腐敗惑星のアリス■第2回■レムリアという「宇宙の記憶を任務づけられた端子」の回収へ未知の生命体、回収使ゲノンが腐敗惑星へ向う。腐敗惑星の上では、一角獣が、禁断の実の発生を感じていた。
AF腐敗惑星のアリスー宇宙連邦の監視機構の元で封印されている惑星がある。その腐敗惑星内で新生命トリニティが蘇生し、世界の秩序を変える動きが始まるこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n6825dd/2/幻想イラストはTHESEIJI(今西精二)作品集からお借りしました。http://www.yamada-kikaku.com/artists/52-seiji-imanishi.html腐敗惑星のアリス■第2回■レムリアという「宇宙の記憶を任務づけられた端子」の回収へ未知の生命体、回収使ゲノンが腐敗惑星へ向う。腐敗惑星の上では、一角獣が、禁断の実の発生を感じていた。 腐敗惑星のアリスー第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 腐敗惑星(2)未知の生命体《回収使ゲノン》 ■遠い旅だった。回収使かいしゅうしの彼は思った。やっと恋人に会えるのだ。が、その恋人はもう過去のことは忘れている。 なぜあの星に飛来してきたのか。 そんなことすらも、ひょっとして昔の恋人である回収使「ゲノン」のひとすら覚えていないのでは。 ゲノンはぞくっと身震いした。 そんなことはありえないはずだ。 我々の種族は、記憶をよりどころに生きている種族なのだ。それゆえに、回収子「ゲノン」の役割は大変なのだ。 このあたりの「宇宙の記憶を任務づけられた端子」である、コードネーム“レムリア”が、連絡をしてこないばかりか。どうやらレムリアは、形態変化を起こしたらしい。 そういう報告が、「ノド」のドームに連絡が入ってきていたのだ。急遽、回収使が派遣されることになった。それがゲノンだった。 ■《回収使ゲノン》の思い 「何という汚らしい星だ」 それがゲノンが腐敗惑星を見た印象だった。 人間型ヒューマノイド肌色か、人間体の血色、その肉色、どすぐろく腐った色が地表の上で、ぐるぐるまわって移動していた。 まるで惑星自体が生物で、腐った肉の海がたゆとうているようだった。 臭い感覚はゲノンにはなかったが、もしゲノンにそれがあるとしたなら、嘔吐していたろう。それほど遠くから見ても、感覚的におぞましい星だった。 (本当にレムリアは、まだこの星で生き残っているのか)絶望がゲノンの心を占めた。 ■(2)腐敗惑星の上 そのとき、腐敗惑星の上で、一角獣は、長い時間、舞おうと思った。 一角獣はその舞踊行為が、償いにあるかもしれないと思ったからだ。その舞踊行為以外に感情を表す方法がなかつた。 彼、一角獣は涙も、でないのだ。 はぎ取られてしまった人間としての感情。心の動きは決して戻ることはないだろう。 一角獣の筋肉がはためく。 血流が彼の体を巡る、波打つ。充分な酸素が必要だつた。(くそ、この星腐敗惑星はあまりに寂しい)彼の感情が爆発する。 彼の体を充分に動かすにたるだけの酸素がなきに等しい。 一角獣は、昔の元とうりの自分(他の生命体)の姿を思い起こそうとする。が、残念。記憶がないのだ。 誰かに、はぎ取られた、そんな気がした。 『僕は一体何者だったのだろう。今の僕は一角獣だ。悲しさを紛らわせるために踊るんだ、一角獣にすぎない事を忘れようとして。それもこの放棄された星の上でただ一匹だけだ。なぜなんだ。寂しいよう』 彼は興奮していた。顔を何かが濡らしている。 『何、これ、生暖かい。いやだ。血だよ』 そう、いましがた、彼の鋭い角が、屠った相手の血だった、、事にきづく。 『そうか、僕の踊りは死の舞踊だったんだ。任務はこの呪われた星の腐った生物を殺戮することだ』 彼は急に自分の任務にきずく。 『でも、一体だれが僕にこの役割を』いっそう疑問が深まる。 腐敗惑星の肉は、一角獣の足まで及んでいた。少し動くと足がずぶっと沈んだ。目の前で爆発が起こる。 何やら、分からぬ生物の内蔵が膨れ上がり破裂したようだった。臭気が立ちのぼり地平線は真っすぐには見えない。歪んで見えた。 彼の頭の中に、急にイメージが広がっていた。 記憶がもどったのか。それとも。 (禁断の実を発見し、彼女がそれを食べたなら、そう、王が発生するかもしれん) 『一体、何だ、このイメージは。禁断の実だって、それに、彼女だって。何なの』 この意識の流れは。彼は一層激しく体を動かす。目の前の腐敗物へ体ごと、身をぶつけるユニコーン一角獣だった。 (続く)20210830改定腐敗惑星のアリス(トリニテイ・イン・腐敗惑星・1975年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#腐敗惑星のアリス