カテゴリ:NHK朝ドラ
朝ドラ「虎に翼」on NHK。
吉田恵里香の脚本の非凡さが、 話が進むほどに際立ってきてる感じです…。 前の記事にも書いたとおり、 大森美香の手法に倣ってる面もあると思うけど、 ただそれだけじゃないことが分かってきた。 ◇ 大森美香の手法というのは、 簡単にいえば、ヒロインを不幸にしないこと。 そのもっとも典型的な例が「あさが来た」です。 周りに不幸なキャラは登場するけれど、 ヒロインは基本的に幸福な家庭に生まれ育って、 幸福な家庭に嫁いで、幸福なままに人生を終える。 これが、 朝ドラにもっとも適したスタイルであることを、 2015年の「あさが来た」は強力に証明したと思う。 いまのところ、 今回の「虎に翼」も、 その手法に倣ってるように見えます。 しかし、 吉田恵里香の脚本は、 たんに大森美香の方法論を真似てるだけじゃない、 …ってことが、だんだん見えてきました。 ◇ 第一に、この「虎に翼」は、 たんなる伝記ドラマではない のですね。 社会的なテーマを扱ってますが、 それはけっして過去の話ではなく、 きわめて現代的な内容になっています。 朝ドラが、 ここまでアクチュアルな問題に挑んだことは、 過去に例がないんじゃないかと思う。 ◇ これまでも吉田恵里香は、 テレ東で「チェリまほ」を書き、 NHKで「生理のおじさん」「恋せぬふたり」を書いており、 果敢にジェンダーの問題に取り組んできてる。 今回の「虎に翼」でも、 現代社会におけるフェミ議論を挑発したりと、 社会的なテーマをしたたかにエグってますし、 それを朝のエンタメの枠組みのなかで巧く見せてます。 こういう面においては、 むしろ大森美香の「シッコウ」などを上回っている。 ◇ わたしは、 NHKの「恋せぬふたり」は見ましたが… 残念ながら、 テレ東の「チェリまほ」は見てなかったし、 NHKの「生理のおじさん」は終盤部分を見ただけ。 もともとNHKが、 ジェンダーや月経の問題に取り組んでることに、 ある程度の注目はしてたつもりだけど、 脚本家の吉田恵里香のことは意識してませんでした。 しかし、NHKは、 彼女のポテンシャルを見抜いてたのでしょうね。 この若い脚本家の能力をうまく引き出してると思います。 ◇ 第二に、 失礼を承知で言いますが、 今回の「虎に翼」には、 美男も美女も登場していません。 ヒロインは美女ではないし、 そのお相手になる男性もイケメンではない。 つまり、メインのキャラのなかに、 典型的な美男や美女がひとりもいない。 唯一「美女」と呼べるのは石田ゆり子だけだと思う。 第4週には、いちおう岩田剛典が登場してますが、 彼も一般的な「イケメン」の役回りとは違っていて、 むしろ悪役になりそうな雰囲気を漂わせてます。 こういうところも、 従来の朝ドラのセオリーを大きく破ってますが、 おそらく意図的なのでしょうね。 ◇ すなわち、このドラマは、 男性はもちろん、女性にさえも、 「美」の役割=ジェンダーを求めてないのですね。 そのこと自体がとても政治的だといえる。 実際のところ、 女に対して安易に「美」を求めるのは、 本来ならポリコレに反するはずなのだけど、 いまのところ、 NHKにも、民放にも、 その倫理規範にまともに向き合ったテレビ番組は、 ほぼ存在していません。 報道番組も含めて、 あらゆるテレビ番組は、 意識するとせざるとにかかわらず、 ほぼ例外なく女に「美」を求めてしまっています。 でも、今回の朝ドラは、 そのことにすら抗ってるように見える。
これもミスリードになってました。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.20 17:37:31
[NHK朝ドラ] カテゴリの最新記事
|
|