カテゴリ:アストリッドとラファエルの背景を考察。
またまた一週おくれですが、
「アストリッドとラファエル4~文書係の事件録」 第4話の《不死の男》を見ました。 今回のテーマは"トランスヒューマニズム"。 すなわち《超人間主義》です。 遺伝子工学などによって、 人間が生物学的な限界を超えるという思想。 ストーリーは、 いままででいちばん面白かったかな。 ◇ 以下は、簡単なあらすじネタバレ。 メッタ刺しに殺されたのは遺伝子研究者の男。 ところが、凶器に付着してたのは被害者自身の指紋とDNAだけ。 もしかして自分で自分をメッタ刺しにした?? そんなことありえない!! DNA型が同じ一卵性双生児の犯行とも疑われたけど、 被害者に双子の兄弟など存在しません。 結局、犯人は被害者の息子でした。 …といっても、それはほんとうの息子ではなく、 齢の離れたクローン人間だった …というオチ! クローン人間の息子が父を殺す一方で、 アストリッドの腹違いの弟ニルスは、 父の顔さえ知らないのに、 亡き父と同じように鉛筆の噛み癖をもっていた…。 そんな2つのエピソードが対比されてます。 ◇ 今回、 とくに興味をひかれたのは2つの名前でした。 ひとつは、 遺伝子操作で誕生した赤ちゃんの「アンティゴネー」。 もうひとつは、 被害者の男が名乗っていた「イザーク・ラクデム」。 ◆アンティゴネー ギリシャ神話のアンティゴネーはオイディプス王の娘です。 彼女は、オイディプスの次王クレオーンと対立しました。 このアンティゴネーとクレオーンの対立は、 神の法(ピュシス)と人間の法(ノモス)の対立といわれてます。 それは言い換えれば「自然」と「人工」の対立なのですね。 今回のお話では、 遺伝子操作の犠牲者である赤ちゃんアンティゴネーを見て、 アストリッドが涙を流すシーンがありましたが、 遺伝子工学にもとづく超人間主義が、 神=自然の法則への冒涜と位置づけられてるわけです。 ◆イザーク・ラクデム 一方、この名前は、 デュマの未完の小説から採られてるらしい。 その名も「Isaac Laquedem」という1853年の作品。 主人公の名前が題名になってるようですが、 残念ながらネットで検索しても邦訳が見当たらない。 調べてみると、 これは「さまよえるユダヤ人」のヴァリエーションで、 すなわち不死伝説に材をとった物語のようです。 ヨーロッパに伝わる「さまよえるユダヤ人」とは、 十字架に向かうイエスを罵ったために、 その再臨まで地上を彷徨いつづけるよう呪われた男のこと。 つまり、永久に死ねなくなって、 いつまでも生きることを強いられたユダヤ人です。 ◇ この「さまよえるユダヤ人」の不死伝説は、 その後、さまざまな文学作品などに変奏されてます。 ワーグナーの「さまよえるオランダ人」もその一つですが、 このアレクサンドル・デュマの「Isaac Laquedem」もそうなのね。 日本でいうと、 手塚治虫の「火の鳥」や、 萩尾望都の「ポーの一族」や、 大今良時の「不滅のあなたへ」などの漫画作品も、 やはり不死をめぐる物語なので、 この「さまよえるユダヤ人」のヴァリエーションかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.03.14 20:01:44
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