カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
迎え梅雨紙端に滲む友の文字 虹の下クレヨンの箱踊り出す 天王山黒ずむ袖に薄暑光 薫風や隣の君と教科書を 消しゴムが白き水面にボウフラを 密やかに鉛筆昇てんと虫 初夏の光のインク硝子ペン
5月9日のプレバト俳句。 お題は「文房具」。 ◇ 雲丹うに。 天王山 黒ずむ袖に薄暑光 鉛筆に黒ずむ袖や 夏休み(添削後a) 鉛筆に黒ずむ袖や 晩夏光(添削後b) 原句は、 受験生の句ではなく、 品評会に挑む職人の句にも見えるし、 柔道などのスポーツの句にも見えます。 先生の(添削後b)は良い出来だと思います。 ◇ 山本里菜。 迎え梅雨 紙端したんに滲む友の文字 迎え梅雨 借りたノートに滲む文字(添削後) 作者の説明を聞いても、 あえて「紙端」の語を選んだ理由がわからない。 紙の端に書き添えられた文字は、 友人からの意味ありげなメッセージに見えます。 先生の添削に異論はないけど、 個人的には「借りたノートの字の滲む」としたい。 ◇ 清水アナ。 カンペ握りしめる初ロケは立夏 初ロケは立夏 カンペを握りしむ(添削後) 原句の「握りしめる」は、 連体形と読めば一句一章、 終止形と読めば対比的な二句一章です。 添削句のほうがリズムに定型感があり、 意味も明瞭だし、語順的にも正解だと思う。 ちなみに助詞「は」を避けるなら、 「立夏の初ロケ」とも書けますが、 この場合は「初ロケの日は立夏だった」という感動を、 強調して書くだけの必然性があるでしょうね。 なお、 季語の「立夏」には日付の意味と期間の意味があるけど、 清水アナの句は「立夏日」という印象を受けます。
◇ 河野純喜。 薫風や 隣の君と教科書を 教科書を忘れた君と 風薫る(添削後) これも先生の添削でいいと思うけど… 強いて言うなら、 中七で切って下五に季語を置く形式なのに、 助詞「と」で繋がって見えるのが難点。 実際のところ、 「君と風」が薫る…という解釈も不可能じゃない。 その場合は助詞「と」の意味が変わって、 「You & Me」の距離感を描いた句ではなく、 「You & Wind」の香りを描いた改作になる。 かりに「君と風を嗅ぐ」と他動詞にすれば、 中七は切れずに繋がるけど、季語になりません。 ちなみに、最近の日本語では、 「香ってみますか?」 みたいな他動詞的な用法もあるけれど、 https://salon.mainichi-kotoba.jp/archives/123130 さすがに「風薫る」は他動詞じゃないので、 「君とともに風を薫る」という解釈は不可能です。 季語を名詞にすれば、 教科書を忘れた君と夏の風 のような切れのない一句一章にできますが、 やっぱり「You & Wind」の意味になってしまう。 原句のように「You & Me」の意味にするなら、 教科書を忘れた君とゐる五月 とでも書くしかないでしょうね。 ◇ 内藤剛志。 虹の下 クレヨンの箱踊り出す 季語は「虹」で夏。 だいぶファンタジックな作品で、 それを許容できるかが評価の分かれ目になる。 … 上五「虹の下」の是非。 虹と子供がどちらも遠くに見えてるなら、 この写生にはリアリティがあるけれど、 実際は、子供が近くにいて虹は遠いのだから、 子供たちが虹の下にいる…というのは虚構でしょう。 もちろん、幻想を書くのが悪いわけじゃないし、 端から端まで見える巨大な虹を目の当たりにして、 「自分たちが虹の下にいる」 みたいな感覚に襲われることもあるだろうから、 まったく現実味のない描写とも言いきれない。 … 下五の擬人化の是非。 子供たちが箱をガチャガチャしはじめて、 箱の中のクレヨンが動き出したことの比喩でしょうが、 「クレヨンが踊り出す」ではなく、 「箱が踊り出す」との表現が妥当かどうか。 まあ、これも幻想句としてなら許容範囲かな。 とはいえ、 前回の「本職」の句は合点がいかなかったし、 たった2回の査定で特待生との判断は不可解です。 ◇ ゆりやんレトリィバァ。 消しゴムが白き水面みなもにボウフラを 消しかすはボウフラみたい 子どもの日(添削後) 消しかすはボウフラみたい 夏休み (添削後) 季語は「孑孑/孑々ぼうふら」で夏。 作者によると、 「消しゴムがノートに消しカスを(散らした)」 という内容を直喩で書いたようです。 かりに子供の俳句だったら、 「消しカスがボウフラみたい!」 という発想や観察眼は褒めたい気もするけど、 大人の俳句としては珍奇な詩情としか思えず、 関西大文学部卒という学歴を考え合わせても、 ウケ狙いなのか本気なのかいまいち判別がつかない。 季語が比喩なので、 先生の添削では「ボウフラ」の片仮名表記を直さず、 もうひとつ別の季語を置いて解決してます。 それはそうと… 作者が最後に提示した推敲案、 消しかすはボウフラみたい 初鰹 は、ビート文学みたいで激烈に面白いw マイナス100点満点で一発特待生にしたいです。 ◇ 千原ジュニア。 密やかに鉛筆登るてんと虫 季語は「天道虫」で夏。 形容動詞「密やかに」の是非が問われます。 掲載決定でしたが、わたしならボツ! 天道虫がひそやかに登るのは当たり前! 音を立てて昇る天道虫がいるんなら持ってこい!! なお、先生によれば、 A: 天道虫が密やかに登る B: わたしが密やかに見る という2つの読みが可能とのこと。 たしかに、 「密やかに登るてんと虫(を見る)」の省略と読めば、 どちらの動詞に掛かるとも解釈できる。 でも、実際にそう読ませたいのなら、 芭蕉の「閑さや」と同じように、 上五を「密やかや」と切るんじゃないかしら? ◇ 梅沢富美男。 初夏はつなつの光のインク 硝子ペン 初夏のひかりのインク 硝子ペン(添削後) 倒置法の比喩で、 「硝子ペンのインクは初夏の光のようだ」 と読める形なのだけど、 作者がそれを明確に意図したかどうか怪しいw おおかた17音に収めてみた結果、 たまたまそういう形になっただけじゃなかしら? 内容的には、 比喩を使って硝子ペンの特徴を説明しただけとも言える。 なお、添削句は平仮名で透明感を表現してます。 ▽過去の記事はこちら https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.06.29 20:46:41
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