カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
鯖雲と無人弁当販売所 朝寒や唐揚げ渡す火傷の手 紅葉をお箸で彩るおべんとう 紅葉弁当わたくし色に詰め直す 葉の隙間溢れ蟲くる歯の隙間 木漏れ日やこぼるる飯にたかる虫 居酒屋の定食鹹く鰯雲 ふりかけに詳しきナース黄落期 林檎のうさぎ雲梯を二段飛ばし
プレバト俳句。 お題は「弁当の店頭販売」。 今回も「異議あり!」ってほどのことじゃないけど、 個人的な感想です。 ◇ 星野真里。 鯖雲と無人弁当販売所 上五を「や」で切ってカットを2つに割るか否か。 結論としては、あえてカットを割らず、 空間の広がりをワンカットに収めたのが勝因。 なるほど~。 コロナ禍の世相も反映してるようですが、 映像自体は、スカッとしてすがすがしいですね。 漢字7文字を躊躇なく使った大胆さもふくめて、 これは文句のない1位でした。 ◇ 馬場典子。 居酒屋の定食鹹からく鰯雲 これも同じ。 中七を「鹹し」で切ってカットを2つに割るか否か。 わたしとしては、 「鹹く鰯雲」という繋ぎ方にやや不自然さを感じるけど、 先生いわく「作者の意図次第。どちらも可」とのこと。 この句の場合は、 口のなかを鹹く感じながら鰯雲を眺めるまでの流れを、 カットを割らずに、一連の動きとしてカメラが追っています。 星野真里のほうが空間的なワンカットだとすれば、 馬場典子のほうは時間的なワンカットなのですね。 こういう手法が可能だと分かると、 かならずしも切れにこだわらなくて済むし、 だいぶ型にとらわれない句が詠める気はします。 ◇ 犬山紙子。 朝寒や 唐揚げ渡す火傷の手 先生の直しはなかったけど、 わたしは「渡す」という動詞が引っかかりました。 「渡さない手があったら持って来いっ!」 とまでは言えないけど、 「手以外の渡し方があったら持って来いっ!」 とは言えるのです。 つまり、 「手」だけじゃ「渡す」かどうかは分からないけど、 「渡す」といえば「手」ということは分かるのです。 なので、 結論としては「唐揚げを売る」にしたほうがいい。 実際、そう書かなければ、 お弁当屋さんの手ではなく、 料理の未熟な妻の手だと誤解される可能性があります。 ◇ 高島礼子。 紅葉をお箸で彩るおべんとう 紅葉弁当 わたくし色に詰め直す(添削後) 本人の説明によると、 「紅葉のようなお弁当」を箸でいじってるらしい。 つまり、季語は比喩なのですね。 そこがちょっと弱い。 添削のほうも季語の扱いは微妙ですけれど、 すでに「紅葉弁当」が秋の風物であるならば、 これを新しい季語として扱うのも可能だとは思います。 ◇ くっきー。 葉の隙間溢れ蟲むしくる 歯の隙間 木漏れ日や こぼるる飯にたかる虫(添削後) 原句を普通に読めば、 「イモムシ」と「虫歯」の掛け合わせのように見えるし、 くっきーのことですから、 目から蟲が飛び出てるイラストみたいに、 葉と歯の両方の隙間から蟲が飛び出てるのかな、と思いました。 しかし、 本人の説明は、期待したほどには面白くない。(^^; いっそのこと、韻を踏みまくって、 むしゃむしゃと飯を蝕む蟲の群れ とでも直したいなと思いました。 ちなみに鳴く「虫」とか「芋虫」なら秋の季語ですが、 飯にたかるような「虫」が秋の季語といえるかどうかは分かりません…。 ◇ フルポン村上。 ふりかけに詳しきナース 黄落期 けっしてネガティブな句でないとは思うのだけれど、 どうしても、 「ナース」と「落ち葉」の組み合わせからは、 オー・ヘンリーの「最後の一葉」を思い出してしまうので、 「黄落期」を主役と見なすことに躊躇を覚えます。 かりに下五を、 「黄葉もみじ降る」とか「銀杏いちょうの実」とかにしていれば、 それほどネガティブな印象にはならなかったと思う。 … もっとも、 これは読み手の側のとらえ方の問題であって、 たとえば、 桜の花が舞い散る様子を見て、 「華やか」と思う人もいれば「儚い」と思う人もいるように、 銀杏黄葉が舞い散る様子を見て、 「神々しい」と思う人もいれば「悲しい」と思う人もいるんですよね。 ちなみに、通常の日本語の表現では、 桜の花や銀杏の葉が落ちる様子を「舞う」とも言うけれど、 俳句の場合、 「花散る/銀杏散る」とか「落花/黄落」は季語になっても、 「花舞う/銀杏舞う」では季語にならないようです。 ネガティブな印象になりがちなのは、 季語に「散」や「落」の字しか使えないせいもあると思います。 ◇ 東国原英夫。 林檎のうさぎ 雲梯を二段飛ばし 7・5・6の破調。 とくに上七が清新な印象をもたらします。 本人によれば、 ウサギリンゴの飾り切りが少女への憧れに重なった、とのこと。 なるほどね~。 そこまでは読めませんでしたが、 ウサギのように元気いっぱいな少年の姿は見えます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.10.18 08:20:05
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