須佐之男命3
命をつけねらう兄弟たちの手をのがれて長い船旅にでた大国主命はやがて、祖先ー須佐之男の命の住むという黄泉の国へこぎわたりました。大国主命が須佐之男の館に行きつくと、一人娘の須勢理姫(スセリヒメ)が現れました。二人は一目で恋に落ちます。しかし、父である須佐之男はそう簡単に二人を許すはずがありません。大国主命に数々の無理難題を突き付けます。大国主命はスセリヒメの助けを得てその難問をこなしていきます。そして最後に須佐之男命が寝ている間に須佐之男の髪を天井のたる木に結びつけて、須佐之男の宝である、太刀、弓、琴などを携えてスセリヒメを背負って逃げだしました。須佐之男は髪をほどき終え二人を追いましたが時遅し。そして、大声で叫ぶのです。「お前が奪った太刀と弓矢で兄弟たちを追っ払い、そして国の神になり屋敷を築き、わしの娘を幸せにしてやってくれ。」と。間もなく、大国主命は出雲の国へ帰ると須佐之男の言葉通り、兄弟たちを追放して末長く国をおさめたのでした。|☆。・:*:・゚'★,。・:*:・'。・:*:・゚'★,。・:*:・゚'☆|☆。・:*:・゚'★,。・:*:・'。・:*:・゚'★,。・:*:・゚'☆無頼の限りを尽くして人生を送ってきた勇者、須佐之男もすでに年老い一人娘に身の回りの世話をしてもらう孤独の生活です。しかし、突然現れた若者に心惹かれる娘をどのような気持で見ていたのでしょうか。大国主命に嫉妬しただけではなく、老後の孤独を考えると絶望的なまでの恐れもあったのかもしれません。一方で、彼が与えた試練を次々とたくましく乗り切っていく大国主命の姿に若かりし日の自分が重なっていったのかもしれません。若く、眩しく、いとおしくさえ思ったのかも知れません。とはいえ、その感情は自分でも簡単にコントロールすることが出来ないくらい複雑なものだったのかもしれません。しかし、最後には次の時代を、そして娘を託せるに足るものを大国主命の中に見出したのかもしれませんね。須佐之男のテストに合格しその宝を強奪していくことでその、須佐之男の血統はより強く太い絆で結ばれていったのかもしれませんね。なんだか、ライオンの親が子供を谷に突き落とす父親の厳しい愛の形と同じようなものを感じました。闘って勝つ者、譲って未来を託す者、逞しい二人の英雄の中に学ぶべきものが見え隠れしていますね。私たち優しい親たちは子供たちに本当の愛を伝えきれているのでしょうか。ちょっと考えさせられてしまうエピソードですね。