カテゴリ:サンドウィッチ
夕方四時五十七分。 カラスが鳴いています。 間もなくMAHO堂閉店の時間です。 ・ ・ ・ りずむ「…」 ふぁみ:「…でさ、曲は昼決めた感じでおっけー?」 みゅう:「細かいところは、やりながら考えましょう?」 みなみ:「そだね」 チュ :「はぁい五時よ~っ!! お疲れさま~」 みゅう:「お疲れさま、チュチュ」 クレア:「んじゃ練習だー」 ふぁみ:「りずむさんもおつかれ… …てない?あれ?」 りずむ:「…」 みなみ:「…今日、お客さんゼロだったから」 みゅう:「りずむさん、こんな日もありますよ…」 りずむ:「いつもなら一人ぐらい…ひとり…」 みなみ:「…だめだこりゃ」 クレア:「りずむさぁん? だいじょぶですか?」 りずむ:「ん? …あ、練習ね、行ってらっしゃい。 これ鍵、はい」 クレア:「…だって」 りずむ:「いっそのこと転業…いやダメよ。 こういうお店が私の夢だったんだもの… …あ、それなら雑貨も置いたお菓子屋さんとか… うーん…」 ふぁみ:「…マジへこんでるね」 みなみ:「だね」 チュ :「あなたたち、ここはいいから練習してきなさいよ。 りずむのことはあたしに任せて」 みゅう:「…」 チュ :「りずむたまにああなるのよ。 だから心配しないで、ね?」 こえだ:「…わかりましたわ」 ふぁみ:「んじゃ、行こっか」 クレア:「…うん」 ***** 中庭、池を隔てた向こう側にあるステージ。 ここが「サンドウィッチ」の稽古場です。 ふぁみたちは魔法で楽器を出し、準備完了。 こえだ:「…そういえば誰が歌うんですの?」 みなみ:「そうだね、歌の人決めようよ」 ふぁみ:「へーい、歌いたい人いる?」 クレア:「くれあ歌いたいな♪」 こえだ:「積極的ですわね」 クレア:「くれあ歌好きだもん。 こほん… ♪ちっさくかおだっす かっわいいはなのめぇえ~♪ …ね?どう?」 こえだ:「ふ…ふーん、下手ではないですわね」 みなみ:「っていうか素でうまいな。採用ー」 みゅう:「採用ってみなみちゃん」 ふぁみ:「クレアちゃんが作曲だしね、それは異議ないよ。ね?」 こえだ:「ええ」 ふぁみ:「みゅうさんは?」 みゅう:「え?わたし?」 ふぁみ:「うん。作詞のときいっぱい書いてたでしょ?」 みゅう:「それはそうだけど… …んー…そだ。 みなみちゃんは?」 みなみ:「…」 みゅう:「? どうしたの?」 みなみ:「…んじゃあたし歌うからみゅうも」 みゅう:「え?『んじゃ』って…」 みなみ:「イエスかノーか半分か」 みゅう:「それじゃ… …イエス」 クレア:「はんぶん? …って、何? ふぁーちゃん、どゆこと?」 ふぁみ:「クレアちゃん、深く考えない方がいいよ」 みなみ:「ふぁみ、あんたは?」 ふぁみ:「あー、あたしはだめだよ。 キーボードもまだぼっかんぼっかんいってるからさ。 だからけーちゃんもだね」 こえだ:「…くやしいですが」 みなみ:「そっか、んじゃ三人が歌兼任ってことで」 ふぁみ:「じゃあ始めよっか」 みなみ:「おう」 みゅう:「まずはパート練習ね」 みなみ:「あたしはまず歌だな。 …メロディはどんな感じだっけか…」 ふぁみ:「…ん、だいたいよくなってき(どかん)」 こえだ:「ダメですわね」 ふぁみ:「…もう一回…」 みゅう:「でもほんと手足が勝手に動くって不思議な感じよね」 クレア:「でしょ?」 みゅう:「最初はなんかちょっと恐かったけど」 クレア:「今は?」 みゅう:「…今は… 今はね? ほら、なんかだんだん気持ちよくなって… 気持ちよくなってきたぁぁああああ!!! ほらほらほらぁ!!」 