だって、主夫だから
水曜日の朝は朝食を作る当番の日だ。そういう訳で、前の日の夜に5時50分に携帯のアラームをしかけて寝る。ついでに言えば、僕は今カズの部屋で1人で寝ている。僕のシモンズベッドがカズに取られてしまったからだ。正確に言うと、カズは僕のシモンズを物置にして、自分は配偶者のベッドと僕のベッドの間の隙間に布団を敷いて寝ている。まあ、1人で寝ると言うのは気楽なもので、配偶者やカズの鼾を聞かなくていいし、僕が夜中に寝に行って、「あんた昨日は夜遅くまで起きていたわねえ」なんて言われる事も無いので気が楽だ。そんな訳で、今日も携帯のアラームの音楽で目が覚めた。なんだかかったるい。外はまだいつもと同じく薄暗い。しかし起きねばならない。だって、主夫だから。リビングの電灯を付け、エアコンと床暖のスイッチを入れ、キッチンの灯りを付ける。食器洗い機から昨晩の洗い物を出して片付けて、今日の炊事の始まりだ。普段の我が家はみそ汁、ご飯、納豆と言う正しい日本の朝食である。まあ、僕は最近炭水化物を控えているので、みそ汁だけなんだけど。まあ、それは今回はスルー。で、今日は食卓の上にスティックパンが置いてあるのに気づいた。今日はこれを使って洋風の朝食にしよう。そう言えば、昨日の夜に茹でたブロッコリが残ってるし、ベーコンエッグ作ってブロッコリとトマトを添えて、カップスープでも付けたら立派な朝食になる。なんかかったるい日だから、こんな手抜きの朝食でも許してもらえるだろう。だって、主夫だから。そんな理論武装をして、フライパンでベーコンエッグを作る。卵を冷蔵庫から出そうとして床の上に落として床の上に生の目玉焼きを作る。いくら床暖房でもこのまま放置して目玉焼きになるとは思えない。う・・・迷った末にフライ返しとお皿で見事にすくってレスキュー。この卵は誰に行くのかロシアンルーレットみたいなものだ。そんな風にしてベーコンエッグは完成し、お皿にブロッコリとトマトを載せて朝食は完成。見事なものである。だって主夫だから。そろそろみんなが起きて来る頃だ・・と思っても誰も起きて来ない。遅いやんか、もう7時半になるで・・と思ってリビングの掛け時計を見た。「4時半だった」多分時計の電池が切れて止まってるのだろうと思って携帯の画面を確認した。「やっぱり4時半だった」体から力が抜けて行くのがわかる。なんでや?携帯を見て気がついた。まだアラームはかかったままである。おかしい・・と思って気がついた。自分がアラームと思い込んだのは、夜中に着信したジャンクメールの音だったのである。僕のアラームはRCサクセションの「スローバラード」を着メロ(着うたではない)にしている。で、メール着信音は桑名正博の「月のあかり」なのである。う・・似てないけど、似ているとも言える(苦しいけど)。朝食当番じゃない時には、音は消してるので気づかないけど、夜中には結構着信メールが来る事がある、来ない時にはしばらく来ないけど、来る時は集中して来るのだ。最近来ないから油断していた・・。昨夜1時過ぎに寝て、朝の4時に起きたのだから、そりゃあかったるいはずだわ。でも、それでもグダグダせずに起きて、ちゃんと始動しているところが偉いでしょ。だって、主夫だから。家族を起こさないで良かったわ。配偶者に殴られたかも知れないし、惚けたと思われるかも知れない。暖かい食卓には誰もいない。仕方ないので、そのまままた寝室に入って寝ようとした。必死で起きた後だけに眠れないのである。目がぎんぎんなのだ。そのままリビングのお掃除でもしようかと思ったけど、さすがにそこまでしたら廃人になると思って止めた。しかし、いつしか眠ってしまったようだ。家族の食事をする音で目が覚めた。寝室の戸を開けて(カズの部屋はリビングの隣りの和室を改造した部屋なのだ)外へ出ると、カズが大きな声で言う。「父ちゃん、起きるん遅いで、みなもうご飯終わりかけてるわ~」お前なあ、そのご飯がどうやって並んでいたか疑問に思わんのかい?まあ、いいの。こういう事も時にはあるさ。主夫だから。