映画 『水のないプール』
『水のないプール』(6/13:フォルツァ総曲輪)昼は地下鉄の駅員、夜は口うるさい女房の相手と、単調で退屈な日々を送る中年男。男はある日、息子が昆虫の標本作りで使う注射器を見てあることを思いついた。大量のクロロホルムを購入、夜、若い女の住む部屋の窓からクロロホルムを吹き込み、女を眠らせることに成功し、性犯罪をくり返すようになるのだが・・・。***********************************************************************現在、フォルツァ総曲輪では、6周年記念として「若松孝二監督特集」を組んでいます。『水のないプール』は1982年公開、内田裕也さん主演の映画で、このあとの上映は6月13日(木)19:30~の1回を残すのみです。当然ですが、基本的には『千年の愉楽』を中心にプログラムが組まれています。『水のないプール』は実在した事件をベースにした物語です。今でもこういう事件はありそうです。いや、今の方が多いかも・・・。でも、実話そのまんまではなさそうで、展開と演出はいかにも映画です。1982年は、まだ東京の地下鉄にも自動改札機がなかったんですね。オープニング、駅員が切符切りのハサミをカチャカチャカチャカチャ鳴らしています。内田裕也さん演じる駅員は、ただただ惰性で生きているかのような感じです。なんか、こういう役が妙に似合うんですよね。でも、それなりに正義感は持っていたようで、ある雨の夜、2人の男に襲われていた若い女性じゅんを助けました。この女性を元ピンクレディーのMIEさん(現:未唯mieさん)が演じています。当時のMIEさん、さすがにカワイイです。いやいや、今も素敵ですけど・・・。で、じゅんが呼ぶところの「駅員のおじさん」はストーカーになってしまうのですが、じゅんは彼に対して好意を持っているので、特に嫌がることもなく、そして彼は・・・。ここから犯罪者と被害者、男と女の複雑な心理が描かれていきます。被害女性は被害女性で、あまりにも犯罪に足して無防備を感じさせるシーンが多く・・・。「地下鉄のおじさん」は明らかに犯罪者ですから、彼に共感することはありません。クロロホルムで相手を眠らせて・・・なんて、はっきり言って卑怯者ですからね。ただ、共感することはないのですが、感情移入してしまっている自分がいるのも確かで、それは「女性側も実は・・・」と思わせるような描き方をしているからかもしれません。でも、これは男のエゴというか都合のいい解釈ですよ。最初の、そして、一番多く被害にあうのは中村れい子さん演じる喫茶店のウェイトレスで、なんと最終的に彼女は・・・。うーむ、そんなことってありますかね。地下鉄のおじさんがじゅんに対して行動できないのは男の純情からで、だからウェイトレスや他の女性を犯した・・・というのは甘えもいいところです。ただ、そういうところにも感情移入できてしまう自分も甘いわけで・・・汗。じゅんのルームメイトの女性もかなり謎めいてまして、出会ったときの行動もそうだし、タイトルになっている「水のないプール」に必ずいます。まぁ、女性は謎の多いほうが魅力的・・・なんていうのも、今の僕には負け惜しみですね。この「水のないプール」をどう解釈するかは、この映画の鑑賞の楽しいところでしょう。僕は「水のないプールじゃ泳げないだろう」をそのまま発展させれば良いかと思ってますが。沢田研二さんや赤塚不二夫さんやタモリさんがちょっとした役で出ています。公開から30年が経っていますが、なんだかんだで、今観ても斬新な作品です。この先映画館で鑑賞できる日はやってこないかもしれないだけに、この機会に是非!ある程度は話を知っていたので、ジンジャエールを飲みながら鑑賞しました。作品中で飲まれていたものとは銘柄が違います。正直、僕には少し辛かったなぁ・・・汗。