Black Soul 第9章前編
第9章 せまる決戦 前編『悪魔の力』を持つQはレースを申し込まれれば逃げることはできないらしい。サイバーが戦いを挑むと、テルドムは意外なほど素直に了承した。サイバー(ここで俺がコイツを倒せば『悪魔の力』は消える。)提案したコースはノイズシティ2周。町の一番外側の道路を回るのだが、これを提案したのはテルドムである。十分に広く長い直線と直角のコーナー。『悪魔の力』を存分に使えるコースということだろう。サイバーにも初めからわかっていたことだったが、スタートダッシュ、その後の直線ではテルドムがどんどん前にいくばかり。直角コーナーを最低限の減速で潜り抜けたところで、縮まる車間はわずか。テルドムがレーサーではないにしろ、理屈ではどうにもならないパーツ差、そして、サイバーにはスプラッシュハイウェイのレースでの手負いもあった。サイバー「思った以上に加速が伸びないな。追いつくことができないんじゃあどうしようもねえ、奥の手を使うか・・・。」そう呟いて、彼は前回の戦いで損傷したマシンの足元をカチャカチャいじっていた。次のコーナーを慎重に曲がると、ちょうどその奥のコーナーに差し掛かっていたテルドムの通る軌道がサイバーの視線の奥に重なった。ギラリと白銀のヘッドライトが照らしつけると、なんとサイバーのタイヤが外れた。サイバー「喰らえ!」どうやったのかは知らないが、サイバーから放たれたタイヤは本人を遥かに先行し、テルドムのコーナリングの最中、わき腹めがけて飛び込んでいくのであった。テルドム「なに・・・!」独走態勢に入って警戒が薄れていたテルドムにこの一撃をかわすことは到底叶わず、大きくコース外れるのと時を同じくして、サイバーは残された三つのタイヤで見事に三輪ドリフトを決めていた。サイバー「元々損傷しててバランス悪かったからな。攻撃に使わせてもらったぜ。てめえみたいなにわかレーサーの相手はタイヤ3つで十分だ。」コースは、残り1周。このまま逃げ切ることがサイバーの勝利の条件となる。しかし、それは簡単なことではない。左の前輪を失ったことは左前に荷重をかけることになる右コーナーで大きなハンデとなる。幸い、コースはノイズシティを反時計回りで周っているので、それほど右コーナーは多くないのだが、三輪で戦うこと自体、未体験の領域である。迂闊なコーナリングはできない。それが響いたか、半周ほどでテルドムはサイバーのすぐ真後ろについていた。サイバー(追いつかれたか。だが、逃げ切るのと違って、追い抜きはブロックでなんとかなる。さてテルドム、どうするんだ?)グリップ、ドリフト。まっすぐの直線加速すらままならない状態で、サイバーは2つのコーナリングを使いこなした。そして、テルドムがサイバーのブロックに体当たりを挑んできても、うまく攻撃の衝撃を逃がすようにぶつけさせ、体制を崩されなかった。残りのコーナーは2つ。テルドムにも、焦りが見え始める頃だろう。それを見ようと一瞬見たバックミラー。しかし、どういうわけか、そこにテルドムの姿がない。最後のブロックを決めてフィニッシュを描いていたサイバーのステアリング操作が一時停止する。消極的に減速を開始する。とっさのブロックができるよう、ここで減速して安定を取り戻すことは普通なら正解であるはずだった・・・。だが、やつは普通とは違っていた。サイバー「・・・・・上か・・・!」漆黒の翼が銀翼に影を落とす。減速してしまったサイバーに、ゴールまでに勝負をひっくり返す手立てはもうなかった。まだ、第9章はこれしか書いてないんですが、公開しちゃいます。週末一回くらい更新しときたいし・・・。サイバーVSテルドム。タイヤ飛ばしという荒業を組み込み、最後は『悪魔の力』による飛行でテルドムがブロックをかわすという、あんまりレースっぽくない展開。ちなみに、『どうやったかは知らないが』と書いてあるタイヤ飛ばしはゴチャゴチャしてるのでそう書きましたが、これは低速コーナーで行っており、タイヤが発射されたというより、テルドムもサイバーも減速しているため、速いスピードで外れたタイヤは一人速度を保ったまま突っ込んでいったという描写でして。ややこしくなるので書きませんでしたが。「レースで悪魔の羽使っていいんだったら最初から使えよ」という突っ込みも飛んできそうですが、悪魔の羽の飛行速度は低く、地上を走った方が速いわけで。最後は、サイバーが減速しなければおそらく抜けなかったでしょう。