カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
夕芒祖母の黄ばんだひらがな帳 夏シャツのよごれそれぞれ昭和の子 星明かりほどの重さの子に汗疹 祖父に兄縛られしこの柿の木や 波飛沫母笑みて抱く裸の子 父と子の季節短し晩夏光 クラゲ刺す男言葉の課長の娘 秋彼岸お供え物が気になる子
8月22日のプレバト俳句。 お題は「幼少期の写真」。 ◇ 森迫永依。 夕芒ゆうすすき 祖母の黄ばんだひらがな帳 いやあ…、素晴らしすぎてちょっと。 たしかに戦前生まれだったりすると、 読み書きの出来ない老人は結構いるし、 仮名を書くのがやっとの人も珍しくない。 でも、作者の話によれば、 祖母が「中国人だから」という理由らしい。 そういえば彼女は日本と中国のハーフだもんね。 その話を聞くと、ますます味わいが増します。 陳凱歌の映画が「黄色い大地」だったり、 中田喜子にも「黄さん」の句があったので、 中国を「黄」の字が象徴してるようにも思う。 黄という文字は「光」と「田」の含意文字で、光り輝く田圃の色であり、黄色は自然の中で生命の輝きを感じさせる色といえよう。 古代中国で確立されたといわれる五行思想では、黄は「木、火、土、金、水」の真ん中の「土」にたとえられている。国の源を作った三皇五帝伝説において、第一と崇められた黄帝は、人民の文明生活に大いに寄与したといわれ、神話的伝説の王として祭り上げられた。中国では黄色は戦国時代まで皇帝の色であり、最も高貴な色として尊ばれたのである。 描いてるのは、 「夕芒」に取り合わせたささやかな一場面だけど、 その背景に空間の広がりと歴史の奥行きを感じさせます。 わたしにいわせれば、 もう現時点で十分すぎるほど「名人級」だと思います。 ◇ 武田鉄矢。 夏シャツのよごれそれぞれ 昭和の子 これも句材は面白い。 中七の「それぞれ」には具体性がなく、 描写性という点で疑義がつきかねないけど、 全体をセリフ形式の句ととらえれば、 「れ」「れ」「れ」の脚韻とも相まって、 とぼけた味わいを醸してると思います。 ◇ 清水アナ。 秋彼岸 お供え物が気になる子 先生の指摘どおり、 「お供え物が気になる子」は説明的ですが、 ほぼ同じ内容でも、 「お供え物を気にする子」 と書けば、いくぶんか描写的になるし、 「お供え物を欲しがる子」 と書けば、もっと描写的になります。 そして、 「秋彼岸」と「お供え物」が近いので、 季語をすこし離せば改善できる。 ためしに、 初紅葉 お供え物を欲しがる子 としてみました。
◇ フルポン村上。 星明かりほどの重さの子に汗疹あせも 頼りなげな星明かりのように、 まだ覚束ない重さの赤ちゃんなのですね。 その「星明り」は秋の季語ですが、 この場合は比喩なので、主たる季語は夏の「汗疹」です。 …とはいえ、 夏と秋のイメージが混在する感は否めない。 しかも、 秋の季語としての「星明り」は、 月にも劣らぬほど明るいわけだから、 俳句的にいうところの「星明かりほどの重さ」が、 どれほどの重さを意味するのか、やや読み迷わせます。 その点が、ちょっと引っかかる。 ◇ 千原ジュニア。 祖父に兄縛られしこの柿の木や 祖父が兄縛りし柿の木の夕焼ゆやけ(添削後a) 祖父が兄縛りし柿の木よ秋よ(添削後b) 原句はまず、 「祖父に兄」という上五の叙述に「?」となります。 下五にかんしても、 切れ字「や」で締めるイレギュラーな手法が、 さほど効果的とは思えないですね。 そして、先生の解説によれば、 「柿」は秋の季語だけど、 「柿の木」は季語にならない、とのことです。 …とはいえ、 (添削後a)では、 夏の「夕焼」を詠んだ句に直してるものの、 正直「柿の木の夕焼」って何??って気もするし、 (添削後b)では、 「秋」を詠んだ句に直してるものの、 さすがに「柿の木」と「秋」の重複感が否めない。 ためしに、 7・5・5の破調ですが、 兄を縛りし祖父の木に柿実る としてみました。 ◇ 春風亭昇吉。 父と子の季節短し 晩夏光 1ランク昇格でしたが… 内容が抽象的で描写性に乏しく、 言ってることも凡庸の極み。 わたしなら1ランク降格です。 ◇ 的場浩司。 波飛沫なみしぶき 母笑みて抱く裸の子 母の抱く裸子はだかごは吾ぞ 波飛沫(添削後) 季語は「裸子」で夏。 上五の「波飛沫」が季語じゃないので、 ややイレギュラーな形式です。 わざわざ「母抱く子」と書かずとも、 母が抱くのは子であり、 子を抱くのは母だろう…と思えるし、 中七「笑みて」にも蛇足感があります。 一方、添削句のほうは… かりに過去の場面を詠んだ句なら、 それにつれて季語の鮮度も落ちますよね。 むしろ、 《眼前の母子を過去の自分に重ねて幻視した》 と解釈すべきかもしれません。 ◇ 水野真紀。 クラゲ刺す男言葉の課長の娘こ 刺されたるクラゲ罵る課長の娘(添削後) 上五の「クラゲ刺す」は終止形で切れてるのか、 連体形だとしても、どこに掛かるのか分かりにくい。 あえて「課長」と書くことの効果もいまいち不明。 作者によれば、 「父は忙しくて休みがなかなか取れなかった」 とのことですが、 その話を「課長」の二字から読み取るのは無理です。 それどころか、 へたに「課長」などと書いてしまったら、 部下か上司の視点で詠まれた句のように見える。 かたや、 先生の添削も変ですよね。 クラゲが刺されたことになってますww … 以下の情報を、 すべて一句のなかに詰め込むのは不可能なので、 せめて2つの句に分けるほかありません。 A: 父のたまの休みに行く海は季節外れだった。 B: クラゲだらけの海で娘が話すのは男言葉だった。 A を娘の視点で詠むなら、 父と行く海は水母くらげのあまた浮き のように書けるし、 B を父の視点で詠むなら、 海月くらげの瀬 娘は男言葉なり のように書けます。 ▽過去の記事はこちら https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.08.26 08:50:07
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