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2005/12/02
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カテゴリ:読書
 夏に生徒のかわりに書いた読書感想文など紹介したい。
「先生、この本で感想文かけっていわれたんだけど、原稿用紙三枚とかムリ」
 と泣きつかれて、書いたものです。
 宿題を手伝うというか、おれが宿題やってんじゃねえかと思う今日この頃である。

救出
救出―日本・トルコ友情のドラマ

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   百年前の日本人と、十年前のトルコ人に教えられたこと
                 六年一組     M田D太

 トルコという国について、私は何も知らなかった。
 トルコの歴史も、有名な場所も、人物も、何も知らない。首都はアンカラ、それしか知らない。
 日本はアジアにあって、隣には中国、韓国などがある。また、ニュースで見るのはアメリカやイギリス、北朝鮮などの国のことだ。テレビでも、新聞でも、トルコのことを伝えるニュースはあまり見たことがない。あるのかも知れないけれど、私はまったく覚えていない。自分とは、そして日本とは関係の薄い国だと思っていた。だから私は、「救出―日本・トルコ友情のドラマ」という本を読んで、驚いてしまった。
 明治二十三年、いまから百年以上も前にあった出来事のことが書いてあった。私の祖父は、八十歳である。私の祖父も生まれていないような昔の話だ。
 トルコの軍艦エルトゥールル号が紀伊半島沖で難破した。台風につっこんで、船は真っ二つに裂け、エンジンに海水が入り、大爆発が起きた。六百人以上の乗組員が海に放り出され、波にさらわれた。岩にぶつかり、意識を失い、岩場にのりあげた。
 エルトゥールル号の乗組員は、遠くに見える灯台の灯りを見て、あそこに行けば人がいるかも知れないと弱った体で灯台を目指した。灯台守はこの、どこの国の人ともわからない遭難者を見て、助けなければならないと思った。そして灯台から近い樫野の村人たちが、それに協力した。
 ほとんど冷たくなりかけているトルコの人たちを、「まだ息があるぞ」と自分の体温で温めて、「死ぬな」「元気を出せ」「生きるんだ」と、励まし続けた。言葉はわからなくても、心は伝わったのだと思う。乗組員の大多数は死んでしまったけれども、樫野の人たちが救助した六十九人のトルコ人は命を救われた。
 しかし、樫野村は電気もガスも水道も、井戸すらない村だ。貧しい暮らしを送る樫野の人たちは、自分たちの食料を提供してトルコの人たちを看病したけれど、ついにはわずかなサツマイモしかなくなってしまった。そして樫野の人たちは、自分たちのニワトリをトルコの人たちに与えた。
 大事な大事なニワトリだ。それがなくなったら、自分たちは困ることは目に見えている。しかし、「だいじょうぶ、おてんとうさまがまもってくださるよ」といって、貴重なニワトリをつぶして、トルコの人たちに元気をあげた。
 いい話だ、と思った。
 自分の大事なものをなくしてでも、誰かのために尽くすなんてできることではない。いい話だなあと思ったのだった。
 百年以上も前の、遠い昔に、そんな話があったのか、と。
 しかし、私はこの本を読み進むにつれ、もっとびっくりしてしまった。
 1985年、この事件から九十五年後のこと。イラン・イラク戦争のときに、イラクのサダム・フセインが「「今から四十八時間後に、イランの上空を飛ぶすべての飛行機を撃ち落とす」と宣言した。
 そのとき、イラクには三百人近くの日本人がいたが、彼らは日本に帰る方法がない。脱出することができなければ、イラクの爆撃の中で生命の危機を感じながら暮らさなければならなくなる。 日本の政府も外務省も自衛隊も、彼らを助けてあげることはできなかった。時間がない。自分で歩いて、イラクから逃げてくるしかないというのだ。それは、到底無理なことだった。
 そこに、トルコ航空の飛行機が到着した。日本人全員を乗せて、成田空港まで出発した。なぜトルコの飛行機が来てくれたのか、日本政府もマスコミも誰もわからなかった。
