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2005/12/08
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テーマ:詩(901)
カテゴリ:
[詩]ぼくの地平線から
 たまに詩を書くのですが、ぼくの詩は散文詩というよりも手紙文であったり単なる小説であったりする。
 詩じゃないのかも知れないが、ほかに呼びようもないので詩ということにしておく。




   ぼくの地平線から


 旅はひとりでするものではない。
 いつも、だれかと旅をつづけてきた。
 どこへ行くのにも、ここにとどまるのにも。

 ずっと、ひとりの旅を続けてきた。
 ぼくの地平線から、ぼくは何度でも出発してきた。
 もうなにも持たないというひどい朝にも、
 もうなにも要らないという満ち足りた夕べにも、
 何度でも、ぼくは旅立ってきた。
「どこへ行くんだ、行くあてはあるのか」
「どこへ行くの、行かなければならないの」
 聞こえない、ぼくには聞こえない。
 ぼくの足は、そこにとどまることを許されなかった。

 海が見える丘で、これ以上先にはゆけぬと思ったとしても、
 獣も降りぬ谷底で、これ以上どこへゆけばよいのか迷ったとしても、
 ぼくは歩いた。
 どこへゆくのかもわからず、なにも望まず、
 歩くだけのために歩いてきた。
 行き先はわからない。
 それでも、ぼくは歩かなければならない。

 旅で出会った男は、ぼくにこう言った。

「止まるな
 止まればそこに時がよどむ

 悩むな
 悩めばそこで心がよどむ

 よどめば、絶望の毒がお前を包む
 絶望は毒のように甘く、安らかだ」

 男はそう言って、ぼくの目には映らぬ世界へと消えていった。

 丘からは、海しか見えなかった。
 どこまでも遠く、どこまでも空っぽな海。
 谷底には、空しか見えなかった。
 どこまでも遠く、決して手の届かない空。
 それでもぼくは歩くことをやめはしない。
 空も海も、青くて透明で、澄んでいて、
 ぼくにはその姿は見えはしない。

 また別の男がぼくに言った。

「恐れるな
 恐れを持ち続けられるほど、お前は強くはないのだ

 危ぶむな
 危険とは、飼い馴らすべきためにあるのだ

 恐れても
 お前はしょせんひとりではいられない
 孤独とは、集団の中にしか存在しないのだ」

 男はそう言って、ぼくの手には触れぬまま立ち去っていった。

 ぼくは歩き続けた。
 いくつもの悲しさ、優しさ、憎しみを乗り越えて、
 歩くことのためにのみ、歩いた。
 ぼくが辿り着いたのは海も空も見えない街角だった。
 そこでぼくは、家を見た。

 ひとつひとつのものとしてではなく、
 それぞれが明るく光る窓を持つ家と家を見た。
 それは、ぼくが手に入れることのできなかったものだ。
 そのすべてをぼくは初めて知った。
 その意味のひとつひとつをぼくは初めて感じた。

 絶望は感じなかった。
 孤独は感じなかった。
 感情は、あふれてきた。
 その暮らしの明かりは、ぼくとつながっている。
 そのひとつひとつを、ぼくは持っている。

 明かりには、街に暮らす見知らぬ誰かの生活があり、
 その窓の中には、ぼくが過ごしてきた記憶があった。
 ぼくが失ってきた歴史があった。

 凍えるような寒さの街角で、
 ぼくは街の明かりのひとつひとつと語り合った。
 ぼくの旅は、そのすべてと重なっていた。

 ぼくはまた旅立った。
 その街で見た明かりの、
 いちばん小さい明かりが、
 ぼくの心の中に灯っていた。





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最終更新日  2005/12/12 03:01:57 AM
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