カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
親友のしゃがれたエール忘れ雪 デンモクがふたりを隔てる春休み 春の夜のカラオケ締めは「雪椿」 カラコロンマイクとお酒沁みる春 朧月負けたらあかんで東京に 「なごり雪」君を見ないで歌い出し らうらうと僧侶の美声花まつり カラオケの履歴は桜らんまんと
2月22日のプレバト俳句。 お題は「カラオケ」。 ◇ GLAY・HISASHI。 親友のしゃがれたエール 忘れ雪 これが今週の1位。 かなり知的に感じられる出来です。 的確な写生だけに徹しつつ、 ちゃんと心情が伝わってくるし、 季語の選択も絶妙だし、 中七で切って下五に季語を置く、 という二句一章の型もしっかり出来てる。 どこにも欠点は見当たりません。 ◇ 関口メンディー。 デンモクがふたりを隔てる春休み デンモクが隔てるふたり 春休み(添削後) デンモクは第一興商の商品名で、 カラオケ操作用リモコン(=電子目次本)だそうです。 まず問題のひとつは、中八をどう処理すべきか。 助詞「を」を除けば済む話ではあるけど、 語順についての先生の解説は正確さに欠ける。 「ふたり隔てる」なら動詞に軸足が来て、 「隔てるふたり」なら名詞に軸足が来る、 …みたいな話じゃないでしょ! これは、あくまでも切れの問題です。 つまり、 「隔てるふたり」とすれば、 中七が名詞止めになって切れるけれど、 「ふたり隔てる」とすれば、 動詞の連体形が下五に繋がるわけです。 先生&梅沢の添削案だと、 中七で切れるために、 映像のない季語「春休み」だけが浮いてしまう。 季語を映像化するには、 動詞の連体形で修飾して、 デンモクがふたり隔てる春休み と書くほうが正解でしょう。 しかし、問題はもうひとつある。 そもそも「隔てる」という動詞の選択は、 句材の状況を描くのにふさわしいのかどうか。 この動詞を使うことで、 二人の関係がネガティブな状態に見えて、 別れを予感させてる気がしなくもない。 作者いわく、二人の関係は、 「デンモクを超えてまでは近づけない」ものの、 その反面では、 デンモクがあってこそ繋がってるわけだから、 けっして二人の関係を裂いてるのではありません。 いうならば、 「繋いでもいるけど隔ててもいる」 …みたいな微妙な位置づけのアイテムってこと。 それを客観的に写生するなら、 デンモクをはさむ二人の春休み とでも書くしかないと思います。 ◇ 田中あいみ。 カラコロン マイクとお酒沁みる春 ドアベルとマイクとお酒沁みる春(添削後) 作者いわく、 ・おなじ擬音でドアベル&グラスの氷を掛け合わせた ・楽しむ人もいれば悲しむ人もいるカラオケ店の様子 とのことです。 ちょっと材料が多すぎますよね。 「カラオケ」「ドアベル」「グラスの氷」 の3つの要素を描きながら、 客の様子まで季語と取り合わせるってのは…。 しかも擬音の「カラコロン」は、 ドアベルやグラスの氷というよりも、 入店客の下駄の音かしら?と誤解してしまう。 さらに「沁みる」というのは、 作者の主観・心情であって客観写生ではありません。 あえて「沁みる」とは書かずして、 そこに集う人々の心情を想像させなければならない。 かりに「歌と酒が沁みる」と書いていれば、 かろうじて聴覚&味覚の描写と言えたのだけど、 「マイクが沁みる」という変な表現をしたことで、 そうも言えなくなってしまった。 そして、添削句のように、 「ドアベルとマイクと酒が沁みる」と書いたなら、 これはもう聴覚や味覚の描写ではなく、 状況に対する心情の表現と解釈する以外にない。 かりに「カラオケ」の要素を省くなら、 ドア鈴と水割り 泣き笑いの春 のように書けます。 ◇ レイザーラモンRG。 朧月 負けたらあかんで東京に 例によってネタを組み込んだお約束の作風。 今回は天童よしみネタを取り入れたわけですが、 パクリ審判で「70点」から「3点」への大減点。 歌謡曲の七五調を安易に取り入れる失敗は、 星の入東風 今夜の恋をくれた人 のときに予測したとおりの結果です↓ https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202211150000/ このときの前科があったわけだから、 まして「カラオケ」の兼題で詠ませれば、 こういう顛末になるのは想定内だったし、 そう考えれば、今回の減点査定は、 あらかじめ番組が仕込んだものと思えなくもない。 …とはいえ、 当初の査定が「70点」だっただけあって、 句としてみると、じつによく出来てるのよね(笑) 季語の選択もけっこう的確だし、 「で」を省けば中七の定型になるものの、 あえて中八のダメ押し効果を狙った気もする。 たぶん、この人は、 俳句の作り方は心得てるんだろうなと思う。 ◇ 梅沢富美男。 らうらうと僧侶の美声 花まつり 締めの一句に認定されましたが… 中七の「美声」があれば「らうらう」は不要だし、 逆に「らうらう」があれば「美声」は要らないでしょ。 ためしに、 らうらうと読経の若し 花まつり としてみました。 しかし、もっと根本的なことをいえば、 「花まつりで読経する」のは当たり前なのだし、 「剪定で鋏の音がする」ってのと同程度に無内容な凡句です。 伝統行事にかんする知見をひけらかしただけ。 ◇ 小林幸子。 春の夜のカラオケ 締めは「雪椿」 雪椿咲きカラオケの締めはさて(添削後) 曲名をそのまま季語として用いたら、 季語の鮮度が落ちてしまうという話です。 添削では、あえて曲名とは明示せず、 あたかも実景の季語っぽい体際にして、 そこから曲を連想させる、という作戦。 …それはまあいいとして、 添削句の「咲き」と「さて」は、 不必要な音数合わせにしか見えません。 ためしに、 雪椿 カラオケの締め選びけり としてみました。 ◇ 武田鉄矢。 「なごり雪」君を見ないで歌い出し なごり雪 君を見ないで歌い出す(添削後) これも実景の季語から曲名を連想させる添削。 …それはいいとして、 そもそも「君見ず歌う」と書けば7音で済むものを、 後段の12音をまるまる使う必要ってあるの? とくに中七の「見ないで」は、 あまりにも口語的かつ散文的な言い回しだし、 かりに4音分を使うにしても、 「見ずして」「見ぬまま」「見れずに」 のように書くべきでしょ。 下五「出す」の必要性についても疑問なので、 なごり雪 君見ぬままに歌う夜 とでも直してもらいたい。 もしも12音分を7音で済ませるなら、 なごり雪 君見ず歌う博多の夜よ のようにさえ書けるはずです。 ◇ 清水アナ。 カラオケの履歴は桜らんまんと これまた曲名を季語とするのでなく、 やはり実景から曲名を想像させるべき内容。 単純に添削するのなら、 カラオケの履歴 桜のらんまんと でもいいでしょうが、 カラオケの履歴や 並び立つ桜 と書いたほうが楽曲履歴を連想しやすいかも。
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最終更新日
2024.02.27 21:34:43
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