ブロッケン山への思い
もう20年以上も昔にデンマークからベルギーまで旅したことがある。’メルヘンの旅’というツアーだった。成田を夜10時過ぎに発ち、アンカレッジ経由で出かけた。まだ、ヨーロッパまで直行便が飛んでいないころ、そして、東西ドイツがあったころのはなしである。デンマークではアンデルセンにちなんだ土地を、ドイツではグリム兄弟にちなんだ土地をめぐった。リューベックからはドイツ国内の国境も見にでかけた。西ドイツ国内を旅したときにハルツ地方にはまちなかを走るかわいい機関車があって、かつてそれでブロッケン山にのぼることができた。しかし今そこは東ドイツの中にあり、ブロッケン山の頂上にはKGBのレーダーがあってとても一般人が登ることはできない。という話を聞いた。それから、私はもし東ドイツに自由にいかれるようになったらぜひブロッケン山に登りたいと思い続けた。そして、まさかベルリンの壁がくずれるときがやってきた。若者がつるはしで壁を叩き割っているときに私はハルツ地方のブロッケン山のことを思っていた。同じことを日本人の有名な画家も思っていたようだ。NHKの番組でこの作家はブロッケン山に登って絵を描いていた。かつて、アンデルセンがそうしたように。そして、いよいよ私もこのブロッケン山に登るときがきた。 ヴェルニゲローデを走る機関車