カテゴリ:NHK大河ドラマ
NHK大河の最終回。
濃密で見応えがありました。 寺島しのぶのナレによる神君家康の伝説は、 天海がでっちあげた勝者の歴史であり、 春日局が竹千代/家光に語った話だったのね。 ほんとうの家康は、 神の君/東照大権現でなく人間だったし、 虎でもなく、狸でもなく、かよわい白兎だった。 それを最後に示したエピソードが、 信長に賜った鯉を家臣が食べてしまうドッキリ。 (旭堂南斗「鈴木久三郎~鯉のご意見」の再解釈です) 優しすぎる家康は家臣を手討ちにできなかった。 ◇ 脚本の古沢良太は、 徳川体制が15代もの継承に成功した理由を、 家康が「天才じゃなかったから」と考えたようです。 信長も秀吉も信玄も義元も天才だったと想定すると、天才の作った天才にしか運営できない仕組みは、ほかの誰も継承できない。それに比べて、家康はふつうの人だったから、ふつうの人が運営できる体制を作り、それを秀忠に継がせ、その後、江戸幕府は260年続けられたのではないかな、と僕なりに解釈しました。 つまり、 天才による覇道じゃなく、凡人による王道ってこと。 そして竹千代は、家康の正体が兎だと見抜いてたのね。
◇ その一方、古沢良太は、 家康は平和と引き換えに、大事な個人の幸せを捨て、苦い苦いものを飲み込んで成し遂げたのだということを描きたかった。 …とも話してます。 ドラマでは、 瀬名や信康や旧臣らの幻影があらわれ、 家康が「幸せだった」と涙して終わりましたが… 天下泰平を成し遂げたとはいえ、 家康自身の人生は晩年まで戦いの連続だったわけで、 はたして幸せだったのかしら?と思ってしまう。 そういうところは、 西南戦争の西郷隆盛にも重なってしまうのですが、 乱世を終わらせるには、 「自分がすべて引き受けて終わらせるしかない」 …ってことかもしれません。
◇ 茶々の捨て台詞もスゴかった… 日の本か…つまらぬ国になるであろう! 平和な日本の、一面の真実を言い当ててます。 大坂の陣は、 いわば「戦うための戦い」であり、 およそ合理的な目的のない狂気の戦争でしたが、 茶々の動機は、 母を救わなかった家康への怨嗟ともいえるし、 報われなかった片想いからの逆恨みともいえるし、 あるいは、上のセリフにあるような、 力だけを信じる乱世的野心だったともいえます。 しかし、現実的には、 「乱世でしか生きられない牢人は殺し合うしかない」 みたいなことだったのかもしれないし、 それもまた西南戦争の西郷隆盛に重なる気がする。 ◇ 老けメイクも凄かったァ。 ただ肌がくすんでるとか、 シミがあるとかだけじゃなく、 表情を動かしたときに皺が寄ったりする感じも、 とても自然でリアルで、本物の老人のようでした。 ◇ 今回の大河は、 稲本響のテーマ曲も好きだった。 歴代テーマ曲のなかでいちばん好きかも。 大河ドラマのテーマ曲って、 (女性が主人公の場合は別だけど) 通常は勇ましい曲調のものが多い。 でも、今回の曲は、 最初に優美で女性的な曲想にはじまり、 いったんは勇ましくなるものの、 中盤はリズミカルで楽しい曲調に変わって、 最後は、滑稽ともいうべきユーモラスな形に終わる。 とてもユニークで、 遊び心があって、知的なテーマ曲でした。 背景のアニメーション映像も素晴らしかった。 ※クリックするとYoutubeで3種の背景アニメーションが見れる。 稲本響は、 阿部海太郎とともにNHKの仕事が多い音楽家ですが、 葛飾応為の「眩」のころから気になってたのよね。 ◇ ドラマの放送直後は、 Nスペ「家康の世界地図〜知られざる開国の夢」も見ました。 江戸幕府の禁教・鎖国令によって、 日本の開国は300年近く遅れましたが、 じつは家康にも開国の構想があった、という話。 ここでも、 秀吉の「大陸進出」と西郷の「征韓論」が重なるし、 江戸の「禁教・鎖国令」と明治の「攘夷論」が重なります。 結果的には、禁教令によって、 スペイン国王との通商交渉が破談になりました。 番組では触れられてなかったけど、 遣欧使節団をスペインに送った伊達政宗は、 キリスト教を受け入れて交易するつもりだったのよね。 徳川と伊達の主導権争いも絡んでたのかしら? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.17 19:25:55
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