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まいかのあーだこーだ

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2024.07.14
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夏暁の納沙布FMのノイズ 釧路駅知らないコンビニの冷房 宮古島ホースに溜まる水は炎ゆ 舳先より泡盛の神酒一礼す 雨後の虹怒髪ゆるんだ東尋坊 船に群れ海猫の腹蒼々と 荒山の岩間匂うや稚児車 始発待つ素足ぶらぶら大三東 高原に横笛ピュルル夏の空 朝九時のビール塩こぶビリケンはん 熱田守護の亀の蛭剝ぐ炎天下 胎児寝る風鈴数多きゃらきゃらと 峰雲のホッピー通りハイボール 三越の獅子は阿の口夏旺ん 竜飛より海峡見ゆる翌は秋
7月11日のプレバト俳句。
夏の炎帝戦2024。お題は「好きな観光地」。
優勝は特待生になったばかりの蓮見翔でした。


今回は作品数が多いので、
記事は「その1」「その2」に分けます。



蓮見翔(北海道・納沙布岬)。
夏暁なつあけの納沙布のさっぷ FMのノイズ


納沙布は日本最東端の岬なので、
夏の朝に日本で最初の日の出を見るのでしょう。

非常に若さを感じる句です。

歳を取ると、
わざわざ日の出を見るだけのために、
未明から車を走らせて、
FMも届かない場所まで行こうと思わない…(^^;


蓮見翔(北海道・釧路)。
釧路駅 知らないコンビニの冷房


釧路と冷房の取り合わせが面白い。
さすがの釧路でも夏は冷房かけるよね、
…とあらためて思わされます。

釧路とコンビニの取り合わせも面白い。
五感で受け止める店内の景色は慣れた日常だろうけど、
観念的な部分で「釧路にいる」ことの非日常性を感じてる。
そういう妙な感覚なのでしょうね。

唯一の欠点は、
上五の「釧路駅」が、
映像でなく状況説明に見えてしまうこと。



千原ジュニア(沖縄・宮古島)。
宮古島 ホースに溜まる水は炎


上五の「宮古島」は、
やはり映像でなく状況説明に見えます。

助詞の「は」を使う必然性も乏しい。
わたしは「水の炎ゆ」で十分だと思うし、
連体形止めで「水炎ゆる」とも、
完了の助動詞で「水炎えり」ともできる。



千原ジュニア(沖縄・宮古島)。
舳先へさきより泡盛の神酒みき 一礼す


中七で切って下五に動詞を置いてますが、
2つの場面の取り合わせではないので、
手順の説明をしてるように見えます。

あえて「神酒」と書かずとも察しはつくし、
舳先より泡盛垂らし一礼す

のような一句一章にできるのでは?



なお、以前にも、
ジュニアや中田喜子が、
病室の七夕竹に一礼す
盃の富士に一礼 初笑

と「一礼」の句を詠んでますが、

それ自体が芝居じみてて好きじゃないのよねw

映画やテレビドラマを見てても、
登場人物が誰もいないところへ向かって、
別れや感謝の一礼をするシーンがあるけど、

墓前の黙祷や神社の参拝でもなければ、
現実にそんなことする人はいないでしょ!
…と思ってしまうし、

なにやら戦前の軍部の敬礼じみた文化も想起させる。

ちなみに、
最初にそういうシーンを観たのは、
河瀬直美の「萌の朱雀」だったと思う。




津田寛治(福井・東尋坊)。
雨後の虹 怒髪ゆるんだ東尋坊
雨後の虹 白波ゆるぶ東尋坊
(添削後)

雨後じゃない虹があったら持ってこい!

中七の「怒髪」が荒波の比喩だとも分からないし、
なぜこの句で出場できたのか疑問です。

なお、添削句は、
作者の意図を汲むなら、
「白波」より「荒波」を使うべきでしょう。
虹ほのか 荒波ゆるぶ東尋坊

でどうでしょうか。



水野真紀(長野・美ヶ原高原)。
高原に横笛ピュルル 夏の空
高原は夏空 横笛のピュルル
(添削後)

原句は、
中七で切って下五に季語を置く形。

添削句では語順を変え、
あえて助詞の「は」を使って、
《高原に来たら夏空だった!》
…というニュアンスにしてるけど、

ふつうに「高原の夏空」「夏空の高原」でも成立します。



ペナルティ・ヒデ(北海道・大雪山)。
荒山の岩間匂ふや 稚児車ちんぐるま
青空や 岩間を匂ふ稚児車
(添削後)

これも中七で切って下五に季語を置く形。
原句のままでも、さほど悪くはない。

実際に匂ってるのは稚児車でしょうが、
それを「岩間が匂ふ」と表現したのも面白い。

先生は、
「荒山」と「岩間」の情報が重なると言いますが、
津田寛治の「雨後」と「虹」の重複よりはマシw

なお、添削句では、
上五で「青空や」と詠嘆してますが、
これは芭蕉の「古池や」と同じ手法。
つまり、上五で季語以外のものを詠嘆してる。



こがけん(三陸海岸)。
船に群れ海猫の腹蒼々と
ふなべりや 腹蒼々と海猫ごめの群むれ
(添削後)

