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まいかのあーだこーだ

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2024.10.07
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三日月や真朱の隠岐に藍の波 長き夜や絵本の丸き角を拭く 灯台の周期星月夜の無辺 待宵のジャングル細切れのラジオ 芝居小屋奈落の闇を虫時雨 朝霧や土の匂いの雲場池 師が逝きひぐらし号泣しております 稲穂波合掌屋根を登りけり 銀杏の実剥き終へ自由になる十指 方向音痴ぐるぐるぐるぐる秋思 外苑はさやか孤食のカチョエペペ
10月3日のプレバト俳句。
金秋戦決勝です。

お題は「自分で撮った写真」。



的場浩司。
三日月や 真朱まそほの隠岐おきに藍の波


三日月の白色。
隠岐島の赤色。海の藍色。

作者は波打ち際に立って、
三日月を眺めてるように見えますが、
なぜ《夜の隠岐島が赤い》のかが分からない。

もちろん、
その理由は写真を見れば分かります。
じつは、まだ夜になっておらず、
夕焼け空に三日月が浮かんでるのですね。

そして、作者は、
じつは波打ち際ではなく、
対岸(あるいは船上)から隠岐島を眺めてる。

でも、字面だけを見ると、
悲劇的な歴史を比喩的に「真朱」と詠んだのかしら?
…とも解釈できてしまう。

この句が1位だったのは、
写真を見た先入観で評価してるからでしょう。
そうでなければ夕景の句とは分からないと思う。

季語に「三日月」でなく「夕月」を使う手もありますが、

誤読を避けるには、月の描写を諦めて、
夕焼けて隠岐の真朱や 波蒼し

とでも書くしかありません。


「島根県・隠岐諸島」




フルポン村上。
長き夜や 絵本の丸き角を拭く


なぜ絵本の角は丸いのか?
なぜ絵本の角を拭くのか?

ちょっと考えさせる内容ですが、
なかなか面白い場面を切り取ってるし、
季語との相性もいいと思います。

けっして悪い出来じゃないけれど、

先生は、
「長き夜」と「絵本」の関係に類想感がある、
…との理由で減点。やや気の毒な気もします。


「ベビーサークル」



森迫永依。
待宵まつよいのジャングル 細切こまぎれのラジオ
待宵のジャングル 瀕死なるラジオ
(添削後)
待宵のジャングル 盗品のラジオ(添削後)

彼女らしいエキゾチックな句材ですね。

これも良い句だと思うけど、
先生は「ジャングルだから電波が弱い」との因果関係を指摘。
そういわれれば、そうだけどね…。

ちなみに、
写真の構図も良いですねェ。
船の上からちゃんと水平に撮れてるし。


「インドネシア・カリマンタン島」



キスマイ千賀。
灯台の周期 星月夜の無辺むへん
灯台の周期 星月夜の深閑
(添削後)

原句は、
前段も後段も、
「光」と「空間の広がり」を描写してて、
似たものどうしの取り合わせ。
ちょっとコントラストに乏しいかも。

添削句のほうは、
前段が視覚情報(灯光の動き&彼方まで照らされる空間の広がり)
後段がおもに聴覚情報(星月夜の静けさ)
…という取り合わせになってます。


「宮古島の星空」



梅沢富美男。
芝居小屋 奈落の闇を虫時雨
芝居果てし奈落の土間や 虫の闇
(添削後)

この句の「奈落」は、
悲劇的状況とか地獄とかではなく、

舞台用語としての床下空間のことなので、
「闇じゃない奈落があったらもってこい!」
…とまでは言えないのだけど、
やはり「奈落」と「闇」の重複感は否めない。

まして「虫時雨」が聞こえるほどだから、
近代的な劇場の床下じゃなく、
粗末な芝居小屋の薄暗い奈落だと想像がつきます。

かたや添削句のほうは、
二句一章にする必然性を感じない。
芝居果てし奈落の土間の虫の闇
芝居果てし奈落の土間に虫時雨

のように書くのが妥当では?


