今日は、キッチンに立ちながら、久しぶりにジャズ・ヴァイオリンを聴いていました。
ステファン・グラッペリは、ジャズ・ヴァイオリン界の巨匠。残念ながら、1997年に鬼籍に入って
しまいました。
現在、日本では、中西俊博氏や寺井尚子さんが、彼の流れを汲んでいるといえるでしょう。
初めて彼の名を知ったのは、映画「五月のミル」。この映画の音楽を担当していたのです。
フランスの田舎の風景の美しさもさることながら、ノスタルジックで、あたたかい彼の音色に
魅せられ、オリジナル・サウンドトラックを買ったのは、もう10数年前。
テレビ朝日のニュース・ステーションにゲスト出演したのを拝見したことも、今となっては大切な
思い出となりました。当時、着任間もない坪井真一アナウンサーが、グラッペリ氏の前で、有名な
ゴセックの「ガボット」の冒頭部分をヴァイオリンで演奏し、グラッペリ氏は「素晴らしい!」と賞賛、
坪井さんも、笑いを取りながらも、ヴァイオリンが弾けるという意外性を見せてくれたのが楽しく、
また印象的なエピソードでした。
今日聴いたのは、前述の「五月のミル」のCDの他に、ヨーヨー・マとのスタンダードナンバーの
デュオCD、そして、古澤巌氏とのデュオCDの3枚。
図らずも、今やクラシック界を背負って立つふたりとの共演のCDを後世に残してくれたことが
何よりも興味深く、音楽に境界線はないのだと、あらためて思うのです。
グラッペリ氏の即興に、優しく寄り添うように響く、マ氏のチェロ。
今にして思えば、最晩年となったグラッペリ氏をいたわるようなセッションで応える古澤氏。
彼らは巨匠から、多くのことを学んだことでしょう。形のない音楽の世界の、形のない財産として。
そして、わたくし達は、彼らの演奏から、それを感じ取るのでございます。
今は廃盤となってしまった「五月のミル」のサントラ
「どこのお兄さん?」と思ってしまう若いマ氏 何を語らうのか、古澤氏とグラッペリ氏
コール・ポーターのスタンダードナンバーを心地よく聴かせてくれるマ氏とのCDは、特にお勧めで
ございます。