カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
独りきり煌めく街が冬の棘 街騒に凍てし手の振る誘導棒 静寂に響くダイヤモンドダスト iPhoneの光に胸がRing a Ding Dong ルミナリエ咥えて外す黒手套 垂直にシャンパンの泡クリスマス 冬木立シャンパン色にさざめきぬ
プレバト俳句。 お題は「イルミネーション」。 やたらと比喩の句が多かったです。 前回は、 篠田麻里子の「無音の宴」という比喩表現に、 すかさずチェックが入ったわけですが、 今回は、 ほぼすべての比喩がダメ出しなく容認され、 それどころか積極的に評価されていました。 まあ、 クリスマスという時節柄、 多少のロマンチックな比喩は許容されるのかもしれません。 ◇ 梅沢富美男。 冬木立 シャンパン色にさざめきぬ リズム的には上五で切れを作っていますが、 内容的には一物仕立ての一句一章です。 さて、 シャンパン色をしてるのは、 電飾をほどこした「木立」なのか、 それとも、その「さざめき」なのか。 字面どおりなら、 シャンパン色なのは「さざめき」のほうであり、 その場合は、 たとえば「金色に鳴る」などの言い方と同じように、 色がないはずの「音」を色彩的に描写した比喩表現です。 かたや、 「木立がシャンパン色に(輝きながら)さざめいている」 という省略が含まれているのなら、 シャンパン色なのはあくまで電飾された「木立」ですが、 その場合でも「シャンパンのような色」という言い方自体が、 そもそも比喩的な表現だとはいえます。 どちらの意味かは分かりませんが、 いずれにせよ、 クリスマスらしい比喩として評価されたようです。 ◇ 酒井美紀。 静寂に響くダイヤモンドダスト 静寂に響けり ダイヤモンドダスト(添削後) かりに、ダイヤモンドダストが、 微かに音を立てることがあるとしても、 「鳴る」と言うならともかく、 「響く」ってのは大袈裟だろうから、 その時点ですでに比喩的なのですよね。 しかも、ネットで調べるかぎり、 「ダイヤモンドダストが音を立てる」 なんて話はどこにも見当たりません。 現実にはそんなことはないようです。 なので、これは客観写生ではなく、 「ダイヤモンドダストのきらめきが静寂の中で音を立てているようだ」 という完全な比喩であり、 それを「響く」とまで言った幻想なのです。 添削も、 倒置法っぽく直してはいますが、 内容的には何も変わってないし、 それどころか切れを用いて強調したのだから、 原句の比喩や幻想を許容したのだといえます。 なお、 原句の「ダイヤモンドダスト」は9音ですが、 日本語で「細氷」と書けば4音で済みそうです。 ためしに、 きらきらと音が鳴るかのごと細氷 としてみました。 ◇ アンミカ。 iPhoneの光に胸がRing a Ding Dong iPhoneの光よ雪よ Ring a Ding Dong(添削後) 鐘やベルじゃ季語にならないだろうけど、 擬音語の「ディンドン」にかぎっていえば、 案外、クリスマスシーズンの季語になるかもしれません。 いずれにせよ、 胸が「ディンドン鳴る」というのは、 いわば「クリスマスの鐘のように鳴る」という比喩ですね。 しかし、添削では、 季語としても認められず、 鼓動の比喩としても否定されました。 ◇ 秋元真夏。 独りきり 煌めく街が冬の棘 一人ゆく 煌めく街は冬の棘(添削後a) 傷心や 煌めく街は冬の棘(添削後b) これも、 「街の煌めきが心を刺す棘のようだ」 という比喩的な心理描写であって、 やはり客観写生ではありません。 とはいえ、 この比喩こそが作品のキモなので直しようがないし、 先生も、この比喩を積極的に評価したようです。 なお、先生は、 このような比喩表現ではつねに助詞の「は」を用いますね。 ◇ とろサーモン村田。 街騒まちざいに凍てし手の振る誘導棒 街騒や 凍つる手に振る誘導棒(添削後) 原句は、あきらかに「てにをは」がおかしい。 添削がおそらく唯一の正解です。 …それにしても、 この「街騒」ってのは、はじめて見た日本語でした。 たぶん「潮騒」を真似た造語で、 一般的な日本語ではないと思いますし、 わたしの手持ちの広辞苑(第三版。古い!)には掲載されていません。 しかし、 なぜか俳句の世界ではやたらと使われているらしい。 ◇ キスマイ北山。 ルミナリエ 咥くわえて外す黒手套くろしゅとう とても良い句だと思いますが、 字面だけを見ると、 (「しゅとう」という読みも含めて) フィルムノワールというか、 ハードボイルドっぽいのよね(笑)。 クリスマスに仕事を終えたゴルゴ13かと思いました。 ◇ フルポン村上。 垂直にシャンパンの泡 クリスマス わたしも梅沢と同じで、 シャンパンの瓶から吹き出る泡のことかと思った。 実際、そう解釈する人が半数を超えるのでは? 瓶から「吹き出る」と解釈すれば《動的な句》と読めるし、 グラスに「昇る or 揺れる」と解釈すれば《静的な句》と読める。 つまり、誤読を許したら詩情そのものが反転してしまう。 掲載決定とはなりましたが、 本来なら誤読を許容できない内容なのだから、 やはり誤読されないような書き方をすべきだと思う。 たとえば、 垂直にシャンパングラスの泡 聖夜 ともできたのでは? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.12.29 05:11:20
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