春<22>
おとぎ話 ”春”posted by (C)maryam f d posted by (C)maryam f dお友達の すぅーちゃん が 春 をイメージして描いてくださいました。<(_ _)> とても嬉しゅう御座います♥おとぎ話”春”<1>は こちら からどうぞ春<22>お雪の婚礼の日取りが明確になった半年前から、彼女の家の者は各々、婚礼準備のための仕事や雑用が、山という程積み重なっていたのだった。冬の間も、すこしずつ準備は整えられていたが、季節が春に近づくにつれて、お雪の家の者たちにとっては、朝と晩は交互に飛ぶように過ぎて行くように感じられ、お雪がこれまで、家族の中で分担されていた仕事が滞りがちになっていき、お雪以外の者の仕事も手薄に、おろそかになっていたのだった。お雪とお春の家の家計の具合には、かなりの隔たりはあったが、二人は幼い頃から、気があってよく遊ぶ仲だった。そして春が、幼くして母のお初を失ってからは、雪がこの不憫な友を家に連れて来るたびに、雪の両親は家族と同じ食卓で春を囲んで、食事を摂らせていたのだった。雪がさまざまな準備のために大変忙しくなっていった頃から、春は、彼女の弟や妹たちの世話や、雪がこれまで担っていた家の仕事などを、手伝うようになっていたのだった。春は幼い頃から父に読み書きを習っており、数え年十五となった今では、それがそこそこ身についてきていたので、そして気立てが良く、素直なお春には、お雪の祖母や母も全幅の信頼を置いていたので、身体の踏ん張りは効かないけれど、臨時の使用人には任せられないような仕事、言伝てやお遣いを、春に頼むことが多くなったのだった。春はその報酬を目当てに手伝っていたわけではなく、非力な己が雪の婚礼のために、雑用であってもしてあげられることが嬉しかったのだが、それでも、事あるごとに、雪の母から、農作物や、衣類や雑貨などのお下がりや、その日の食事をお裾分けしてもらえることは、彼女と彼女の父にとって、身にしみて有難いことだったのも、事実であった。晋吉が、祖父と父の都合が悪く、庄助爺のところへの往診を頼まれたこの日、お春の方も偶然に、お雪の祖母から仕立て物屋への用達しを頼まれ、この界隈へ来ていたのだった。にほんブログ村