この添削でも、
上五を「舷や」と詠嘆してます。

先の「青空や」と同じように、
季語でないものを詠嘆してもいいとは思うけど、
ここで「舷」を詠嘆する効果は疑問。

映像としての意味も乏しいし、
まして詠嘆するほどの詩情があるとも思えない。

蓮見翔やジュニアの「釧路駅」「宮古島」のように、
上五に地名を置く場合もそうだけど、
映像としての意味がなければ、たんなる状況説明です。

舷なんぞを詠嘆するより、
むしろ「なぜ海猫の腹が蒼いか」を書くべきだし、
村上も言ってましたが、
この句に「船」の情報は不要だろうと思います。

ためしに、
碧色を腹に映して海猫ごめの群れ

としてみました。



かたせ梨乃(長崎・島原鉄道)。
始発待つ素足ぶらぶら 大三東おおみさき


大三東は「日本一海に近い駅」だそうです。

中七で切って、
下五に季語じゃなく地名を置く形。
芭蕉の「最上川」や子規の「法隆寺」と同じ手法。

上五の場合も、下五の場合も、
季語以外のものでワンカットを作る場合は、
映像として描写する意味があるのかが重要になる。
そうでなければ状況説明に見えてしまう。

この句の場合は、
「海辺の駅」の映像が見えるならアリですね。



キスマイ千賀(愛知・熱田神宮)。
熱田守護の亀の蛭ひる剝ぐ炎天下
熱田守護なる亀の甲羅の蛭を剝ぐ
(添削後)

熱田神宮は霊亀が背負う蓬莱山の上にある、
…という伝承にからめて、
亀のことを守護神と見なしてるのですね。

原句は、
上6の字余りで「蛭」「炎天」の季重なり。
さらに添削句のほうは上7の字余りですが…

作者の話によれば、
あえて「甲羅」に限定する必要はないようだし、
そもそも「熱田守護」という言い方も一般的じゃない。
わざわざ守護神だと説明する必要も感じません。

ふつうに定型で、
亀に付く蛭剥がしたり 熱田宮
とすればいいんじゃないでしょうか。
※甲羅に限定するなら「亀の背の」とも書けます。


なお、この場合も、
かたせ梨乃の「大三東」と同じように、
下五の地名が、
映像として意味をもつかどうかが重要になる。



フジモン(大阪・新世界)。
朝九時のビール塩こぶビリケンはん
朝九時のビール塩こぶ阪神帽
(添削後)

最後の「ビリケンはん」は、
実景なのか、幻想なのか、比喩なのか、
字面だけでは分からない。

店内にビリケンさんの置物があった、
…という実景なら問題ないと思うけど、

作者の話によれば、
ビリケンさんも客の姿で一緒に飲んでる気がする、
…という幻想だったようです。



犬山紙子(静岡・西伊豆宇久須神社)。
胎児寝る 風鈴数多あまたきゃらきゃらと
風鈴のきゃらきゃら 胎児眠らさん
(添削後)

原句は胎内の感覚を詠んでますが、
それは実景というべきか心象というべきか、
ちょっと難しいところですよね。
あくまで客観じゃなく主観だし。

その意味では、添削のように、
作者の「眠らさん」という気持ちを詠むほうが自然。

とはいえ、
たくさんの風鈴が一斉に鳴らなければ、
「きゃらきゃら」という音にはならないだろうから、
数の描写は必要じゃないかと思います。

命令形にして、
胎児寝よ あまた風鈴きゃらきゃらと

とする手もあるかなあ…。



ニューヨーク嶋佐(東京・浅草)。
峰雲のホッピー通り ハイボール


欠点とまではいわないけど、
ジュニアが指摘したとおり、
「なぜホッピー通りでハイボール?」
ということの違和感はある。

ホッピー以外の酒を飲む人もいますが、

それをあえて俳句に詠むのは、
滑稽味を狙ってるとも読めるし、
一種の自嘲や皮肉とも読めるし、
ひねくれ者の反骨気取りとも見える。



フルポン村上(東京・日本橋)。
三越の獅子は阿の口 夏旺さか


獅子像の口が「阿」だという発見は凡庸です。

…しかしながら、
季節と無関係なはずの獅子像に対して、
「夏旺んだから阿の口なのだ!」
という因果関係を主張してるなら、
そこに幻想句としての面白さはある。

たとえば、
三越の獅子も阿となる盛夏かな

のような書き方もあると思います。



梅沢富美男(青森・龍飛崎)。
竜飛たっぴより海峡見ゆる翌あすは秋


季語は「翌は秋」で晩夏です。

とくに添削はありませんでしたが…

本来なら、
竜飛より海峡の見ゆ 翌は秋

と中七を終止形で切るべきでしょ。

そこを連体形で繋いでしまったら、
海峡が見えるのは現在でなく、
翌日の話になってしまうはずです。

なお、
「海峡を見る」「海峡望む」とすれば能動、
「海峡の見ゆ」とすれば受動になりますが、

さすがに「見る」は不要な動詞なので、
風わたる竜飛海峡 翌は秋

のように風を描写する手もあるし、
(「津軽海峡」だとどこに立ってるか分からない)

あえて受動で「見ゆ」というなら、
海峡が見えるのは当たり前だから、
竜飛より北州の見ゆ 翌は秋

として対岸の北海道を詠む手もある。



残りの11句は「その2」に書きます。


▽過去の記事はこちら
https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12



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最終更新日  2024.07.14 22:46:11
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