おひとよし
6月の末に家政婦を解雇した。理由は盗難。自宅のドアには複製不可能な錠が付いている。そして鍵は自分と家政婦しか持っていないので、自宅内でお金の保管場所を施錠したりはしていなかった。6月初旬、銀行から3,000ブル引き出してカバンに入れたまま戸棚に閉まっておいたら、翌日1,500ブルになっていた。その時は家に他の人が居て、その人が犯人の可能性があった為、そのまま放っておいた。6月中旬、近くの山を登りに行き、帰ってきた翌日、リュックを調べるとデジカメがなくなっていた。ポーターが取った可能性があるので、警察に紛失届けを出した。6月下旬、数週間前に戸棚に入れた4,250ブルを数えると1,800ブルなくなっていた。消去法で考えると、当然家政婦しかいない。ただここの警察はすぐに人を牢屋にぶち込み、容疑者を人間扱いしないので、まずは彼女に聞いてみた。「お金が無くなった。可能性で考えると自分が忘れたか、君が取ったしかない。自分には使った記憶がはっきりとないので、君としか思えない」彼女は当然、「私がやるはず無い。これまで2年間、何も無かったじゃない。シェグがどこかに移動して忘れたに違いない」と応えた。しかし、離任間近の盗難は協力隊員にたまに起こる。特に使用人の次の仕事が決まってない場合。それまでは給料をもらえるからちゃんと仕事するが、契約終了間近になると、何かを盗んだほうが特になるって計算だ。彼女の場合月の給料は200ブル(それでも平均の2倍)。マイチョウに新しい外国人は当分来る予定が無いし(これは言ってないが)彼女の仕事の質では次は紹介できない。彼女から10,000ブル貸して欲しいと言われたが、それはできないと応えた。万が一の保険として、最後までちゃんと仕事をしたら退職金として1,000ブルくらいは払うと伝えていた。彼女が家を漁っていると考えたこともなかったが、していた場合、そして金を見つけた場合(かなり簡単にみつかる)、最低1,800ブル、最大で3,300ブルの儲けになるので約束した退職金より多い。ここで警察に通報する決心をし、彼女は直ちに留置所に入れられ取調べられた。その後警官から、以下の話をされた。「彼女は罪を否定している。このままだと彼女を当分留置所に入れ続け、ある時点で起訴することになるけど、シェグはいつまでいるんだ?」その時点で残された時間は1月半。このままだと誰が犯人かはっきりと分からないまま彼女を留置所に入れたままにし、結局どうなったのか分からない状態でこの件は終わってしまう。それは一番避けたい。警官の薦めに応じ、もし彼女が犯人なら自白と交換条件に示談とする事にした。彼女に以下のオファーをした。「君が犯人ならそれを認めて欲しい。その場合、通報を取り消すし盗んだ金も返さなくていい。しかしその場合、家の鍵を俺に渡して、2度と俺の前に顔を見せるな。」少しゴネた後、彼女は開き直った顔で、「私がやりました」と言い、謝りもせず鍵を返した。