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カテゴリ:読書、映画、テレビなどのこと
好きな青春映画は?と聞かれたら迷わず「祭りの準備」と答えることにしている。青春映画にも色々あろうかと思うが、やっぱりこういう時期というのは、自分でも言葉に出来ない鬱屈したエネルギー、言葉に出来ないような欲望、そういうものがどろどろと自分の中でマグマのように渦巻いている、そういう時期だと思っているので、あたり一辺倒の淡い恋愛映画のようなものはあまり推したくない。
先日DVDで見た映画も、同じようにこの時期の鬱屈したエネルギーを凄まじいまでに描ききっており、自分の中では「祭りの準備」と肩を並べる映画だった。 この映画に出会ったのは偶然だ。浅川マキさんの歌う「グッバイ」と言う曲はジャズピアニストの板橋文夫の作品だが、板橋の「渡良瀬」と言うアルバムを聴き、更に他の板橋作品をアマゾンで検索していたときに見つけた映画だった。 十九歳の地図 この映画の音楽を板橋が担当していて、ラストにこのグッバイが流れると言う。 これは見るしかないではないか。 更に他にも偶然が。 このDVD単独でもあったけど、監督の柳町光男のボックスセットで買った。 同時に収録されている映画の1つがこれ。 さらば愛しき大地。 シャブに身を持ち崩して落ちていく男(根津甚八)と、それを何とか支えようとする女(秋吉久美子)の愛憎をリアルに描いた作品だ。 その昔、ツアーの合間に偶然入った映画館で見て感動して勇造さんが同じタイトルの歌を作ったと言う映画だ。 以前、テレビの深夜劇場で見たけど、夏の暑い日一面緑の田んぼに風が吹き稲穂が揺れて熱風が舞い上がる。それが凄まじい人間の噴出する業を描いているようでその映像だけでどきっとしたのを覚えている。 そしてもう一つはこれ。 ゴッド・スピード・ユー/ブラックエンペラー これは実在したブラックエンペラーと言う暴走族に密着して彼らの(歪んだ?)青春を撮影したドキュメントである。 この映画は未見だが、以前読んだ映画を作る人たちを主人公にした漫画「夢工場」(原作:山崎十三、絵:弘兼憲治)と言うのがあって、これも好きな漫画だったけど、内部から人材を発掘しない業界に見切りをつけて自分でカメラ一本担いで暴走族に密着して撮影したドキュメントでデビューした助監督と言うのが登場していて、ああこれは柳町光男のこの映画を参考にしたのだなと今分かった次第。 もとの「十九歳の地図」に戻るが、主人公の青年は19歳の予備校生。 新聞店に住み込みながら新聞配達をして予備校へ通い大学への入学を夢見ているが、実際には生活していくのに精一杯でなかなか予備校へは行けていない。 新聞店はいろんな人間の吹きだまり。 青年はシニカルな目で同僚を見ながら、俺はお前達とは違うとつぶやく。 青年はあらゆる物を憎む。自分が配達してる町の地図を書き、そこに得意先を書き入れる。気に入らないことがあるとそこの家に×印を付けていく。 電話帳で電話番号を調べて、×が溜まってきた家に電話をして脅迫、暴言を吐く。青年の暴言は次第にエスカレートしていき・・最後は・・。 まあ、後はお楽しみと言うことで。 原作は中上健次、これは彼の紀州3部作の処女作であり、代表作とも言える短編だ。同じ19歳の頃に出会ったら良かったろうな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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