「劇場」



フジモン。
銀杏いちょうの実剥き終へ自由になる十指じっし
銀杏ぎんなんを剥き終へ自由なる十指
(添削後)

原句は中8の字余り。
そして「…になる」は、
現在の描写でなく経緯の説明っぽい。
句材はなかなか面白いけどね。

これは添削のほうが妥当です。


「八百屋さん」



清水アナ。
朝霧や 土の匂いの雲場池くもばいけ
土匂う朝や 霧立つ雲場池
(添削後)

原句も悪くはないけど、
季語の「朝霧」がちょっと「雲場池」に負けてる。
添削句のように書くほうが、
季語の映像が強まって、二物が対等に衝撃し合う。

ただし、
実際に池から匂いがするのなら、
原句のように書くしかない気もするし、
添削句は一種の改作ともいえますが…。

ちなみに、
雲場池は軽井沢にある人造湖。
朝霧の湖面が鏡のように反射して、
これも幻想的で綺麗な写真ですねえ。


「雲場池」



森口瑤子。
方向音痴ぐるぐる ぐるぐる秋思
行く方を失い ぐるぐるぐる秋思
(添削後)

彼女の作風といえば作風だけど、
あまりにオノマトペで奇をてらいすぎでは?

オノマトペだけで8音も費やしてるし、
しかも「ぐるぐるぐるぐる」でひとまとまりなのか、
方向音痴の「ぐるぐる」と秋思の「ぐるぐる」に分かれるのか、
字面だけでは判別がつかない。

添削のほうは「ぐるぐるぐる」でひとまとまりですが、
やや音数合わせの感もあります。


「行き止まり」



立川志らく。
師が逝き ひぐらし号泣しております
しづかなる号泣 ひぐらしに逝きぬ
(添削後)

これまた作風といえば作風だけど、
やたらと「死」を題材にした句が多すぎる。

原句は4・4・10の破調。
涙も出ない自分の代わりに、
蜩が泣いてるようだった…とのこと。

たしかに蜩の鳴き声が、
驚くほど大きく響いて聞こえることはあるけど、
さすがに「号泣」の擬人化は不相応な感がある。

その一方、
号泣とは「大声を上げて泣く」という意味なので、
添削句の「しづかなる号泣」もあからさまな語義矛盾。

ためしに、
声のなき悲悼を蜩が覆う

としてみました。


「夕焼け」



千原ジュニア。
稲穂波 合掌屋根を登りけり
稲穂波 合掌の屋根を登らむ
(添削後)

一句一章なら、
A: 稲穂波(が)合掌屋根を登っている(ようだ)。
二句一章なら、
B: 稲穂波が見えるよ。私は合掌屋根を登っているよ。
という意味になります。

作者は「A」のつもりで詠んだらしいけど、
字面だけでは、どちらの意味なのか判別できない。
比喩(擬人化)としても、ちょっと分かりにくい。

また、最後の切れ字も、
気づきの「けり」の用法とは、ややズレますね。

かたや添削句も、
一句一章か二句一章か判別しがたいので、
語順を逆にして、
合掌の屋根を登らむ稲穂波

とするほうが明瞭になるはずです。


「稲穂と合掌造り」



キスマイ横尾。
外苑はさやか 孤食のカチョエペペ
外苑はさやか 一人のカチョエペペ
(添削後)

中七の「さやか」は「爽やか」の子季語で秋。

下五の「カチョエペペ」は、
チーズと胡椒のシンプルなパスタで、
その店の味を知る基準のメニューだそうです。

作者は「孤食」という語を、
ポジティブな意味で使ったらしいけど、
その意図はちょっと伝わりにくい。


「スカジャン」


▽過去の記事はこちら
https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12



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最終更新日  2024.10.08 05:45:43
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