クレア:「あややや…ふぁーちゃんふぁーちゃん」 ふぁみ:「え?なぁ… っぬわっ!!? …性格変わってる」 こえだ:「っていうかかなり恐いですわ」 ふぁみ:「しかもすっごい音!!!」 みゅう:「あははははは!!」 こえだ:「ふぁみさん、早くそのスティックを取り上げて!!」 ふぁみ:「え?なんであたしが!?」 クレア:「はやく~!」 ふぁみ:「あーわかったわかっtぐえっ!! ・ ・ ・ ふぁみ:「…ひどい目にあった…」 みゅう:「ごめんね、ふぁみちゃん」 みなみ:「よし。だいたい分かった。 …ふう… ちっさくかおだっすぅ~♪…」 みゅう:「ん?」 ふぁみ:「おお」 こえだ:「みなみさん?」 ・ ・ ・ みなみ:「よし、歌はOK」 ふぁみ:「そういやおねえちゃんの歌の声って初めて聞くけどさ」 クレア:「そうなの?」 ふぁみ:「うん。 結構かわいいね」 みなみ:「おう。 魔のキャンディボイスとはあたしのことよ」 みゅう:「魔!?」 ふぁみ:「キャンディ…っていうか、りんご飴?」 こえだ:「魔かどうかはともかく、色気はありますわね」 ふぁみ:「うん。普段とは大違いだね」 みなみ:「うふん」 ふぁみ:「うふんて」 みなみ:「じゃあ…ギターを片手に一杯」 ふぁみ:「何を」 みなみ:「…演奏♪」 ・ ・ ・ 演奏終了。 みゅう:「もうギターの方はいい感じね」 こえだ:「ええ、上手ですわ」 ふぁみ:「いいなぁ、うまいなぁ」 クレア:「あのね、これはね、みぃちゃんの魔法の力がね、 とってもすごいってことなんだよ?」 ふぁみ:「だね。 うらやましいよほんと」 みなみ:「♪りんご飴で敵を打つ~」 ふぁみ:「ってなんだそりゃ」 みゅう:「そんなことしたら痛いわよ」 みなみ:「…」 みゅう:「ん?」 みなみ:「… りんご飴~♪… … ふぁみ:「どしたの?」 みなみ:「♪りんご~ …やっぱだめか」 ふぁみ:「だから、どーしたの?おねえちゃんってば」 みなみ:「…いやね、歌の所くると指が動かなくなる」 ふぁみ:「ん?」 こえだ:「それって、弾きながら歌えないってことですの?」 みなみ:「そうなる… …あ、忘れてた。 あたし、二つのこと同時にできないんだった」 みゅう:「そうなの?」 みなみ:「うん、ほら」 クレア:「あやや…ほんとだ」 ふぁみ:「おねーちゃん、そういやこういうの不器用だったよね… …っていうか忘れるかなそういうこと」 みなみ:「テレビ見ながらご飯食べられないよ?」 ふぁみ:「しかもそれちょっと違うし」 みなみ:「…っつーわけだから、歌はクレアちゃんとみゅうでってことで」 みゅう:「えー?みなみちゃん歌わないの?」 みなみ:「だから無理だって」 ふぁみ:「こほん。 おねーちゃん、逃げちゃダメだよ?」 みなみ:「うん。逃げない。次の曲までにはなんとかする」 ふぁみ:「んー… なんか引っ掛かるけど…」 みなみ:「…」 ふぁみ:「ま…しかたない?」 こえだ:「ですわね…」 みなみ:「…絶対に、なんとかする。 してみせる…」 クレア:「燃えてるね」 みゅう:「みなみちゃん… あ」 みなみ:「ん?」 みゅう:「でも、でもでも。 よく考えたらわたしドラム叩きながら歌うの?」 みなみ:「うん、そうなるね」 みゅう:「そぉんなぁ~… できるわけないわよ… 息切れしちゃうし」 クレア:「だいじょうぶだよ。 魔法でやったら息切れはしないよ?」 