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カテゴリ:日々の診療の狭間で
大学病院のような主に慢性疾患を扱う大きな病院と、市民病院、県立病院、日赤病院のような市中急性期病院では自ずから扱う疾患が少し違う。
そして僕らのような市中の無床診療所はもちろん市中病院と関連が深い。 大学で居る時には、風邪やインフルエンザの患者は診たことがなかったけど、こちらでは嫌になるほど目にすることが出来る。 そういう病気ほどではないが心筋梗塞もそのひとつだ。 大学のような救急をやってない、しかも小回りの効かない病院には滅多にそういう患者さんは来ない。まして僕は呼吸器が専門だったからなおさらだ。 卒業して市中病院に勤務した頃にパラパラと診るようになったが、一番沢山この病気に遭遇したのは開業してからだ。もちろんうちで治療が完結する訳でなく、診断則転院の為の搬送と言うことになる訳だが、途中で心停止したりすることなく無事に送り届けた時には何か一仕事をやりとげた気になる。 先週の土曜日、日曜日と立て続けに2例の心筋梗塞を搬送した。 土曜日は大忙しの日で、まだその患者さんの前には20人近く待っている人が居たけれど、何か様子が悪そうだと言うので先に処置室へ連れ込んで、看護婦が心電図をとったらビンゴだった。 救急隊に連絡して中央病院へ搬送、運良くすぐに来たタクシーに乗って帰り、残っていた患者さんの診察、胃カメラなど昼まで休み無く仕事。救急の先生から、無事に血管造影をしてステントを入れて詰まった血管が再開通しましたと聞いた時には嬉しかった。 と、以上は前振りでこれからが本題なのだが。 仕事が落ち着いた頃、看護婦がポツリと言う。 「先生、枕がありません」 処置室で患者さんの頭の下にあった枕が、そのまま救急車に乗って行き、向こうの病院に置き去りにされて来たらしい。体の下にあったバスタオルは戻ってきたのだが、枕の方は忘れ去られたみたいだ。バスタオルを返しに来た家族の方が向こうの病院に連絡して探してみると言ってくれたが、病院の処置室で使うような枕はどれも同じ形と言うか同じ医療メーカーの事が多いし、返ってこないかも知れないな。 で、翌日の日曜日の朝も心筋梗塞が来たのである。流行っとんのか??と思わず叫びそうになった。2人とも当院へは初めての患者さんで、何でかかりつけに行かないのか不思議だったりするのだが。 で、今回も同じように救急車を呼んで中央病院へ搬送したのだが、帰ってくる時には絶対に枕を忘れてはなんねえ・・と、しっかり枕を抱いて出てきたのだった。 道行く人は、半袖の白衣を着てショルダーバックを肩にかけ、聴診器を首に回して片手に枕を持った医者がタクシーを拾おうと待ってるの見て訝しがっていた。 土曜日と違ってなかなかタクシーは拾えず、やっと来たタクシーに乗って帰ってきて診療しようとすると看護婦がぽつんと言う。 「先生、枕は??」 「ん?そう言えば確かに持っていたのに・・」 なんとタクシーの中に枕を置き忘れて来たのであった。 まあ、幸い乗ったタクシー会社を覚えていたので会社へ連絡して、まあ付近に居た運転手さんが持ってきて蔵のだ。 これにて一件落着。 教訓。 患者さんを搬送する際には枕は置いていきましょう。 もし枕を持っていったときには忘れずに持って帰りましょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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