|
カテゴリ:日々の診療の狭間で
当院の診察は9時からだが、在宅診療の方の往診は、朝の診療前に僕が一人で行く事が多い。
土曜日は毎週2人を往診。 一人は、四肢麻痺で寝たきりの女性、ご主人が看病している。 もう一人は、一人暮らしの80才後半の婆さん。 特にどこがうんと悪いと言うのではないが、もともとそんなに丈夫な人でなく、2年前の夏に夏ばてになって寝たきりになり、それは回復したけれど、病院まで歩いて来るのはしんどいと言うので往診に行くようになった。 普段はヘルパーさんに助けられて生活をしてる。 まあ、そんなに重篤な病状では無いし、頭もそんなに惚けては居ないので、往診に行くと診察して、世間話をして帰ってくる事が多い。 静岡にいる息子さんがお茶を送ってくると言い、毎回お茶を入れてくれる。彼女もお茶を入れるのを楽しみにしている。 なにやら、かれやら、色々講釈を一人で言いながら、いくつかの湯飲みにお湯を入れ、それをあちこち移し替えて温度調節をしながらお茶を入れてくれるのである。 それがなかなかに美味い。 自分でお茶を入れると、ティーバッグのお茶に熱湯を入れて、口を付けられないぐらい熱いお茶を作って、ふうふうして飲むと言う感じだが、婆さんの入れてくれたお茶は、ふうふうせずとも飲めるぐらい温度が冷えていて、それでもしっかり味が出ていて、濃いんだけど甘かったりするのだ。 もちろん、お茶の種類もあるとは思うのだが。 今日はその上に柏餅が付いていた。 げ・・朝からこれを喰えと言うのか・・と思ったけど、せっかくの行為なので頂く。 炭水化物を制限している身には美味いのだ、これが。 これは正式の餅米じゃないのよね、お団子なのよ、上新粉なのよ・・なんて婆さんブツブツ言いながら、僕が食べるのを見ている。 餅米が上新粉だったらどうなのよって思うけど、そういうい事を言い出すと話しが長くなるので余分な事は聞かない。 後は、静岡の息子さんの話などして、いずれ向こうへ行くなら、今のまだ少し元気のあるうちに行った方がいいよ、なんてそんなアドバイスをする。 まあ、往診と言っても、息子さんの代わりに話しをしてお茶を飲んであげているようなものだ。 今朝はPTAの会に行くので、いつもより早めにちょっと退散。 玄関で婆さんが思い出したように言う。 「あ・・先生、今日はまだ診察して貰ってなかった・・」 ぎょ・・話しとお茶に夢中となって本文を忘れていた。 まあ元気だしいいじゃん。 「大丈夫、来週の楽しみにしとって・・・」 「ほな、待っとうじょ~~(じょは、断定の意味を表す阿波弁の助詞)」 そんな風に土曜日の朝は過ぎていく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[日々の診療の狭間で] カテゴリの最新記事
|
|