ:「んー…ま、みゅうちゃんならうまくやってると思うわ」 ***** 一方その頃。 みゅう:「待って、クレアちゃん!!」 クレア:「しらないっ!!」 みゅう:「話を聞いてって…うわっ!!」 クレア:「? …あ」 みゅう:「いったぁ…」 クレア:「…だいじょうぶ?」 みゅう:「ん? うん」 クレア:「あ、血ぃでてる」 みゅう:「ほんとだ、よく転ぶのよねー… で」 クレア:「?」 みゅう:「つかまえた」 クレア:「あ… … みゅう:「泣いてるの? …どうしたの?」 クレア:「ごめんね、みゅうちゃん。 くれあのせいでケガした…」 みゅう:「ああ… それなら大丈夫よ」 クレア:「ほんと?」 みゅう:「うん。だからね、 …ちょっと歩こっか?」 クレア:「…」 ***** 公園。 クレア:「くれあが作る曲って、いっつもあんな感じなの」 みゅう:「でも、それがクレアちゃんの“個性”なんじゃないかな?」 クレア:「そーじゃなくって…いやそうかもしんないけど… くれあ普通の曲が作りたいの…」 みゅう:「ふつう、か…」 クレア:「そう。ふつう」 みゅう:「…クレアちゃん、あのね?」 クレア:「ん? みゅう:「わたしは作曲なんてできない。 少なくとも今まではできなかった。 …これからも、わからない」 クレア:「みゅうちゃん」 みゅう:「だから、それだけでもクレアちゃんはすごいと思う」 クレア:「…」 みゅう:「あ、気休めとかじゃなくて、ほんとにそう思う。 わたしができないことができる人、尊敬しちゃうな。 歳とか関係なくね」 クレア:「そっかな?」 みゅう:「うん。それにね、普通じゃなくてもいいじゃん」 クレア:「だって…」 みゅう:「クレアちゃんの曲、好きになってくれる人もいるって。 みなみちゃんも気に入ってたみたいだし、ね?」 クレア:「うん」 みゅう:「それに“ふつう”の曲も、これから作れるようにしていったらいいじゃない? わたしたちが作曲できるのといっしょに… … あ…」 クレア:「ん?」 みゅう:「…っていうか、わたしたちも近い内に曲作るのよね?」 クレア:「そうだよ?」 みゅう:「…できるのかな」 クレア:「できるよ。 みゅうちゃんなら、やさしい曲作れると思う。 ほんわかした、あったかい音楽」 みゅう:「あらそう?」 クレア:「ぜったいできるよ」 みゅう:「楽器触ったら性格変わっちゃうけどね」 クレア:「あはは」 みゅう:「どっちがほんとのわたしなんだろう…」 クレア:「たぶん、両方」 みゅう:「…そうね、そうかもね」 クレア:「ね、みゅうちゃん…」 みゅう:「ん?」 クレア:「もしかして… いいや、なんでもない」 みゅう:「? そう…」 クレア:「…」 みゅう:「そうだ。 たい焼き買って帰ろっか」 クレア:「え?」 みゅう:「いつものたい焼き屋さん、今日は半額だって」 クレア:「ほんと?」 みゅう:「うん、だから」 クレア:「じゃ、いこっ!」 ***** みゅう:「ただいま」 クレア:「…ただいま」 みなみ:「ってかクレアちゃんおかえり、みゅうもお疲れ」 みゅう:「うん、おみやげ」 みなみ:「たーいーやーきーっ!!! でかした、あんた大漁だよみゅう」 みゅう:「大漁?」 クレア:「ごめんね」 みなみ:「ん?」 クレア:「またお仕事の途中で抜けだして」 みなみ:「ああ、それはりずむさんに謝らなきゃ」 りずむ:「クレアちゃん」 クレア:「りずむさん、ごめんなさい」 りずむ:「はい。 これからは気を付けてね。 で、おかえり」 クレア:「はい、ただいま…」 ふぁみ:「でさ、クレアちゃん」 こえだ:「さっきは…ごめんなさい」 ふぁみ:「あたしも言いすぎた、ごめん」 クレア:「くれあの方こそ、下手くそなんて言ってごめんなさい」 ふぁみ:「いや…事実下手だし…さ」 こえだ:「反論できませんわ」 ふぁみ:「練習しなくちゃだね」 みなみ:「でさ、クレアちゃん。 さっきこいつらと話してたんだけどさ、 曲、アレンジしてもいいよね?」 クレア:「? もちろんだよ」 みなみ:「ほら見ろ」 ふぁみ:「えへへ…そだね」 クレア:「で、どんな感じにするの?」 みなみ:「どんな?」 みゅう:「わたしに聞かれても」 ふぁみ:「ねえ?」 こえだ:「うん」 りずむ:「はいはい、もう開店時間とっくに過ぎてるのよ?」 チュ :「ほいもう11時」 みなみ:「あ」 みゅう:「ごめんなさいりずむさん」 こえだ:「でも…」 ふぁみ:「っていうかお客さんいないじゃん」 りずむ:「…それはそれ」 みなみ:「ま、曲のことはお昼の時に決めよう」 ふぁみ:「さんせーい」 クレア:「わーい」 チュ :「うふふ… いい感じになったわね」 りずむ:「そうね」 チュ :「お客さんは来ないけどね」 りずむ:「…それは言わないお約束」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 13, 2006 12:02:20 AM
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