銘柄紹介 第八弾 2337いちごHD
(もう随分前に書いた文章で今の状況に適していない部分も多いんですが、折角書いたので投稿します)(文中の数字は現在では変化していますので、数値に着目しないで読み進めて下さい) 第一弾から第六弾の銘柄紹介を読んで頂いていない読者は、先にそちらを順に読んで下さい。(お手数おかけして申し訳ありません)過去に紹介した内容を理解されていることを前提として、今回の銘柄紹介を始めます。銘柄紹介 第一弾 7509アイエー銘柄紹介 第二弾 9866マルキョウ銘柄紹介 第三弾 6060こころネット銘柄紹介 第四弾 7865ピープル銘柄紹介 第五弾 9994やまや銘柄紹介 第六弾 7820ニホンフラッシュ銘柄紹介 第七弾 4769インフォメーションクリエーティブ※皆さんご存知の通りですが、この銘柄紹介は買いを推奨しているものではありません。 それぞれ毎回テーマがあり、そのテーマに適した銘柄を紹介しています。 今回のテーマは再生,業績回復です。紹介する銘柄は、折角なので、いちごHD(旧アセットM)としますか。この銘柄は割安銘柄ではありませんが、バリュー銘柄と言えなくもありません。高PER高PBR低自己資本比率型のバリュー銘柄は極めて珍しいですが、決して存在しない訳ではありません。ただし、バリュー銘柄の中では亜種亜流。このようなタイプの企業をバリュー銘柄と認めないバリュー投資家が殆どです。さて、本題に移りましょう。いちごHD(旧アセットM)はライブドアショック後に随分と資産圧縮されましたが、利益面では随分回復。業績ピークの2007月2月期の業績は売上:57,000百万円経常利益:17,500百万円最終利益:9,400百万円です。対して今期2015年2月期の会社業績予想は売上:42,000百万円経常利益:7,700百万円最終利益:6,055百万円来期2016年2月の四季報業績予想は売上:50,000百万円経常利益:9,500百万円最終利益:7,800百万円です。既に業績は当時に追いつきつつあります。しかも、収益力は上昇しています。(ただし、度重なる増資で時価総額は当時以上なので注意が必要です)(再生銘柄を論じるときは、過去の株価と今の株価を比較して何かを判断するのは止めましょう)それでは今のいちごHDの収益源をみてみましょう。現在は下記の比率です。不動産投資・運用:82%不動産施設管理:18%不動産投資・運用がメインです。過去アセットMからずっと変わっていません。(ただし個別案件は、以前と違いハイリスクハイリターンのようなものを避けているとの事です)今現在注目するべきは、不動産投資・運用だけではありません。不動産施設管理の方にも着目しなければなりません。安定した収益力という点では、不動産施設管理の影響が大きいのです。そして、その安定した収益力を背景に、景気の変化点に積極的な不動産投資を行えるからです。そういう意味では、本来の成長銘柄として、この企業の本当の意味での再生を担うのは、不動産施設管理事業です。前期よりクリーンエネルギー事業の収益急拡大を見込んでいます。中でも目玉なのが、2014年4月に建設計画を発表したいちご昭和村生越ECO発電所。これは超大規模メガソーラー事業です。(簡単に儲かるので昨今は多くの企業がメガソーラー事業に手を出しています)この事業の総事業費は130億円の見込み。これによる収益は、2014年2月期:40百万円2015年2月期:300百万円2016年2月期:640百万円2017年2月期:1070百万円2018年2月期:1610百万円以降2033年2月期まで:1610百万円20年間の収益合計:325億円放っておいてもチャリンチャリンとお金が落ちる仕組みを好むのがバリュー投資です。現代の日本においてはクリーンエネルギー買取価格が長期保障されていますので、この事業は正に安定して収益を上げられるシステムそのものです。このシステムに幾らお金を支払うか?という話です。いちごHDは、200億円の差益が確実な事業を保有している、不動産投資運用会社となります。時価総額は1633億円(※2015年1月24日現時点では1266億円になっています)。この事業だけではとても買える企業ではありません。しかし、この事業を通じて得る実績・ノウハウに対してどれほどの評価をするかによって、この企業全体に対する評価が大きく分かれます。企業の保有資産に対してお金を支払うのがバリュー投資ではありません。負債の返済能力を保守的に見積って、その返済能力に対してお金を支払うのがバリュー投資です。(資本に対してはインフレ率を超える収益力が求められます) 次に、バランスシートでの比較。2007年2月期のバランスシート資産:237,740百万円他人資本:155,150百万円自己資本:82,590百万円資産の中身は流動資産:219,000百万円固定資産:18,700百万円個別で見てみると現金預金:34,710百万円棚卸資産:119,100百万円営業投資有価証券:48,570百万円営業貸付金:9,280百万円有形固定資産:6,260百万円投資有価証券:9,940百万円対して、現在のバランスシートは資産:114,940百万円他人資本:64,100百万円自己資本:50,840百万円資産の中身は流動資産:85,760百万円固定資産:29,180百万円個別で見てみると現金預金:24,990百万円販売用不動産:54,080百万円営業投資有価証券:3,580百万円営業貸付金:1,100百万円有形固定資産:21,300百万円投資有価証券:4,280百万円とかなりの筋肉質になっています。その結果、現在は自己資本比率:42.2%ROE:12.4%ROA:6.7%となりました。過去の失敗があるので、収益力(収益の質)向上をかなり意識した経営になっています。安定した収益確保をしながら、増収増益をしています。この業界は、昔は数多くの企業が右肩上がりの業績を叩き出していました。しかし、不動産物件利回りの低下や評価額の減少によって利益は吹き飛び、姉歯問題をきっかけにして2007年以降に多くの特損を出し続ける事になります。たくさん居た同業他社は、殆どが倒産しました。倒産しなかった企業も、何年も大きな赤字を計上しました。資金繰りの為にMSCBなどの増資をせざるを得なくなりました。やっと得た資金は、赤字補填で消えました。結果としてバランスシートを縮小させた残存企業の利益は、特損がなくなった今でも、とても小さなものになりました。その中において、度重なる増資によりバランスシートを大きく縮小させなかったこの企業はかなり異質なのです。日本から不動産事業がなくなる訳ではありません。いつの日かデフレから脱却できたとき。その時はまた活況を浴びることでしょう。その時代を夢見て不動産銘柄に投資をするのが大局投資ですが、ファンダメンタル投資家としては違った見地から投資をしたい。バランスシートの変化、収益力の変化、それらをじっくり見ながら、事業価値を評価していく。一度地べたを這いずり回った企業の再生劇は凄いものがあります。2004年前後に投資をしていた人は、幾らでも思いつくでしょう。前回はそれが2012年に起きました。株価の急激な変化は業績のそれよりも早めに起こります。今は業績が急激に変化している時期です。業績の変動に対して評価をするのは、ファンダメンタル投資家です。株価が急上昇した後で、じっくり業績を見極めながら、ゆっくりと再生銘柄を買う。ファンダメンタル投資には、そういう投資手法もあります。