みゅう:「でも…」 クレア:「だいじょうぶだって」 みゅう:「…」 ふぁみ:「あたしが言うのもなんだけどさ、できるって」 こえだ:「ほんと説得力ゼロですわね」 ふぁみ:「るっさいなぁ」 みゅう:「…じゃあ… …ってどんな曲だったっけ?」 クレア:「はいはい、みゅうちゃんこんなの」 ・ ・ ・ 三分後。 みゅう:「んー…わかった」 みなみ:「早いな」 みゅう:「じゃあ行くわよ…」 ふぁみ:「はい、スティック」 みゅう:「ありがと。 よし。 ♪ちっさくかおだす~ … … ***** みなみ:「みゅうすげぇー」 ふぁみ:「魔法使うの慣れてるっていうか…」 クレア:「魔女でもなかなかいないよ、はじめてでこんなにできるひとって」 ふぁみ:「ほんと、素質あるよ絶対」 みゅう:「…あはは、そんな…」 みなみ:「…」 こえだ:「しかし…よくあんなややこしいの演奏できますわね」 ふぁみ:「うん。歌も全然ヘンになってないし」 クレア:「すごいすごーい」 みゅう:「…しっかしもの足りない、何かがもの足りないのよ!」 ふぁみ:「何が?」 みゅう:「こう、こうね? ダカダカダカって!!」 クレア:「え?」 みゅう:「ふん!!! うぉおおおおおおおおお!!!!」」 みなみ:「あ、みゅうが壊れた」 クレア:「うるさぁーい!」 こえだ:「二回目ですわ…」 みゅう:「そうよ、こんな感じよ。 あはははは!! いいわぁ…もっとスピード上げるわよ!?」 クレア:「こわいよぉ」 ふぁみ:「ちょっと、それじゃついていけないよ?」 みなみ:「みゅうにこんな一面があったとは」 みゅう:「あははははははははは ♪うつらうつらと~…ゆめのなか~」 こえだ:「…でも声はそのまんまなんですのね」 ふぁみ:「歌のテンポもね」 みなみ:「なんだか気合い入ってるのか気ぃ抜けてるのか…」 ふぁみ:「ねー、おねーちゃん」 みなみ:「ん?」 ふぁみ:「このバンドどっちに向かってる?」 みなみ:「さぁ… ってかみゅう面白いな」 ふぁみ:「そんなこと言ってる場合か」 クレア:「ちゃんと女王様にお聴かせできるのかなぁ?」 こえだ:「…知りませんわよ」 みゅう:「あはははは!」 ふぁみ:「そろそろ止めないと」 こえだ:「ええ。 ふぁみちゃん、出番ですわ!」 クレア:「スティックを取り上げて!」 ふぁみ:「な!? またあたし!?」 みなみ:「がんばれー」 ふぁみ:「そんなぁ…」 クレア:「はやくー」 ふぁみ:「わかったよぉ… みゅうsぐえぇ…」 みなみ:「救急箱の用意」 ***** みゅう:「ごめんね、ふぁみちゃん」 ふぁみ:「子供はこうやってオトナになっていくんだね…」 みなみ:「なんだそりゃ」 みゅう:「あ、そうだ。 ねえみんな」 ふぁみ:「いきなり素に戻ったけど」 みなみ:「で、なに?」 みゅう:「うん。 …あのね…りずむさんのことだけど…」 ふぁみ:「ん?」 みなみ:「ああ…」 みゅう:「元気付けるためにさ、歌、プレゼントしない?」 みなみ:「ん、いいねぇそれ」 クレア:「じゃあ、くれありずむさんに知らせてくるー」 で、初ライブ開始。 ふぁみ:「演奏できないのに…」 こえだ:「どうするんですの?」 ・ ・ ・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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Oct 18, 2006 09:07:15 PM
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