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カテゴリ:日々の診療の狭間で
丁度別のテーマで日記を書こうと思っていたら、携帯が鳴った。
「もう脈が止まりました」と患者さんの家族からの電話だった。 3ヶ月前、黄疸で受診した患者さん。 その日の超音波検査で、胆嚢上皮癌だろうと診断して大きな病院を紹介。 向こうの診断もそうだったけど、かなり進行していて特に有効な治療法は無いとのこと。 一応入院を勧められたけど、自分は元気だからと入院を断って帰ったそうだ。 その後、黄色い顔をしながらも元気で毎日自転車で走り回り、モーニングを食べて過ごしていた。2週間ほど前から元気が無くなり食欲が落ち、この1週間はずっと自宅で寝たきり。当院の依頼で訪問看護婦さんが点滴をしに通ってくれていた。 この3日ぐらいは意識が落ちて昏睡状態。昨日からおしっこが出なくなり・・。 幸いなことに特に痛みを訴えることもなく、最後は意識が落ちて家族親せきに看取られながら安らかに亡くなった。 日曜日。家族親せきも仕事がお休みで、夜の11時過ぎ、主治医も含めてみんなが起きてる時間に。 最後まで気を遣ってくれたのかな? 死ぬことは簡単ではない。 誰もがこんな風に死ねる訳ではない。 患者が死ぬ場合、医者は無力感にとらわれると言うけども、僕はそんな事は感じない。 人はいつか必ず死ぬし、病気は治るものばかりではない。 本人が死ぬ運命にあるとき、そこに少しだけ、邪魔しない程度に関わるのも医者のつとめだと思うから。 不遜な言い方かも知れないけれど、淋しさと共にひとつ仕事をやり終えた充実感のようなものもある。 そんな事を思いながらグラスを傾ける夜。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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