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カテゴリ:妄想日記
さて昨日はお休み。 お盆に帰れなかったので、一昨日の夜から実家に戻っておりました。 (一昨日、お店を閉めたあとに実家に戻ったんですよ。) イマイチ風邪もよくない感じなので、実家でのんびり過ごして参りましたよ。 そして私は、遅くならないように実家を出て・・・ 一人暮らしの部屋に戻ることに致しました。 部屋の掃除もしたかったし・・・出張前ですので色々やることが多いので。 平日の午後3時半。 駅は人がまばらです。 しばらく飲んでいる風邪薬のせいでしょうか。 何だか、頭もぼ~~っとして眠いのです。 「電車に乗り込んだら寝てやろう。」 電車で読もうと持っていた本をホームで開いても・・・ 目が活字を追うばかりでちいっとも頭に入って来ないのにイラつき・・・ 密かにそう決心致しました。 数分後・・・電車がやってきました。 案の定・・・ガラガラ。 曇天の為、陽の光が恋しかったのか・・・ いつもは陽の当たらない場所に腰を下ろすのに・・・ 昨日は、窓からの陽の光が指し示すように照らしているシートに腰を下ろしました。 座席に座ったとたんに・・・何だか頭に靄がかかったように・・・ 気だるく心地よいような眠気に襲われます。 『降りるまでには40分はかかる。ちょっと眠ろう。』 そう思ったとき・・・ガタン・・・と車体が大きく揺れた気がしました。 すると・・・ 「どちらまでいかっしゃる?」と誰かが私に声をかけます。 チラリとワキを見ると・・・ 何だか・・・薄汚れた服を着て・・・顔の浅黒い浮浪者のようなじいさんが一人。 人の良さそうな顔でニコニコと私を見ています。 私はね。 よく・・・電車で老人に声を掛けられます。 何故か知りませんが・・・よく声を掛けられるのです。 (若い男子には声を掛けられたことがございませぬ。全て老人なのが悲しいところ。) 『・・・眠いのに・・・』 そうは思いましたが・・・無視するわけにも行かず・・・ 「○○駅まで乗ります。 お盆に帰られなかったので、実家にもどってその帰りなのですよ。」と言うと・・・ じいさんは「うんうん」という風に満足げに頷いて・・・ 「学生さんか?」と更に訊ねて参りました。 ・・・。 「はい・・・。」大嘘をつくジャスミン。。。 まあ・・・罪は無いでしょう?笑。 じいさんはまた・・・一人で何やらつぶやいておりました。 『ちょっとぼけているのかも』 そう思っているとまた眠気。 頭の中が徐々に白濁していくのが心地良いのです。 ウトウトとし始めると・・・また・・・何か低い音が聞こえます。 さきほどのじいさんが、また思い出したように喋りはじめたのです。 今度は先ほどよりも若干大きな声でした。 「・・・・俺は~今から月に行く。」とじいさん。 月? 「月ですか。」ジャスミンは何となく繰り返します。 月か・・・。 「そう。月に行く。」じいさんを横目で見ると・・・真剣な顔です。 「月は・・・遠いでしょう?」 きっと遠いはずです。 行ったことはないけれど。 じいさんは、また『うん うん』としんみりと頷くと・・・ 「遠い。この電車で5時間はかかる。」と教えてくれました。 「5時間ですか・・・。それは遠いですね。」 電車に5時間乗るというのは結構遠い。 「今まで行かれたことがあるのですか?」とジャスミンが訊ねると・・・ 「いや。今日が初めてだ。 しかし、先輩の○○さんは行ったことがある。」じいさんは声を若干潜めてそう言いました。 「・・・。月に行くのに・・・空気はどうしますか?」 そうだよ。 空気はどうするのだ。 するとじいさん。更に声を潜めると・・・ 「この中に入っているのだ。」と・・・ 自らの傍らに置いたそれはそれは汚らしいミドリ色のリュックサックを指さしました。 ナルホド。 「だったら、大丈夫ですね~。」 空気さえあれば・・・何とかなるでしょう。 そう答えながらも・・・頭は白濁していくばかり。 しかし・・・じいさんは話を止める気配は無いのです。 そこで、私は気になった質問を投げかけてみました。 「月には何をしに行かれるのですか?」 そうです。 何をしに・・・。 「きりんです。きりんに会いに行くとです。」 じいさんは楽しそうにそう言います。 「きりん・・・。月といえば兎かと思っておりましたが・・・。」と言うジャスミンに・・・ じいさんは『これだから素人はいかん』という顔をして教えてくれました。 「月の名物はきりんなのだ。」と。 きりんか~。 月の名物はきりんなのだそうです。 確かに・・・キリンのあの幸せそうな黄色の背中は・・・ お月様の色のように見えないでもない。 そうか。 ジャスミンは認識を新たに致しました。 月には兎が居ると思ったら大間違いなのです。 「先に戦友の○○くんが着いているはずなのだが・・・ もう何十年も会っていないから会えるかどうか。月はああ見えて広いからね。」 じいさんは本当に心細い顔をしてそうつぶやきました、 「目印。目印はないのですか?」 そう。目印を持っていれば・・・会える。 眠気と戦いながらジャスミンがぼんやりした頭でそう訊ねると・・・ じいさんは【空気】の入っているらしい汚らしいリュックサックから・・・ これまた煤けたような懐中電灯を取り出し・・・ 「これをピカピカさせるのが目印だ。」と言いました。 しかし・・・何度かスイッチをONにしましたが・・・ 古びたそれは到底光ることを致しませんでした。 何だかしょんぼりしてしまったじいさんに・・・ 「でもきっと会えますよ。 月は思ったよりも小さいかもしれません。 行ってみないと解らないじゃないですか。」というと・・・ じいさんは『そうだな』という風に満足げに頷きました。 そうです。 兎がいると思っていた月には・・・きりんが居るくらいなのです。 思ったより大きいと思っていた月が・・・思ったより小さいことだってあるのです。 何だか屁理屈のようなことをブツブツとつぶやいているうちに・・・ 電車は私が降りるべき駅に到着してしまいました。 酸欠で働かない・・・ 海水で一杯になってしまったような・・・ そんなぼ~~~っとした頭を抱えながら・・・私は電車を降りました。 降りる直前に、じいさんは私に軽く片手を挙げました。 私は、じいさんに笑いかけ・・・ じいさんの持っている【空気】の入っている小汚いミドリ色のリュックを最後に一別して電車を降りたのでした。 あの特急電車が月まで行ったかどうか。 私は途中で降りてしまったので知るよしもございません。 でも、何にしろ・・・私は空気を持って来ていなかったからなぁ。 月に行くのは無理でしたけど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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