 あとから、トルコの大使が、「エルトゥールル号の事故のときに、日本の人たちがしてくれた救助活動を、今もトルコの人たちは忘れていません。私も小学生のころ、歴史の教科書で学びました。トルコでは、子どもたちさえエルトゥールル号のことを知っています。今の日本人が知らないだけです。それで、イラクで困っている日本人を助けようと、トルコの航空機が飛んだのです」 と語ったという。
 この本のあとがきでは、エルトゥールル号以来の日本とトルコの友好の歴史や、エルトゥールル号事件のときに日本の新聞社などが義援金を集めてトルコの遺族に送ったことや、第二次大戦後に日本が国連に加盟するときにトルコが協力してくれたこと、エルトゥールル号の母港だったメルシン市と串本町など、日本とトルコの多くの都市が姉妹都市になっていることなどが書かれていた。
 私は、遠い昔のことだと思って読んでいたが、トルコの人にとっては 今もなお自分の身近にあることだという。今から百年前の出来事を、しっかり覚えていて、当たり前のように日本人のために危険な行動をとって救助してくれたトルコという国は、いったいどんな国なのだろうかと思った。
 先日あったサッカーのアジアカップで、日本選手に対して中国の人はブーイングを送り続けたと言う。
 私の知っている日本は、以前の戦争でひどいことをして、中国からも韓国からもせめられている国という印象があった。しかし、そんな日本を友達のように思ってくれている国があると知り、誇らしくなった。
また、自分たちの暮らしをかえりみずに見知らぬトルコ人を助けた樫野の人たちを、立派だと思った。
「情けは人のためならず」という言葉がある。人にかけた情けは、いつか巡り巡って自分に返ってくる、という言葉だ。しかし、百年も前のことを覚えていて、そのために行動をしたトルコの人たちのことを思うと、信じられないという気持ちになり、そして胸が熱くなる。本当に、美しくて純粋人たちだと思う。
 トルコの人たちは、「日本の人たちがしたことを忘れていない」という。百年前にした日本人の行動が、現代にもトルコの人たちの中で生きているという。
 私はトルコについて知らないことが多いが、日本についても、たくさんのことを知らないのかも知れない。。私は、日本に生まれた者として、トルコの人に感謝するとともに、その信頼にこたえなければならないと思った。
 トルコの人たちが日本人に感じた、自分のことは後回しにするおもいやり。
 トルコの人たちが見せてくれた、誰かのために危険をおかす勇気、恩を受けたらそれを返すやさしさ。
 みんな、自分のことは大事だけれど、それ以上に大事なことというものは、やっぱりあるのだ。そんなことを教えられた気がして、また、今の自分を見て「想像していた日本人とちがう」などと言われないか、不安になった。困った人がいたら、助ける。人に助けられたら、感謝する。そんな当たり前のことが、自分は出来ているだろうかと思った。
 この本に書いてあるのは、現代ではきれいごとになってしまうようなことだ。なんだか現実ばなれしているような、きれいごとだ。しかし、私はそんなきれいごとを、それを信じていたいと思う。
 この本を読んで、百年前の日本の人たちと、十年前のトルコの人たちに教えられたことがたくさんある。自分たちの暮らしをなげうってトルコの人たちを助けた日本人や、その恩を覚えていて日本人のために危険な救助活動をしたトルコ人に、胸を張って、彼らと同じように、人を思い、人のために自分を投げ出せるようでありたい。それで困ることもあるかも知れないけれど、「おてんとうさまがまもってくださるよ」と思えば、きっと大丈夫だ。
 彼らに恥ずかしくないような、そんな自分でありたいと思った。


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 読んでもいない本の読書感想文書きながら、書いてたら自分で勝手に感動して涙でてきてしまったよ。
 いやぁ、この本いい本だ。
 読んでないけど、たぶんいい本。

 かんたんな紹介は、こちら
 
 





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最終更新日  2005/12/02 01:46:32 PM
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